オークション
城に戻ってパパりんに報告を終えたら、宝物庫の武具を持って行って構わないと許可をくれたので、ビリーとケビンに任せて俺は修行に向かう。
リーゼも宝物庫より修行が良かったらしく、お師匠の所に付いてきた。
ユリアとカリンとマリンは宮廷魔術師の婆ちゃんの所で、魔法の修行をするらしい。
後衛の火力が不足しているので必要なことだと思う。
今月のオークションが始まる6日後まで、俺達は修行に集中する。
宝物庫から持ってきた武具は、魔法の武器が数本と魔法防御力を上げる防具とアクセサリーだ。
防御面は多少は安心だが、武器の方は買った物とさほど変わらない。
やはりオークションで探すか、鍛冶師を探すかした方がいい。
あるいは、魔王の時代の伝説の武具を探すのも1つの手だ。
レベルが上がったので、以前ほど修行で疲れなくなったので、屋敷にも毎日帰って使用人達を安心させる。
メイド見習いの子供達は、武勇伝を聞くと大はしゃぎで目をキラキラさせる。
商売も順調で、菓子パンの類いは開店と同時に売り切れるらしい。
パパりんから貰った元悪徳商人の店も、俺の指事通りに浮浪者や失業者を雇えるだけ雇い、貧困に喘ぐ人も王都から居なくなったそうだ。
貴族からの今月の上納金は金剛貨67枚も入り、全店舗の仕入れや従業員の給金を除いた俺の取り分も、合計で金剛貨4枚強になった。
無駄に従業員を雇っているので、店舗の規模や数の割に少ないが別に構わない。
他の街にも店舗は在るので、そちらでも浮浪者は減った筈だ。王都の店ほど大きくないので全員という訳にはいかないが。
「それで旦那様、売り上げが毎日、中金貨1枚くらいになりますが、お屋敷の厨房だとあんまり数を作れません。凄く勿体ないです! 屋敷の敷地内に大きな厨房を造ってもいいですか?」
フレイの主張は店長として当然の言い分だ。
「リネットもお客さまが残念そうに帰っていくのが悲しいです!」
これ以上商品を増やすなら、従業員も増やさないと疲労が溜まるだろう。
レシピの情報漏洩を防ぐためにも奴隷を追加で雇うかな?
他の店舗は、悪徳商人の元の商売を続けているが、屋敷で開いてる店は、この世界に無い物を売っているので、奴隷以外は厨房に回せない。
「分かった。厨房の増設を許可する。新しい奴隷もオークションで探してこよう。従業員が増えれば数も作れるし、お前達の疲労も抑えられる。休みも増やせるだろう」
そう伝えると、使用人達が歓声を上げた。
「ありがとうございます! 旦那様!」
「また賑やかになりますね!」
「いっぱい、いっぱ~い頑張ります!」
皆で抱き合って喜んでいるので、さりげなく混ざってお尻を撫で撫でした。
気付いたら全員でお風呂に入っていた。
女体は男を狂わせるなぁ。
「だんなさま、おフロってキモチいい! です」
犬の尻尾をフリフリしながら、慣れない言葉遣いでモニカが話掛けてきた。
6才なので仕方ない。今は見習いメイド教育係のドジメイド、プリシラが教えている。
「ちゃんと水気を拭き取るんだぞ? じゃないと風邪を引くからな」
チビッ子達の髪を拭いてやるとピタピタくっついてきたので、パティが叱っている。
「だんなさまのコレはなんですか? あたちにはないよ?」
7才のロザリーが不思議そうに引っ張った。
「だめです! 旦那様の身体に許可もなく触ったら!」
メイド長のパティが慌てて止める。知っている使用人達は頬を染めて困っている。
「コレはマイ・サンだ!」
恥ずかしい事は無いので堂々と宣言する。
「マイさんっていうの? こんにちは!」
嬉しそうにペコッと頭を下げて挨拶している。礼儀正しいけど、人ではないから挨拶は要らんぞ!
「と、とにかく旦那様、お着替えを手伝いますので失礼致しますね」
パティが子供達を遠ざけている間に、メイド長補佐のフィーネが身体を拭き、プリシラと一緒に服を着せてくれた。
「旦那はホントに教育に悪いなぁ」
「教育はパティ達の仕事でしょう? 旦那様が使用人に気を遣うほうが変よ」
「リーダーもベアトリクスさんも早く着替えて下さいよ! 旦那様のが大きくなったらどうするんです!?」
そう言うブレンダがお尻丸見えだぞ。
「男性経験が無いのに大きくなるのは知っている…………ムッツリスケベ?」
「あんただってまだ旦那様にお情けを貰ってないでしょ!」
弓使いクララが獲物を見付けた目でブレンダをからかう。
「コレが入ってくるんだ~。凄い! 人間の神秘だね!」
ちょっとアホの娘エレノアが興味深そうにつついて、ブレンダに頭を叩かれた。
「イターい、ブレンダさん何するの?」
「何じゃない! 羞じらいを持ちなさいよ! 雷魔法で痺れさせるわよ?」
そう言えば警備の皆は仕事上時間が合わなくて、まだしてなかったな。
「よしよし、ブレンダ、今晩はお前を可愛いがってやるからな! 部屋においで」
「は、はい! お風呂で綺麗にして行きます!」
「ブレンダさんブレンダさん、今お風呂に入ったよ?」
妙に張り切るブレンダに、料理人のメイがツッコミを入れる。
「ほっといて! 初めてを失敗したらずーっと初めてを失敗した女って皆に言われるのよ!」
「いや~、旦那はそれでも喜ぶだろ」
「それ以前に私達は馬鹿にしたりしないわ」
女の子が集まると賑やかだな。
「す、凄かった。未知の世界です! 勉強しないと!」
さすが魔法使いだ。次回が楽しみだな~。
レベルが高いので体力に余裕はあるが、初めての女の子に無理はさせられない。
奴隷の身分を気にして、ベッドから出て行こうとするブレンダに、我が家のルール、抱かれた夜は一緒に眠るを適用した。
アレコレしている内にオークションの日がやって来た。
オークションに行くのは、俺とユリアとカリンとケビンだ。
リーゼは公務があり、ビリーは遺跡の情報を調べ、マリンは治療魔法を習い始めた。
俺はお師匠を休ませたかったので丁度いいし、ユリアとカリンは宮廷魔術師が公務で留守。
ケビンは城に有った余剰分の矢を、全て使い潰してしまったので補充中なので修行は休みだ。
矢が壊れるなんて、かなりの威力で矢を射てる様になったみたいだな。
ユリアとカリンの手を繋いでオークション会場に向かう。闘技場を使うそうだ。
人混みが鬱陶しいけど手を繋いでいるので、はぐれたりしない。
参加するには、1人大銀貨1枚必要だ。見学だけなら大銅貨1枚で済む。
会場に入ると観客席に見学客が座り、試合等を行う場所に席を設けて、そこに俺達参加者が座るみたいだ。
席は段になっていて、後ろに行くほど高くなっている。机は無いけど、テレビで見た大学の席みたいだな。
などと考えていたら、オークションが始まった。
まずは出品物の紹介が行われて、欲しい物を予算と相談して目星を付ける。
それから競り合いが始まるらしい。何が有るか判らなければ、最後の方は予算切れになり、目玉商品の価格が低くなってしまうかもしれない。
それだと出品者もオークション主催者も大損してしまう。ルールというのは必要だから出来るんだろう。
俺のお目当ては、竜に特効の有る竜覇剣、貫通力を極限まで高めた、ダマスカス鋼も貫く流星のレイピア、魔族に特効の有る魔人殲滅槍、魔力を増やすトネリコの杖2本、魔法結晶が4つ付いた、矢に魔力を込めて放てる魔法弓バリアス、HPを50使って威力を3倍にする剛力斧の7つだ。
仲間の武器は見つかったけど、俺の気に入る武器はなかった。リリーに神鉄で作って貰おう。
「それでは最初の品です! 出品者は冒険者のドッツ! ダンジョンで手に入れた魔導銀の剣! この剣は斬った後に傷口を燃やす効果が有る魔力剣です! 小金貨1枚からスタート!」
開始と同時に番号札が上がり、どんどん値段が上がっていく。最低でもスタート価格の10分の1は上げなければならない。
小金貨1枚だと、日本円で100万くらいなので、大銀貨1枚以上じゃないと入札は出来ないそうだ。
15分くらい競り合って、冒険者が小金貨4枚で落札した。目当ての品が出るまで暇だな。ユリアとカリンでも見ていよう。
「お兄ちゃん、退屈だね? ちゅーしよっか?」
「そうだな! 欲しくない物を見てても面白くないからな!」
「あっ! ユリアも退屈なのでキスしたいです!」
「…………何でオレはお前達に付いて来ちまったんだろう」
目当ての品が出るまでは3人でイチャイチャして過ごした。
「では7品目! 突きを放つ度に光が走るところから名付けられた流星のレイピア! かなりの硬度を誇るダマスカス鋼すら、達人が振るうと貫く威力を見せました! 肉体強化(大)のスキルが付与されているので、非力な方でも安心です! 最低落札価格は中金貨1枚!」
ようやく目当ての品が出たので、番号札を上げて入札を始めた。
「大金貨1枚!!」
「いきなり倍額です!」
「大金貨1枚と小金貨1枚!」
「大1小3!」
「大金貨2枚!」
「ハイ! 最初の黒髪の青年が大金貨を2枚です!」
「くっ、大金貨2枚と小金貨1枚!」
「大金貨3枚!」
「またまた131番の青年です! 他にありませんか?」
「…………大金貨3枚と中金貨1枚だ!」
「大金貨4枚!」
「大金貨4枚! 大金貨4枚です! …………他に入札する方は居ませんか? …………では131番の黒髪の青年が大金貨4枚で落札です!」
勝ったぞ! これは当然カリンの武器だ。
落札したので引き換えの札が渡された。
まだ入札を続けるので、後でまとめて金を払う。
資金は有るし、悪徳貴族や商人を叩きのめしたので、余り金持ちが居ない。
俺は目当ての武器を全て買うことが出来たので、オークションの続きは気楽なもんだ。
武器や防具、マジックアイテムなどの出品が終わると、次は奴隷が出品される。
料理や売り子の出来る奴隷を買って、店の宿舎に住まわせよう。
屋敷には部屋の空きが少ないから仕方ない。




