魔王軍の力の一端
上段から振り下ろされた大剣を、リーゼと共に受け止める。踏みしめた足下にヒビが入るほどの強力な一撃に、俺達は膝を突く。
2人掛かりでも力負けするなんて!
「トール! 姫様!」
どんどん押し込まれる俺達を見て、ケビンが慌てて援護射撃をする。
しかし、飛んできた矢を口で止めて噛み砕く。
「私を忘れて貰っては困るよ!」
見かねてビリーが斬り掛かる。
「忘れておらんわ!!」
尻尾が振られてビリーを床に叩き付けられた。
だが、注意が逸れた一瞬に、闘気を高めて大剣を弾き返す。
圧力が消えたので、すぐに距離を取る。
「ご主人様に近付かないでください!」
「お兄ちゃんを苛めるな!」
追撃を仕掛ける敵に、ユリア魔法とカリンの光の羽根が襲い掛かる。
「小賢しい!!」
口を開けて吼えると、衝撃波が発生してユリア達の攻撃を吹き散らした。
「グオッ!?」
しかし、その隙を見逃さず、俺の魔力を纏った剣が奴の太ももを斬り裂く。
闘気で身体も強化されているので、なんとかダメージを与えることが出来た。
「小僧がぁぁぁぁ!!」
怒りで俺に攻撃が集中する。
繰り出される攻撃をギリギリ躱し、仲間に敵の背中が見える様に誘導していく。
準備の整った仲間達が一斉攻撃を放つ。
ユリアの精霊魔法、リーゼの光魔法、マリンの土魔法、カリンの光の羽根、ケビンの弓矢が敵の背中に炸裂した。
「グアァァァァァァッ!? 貴様らぁぁぁぁ!! 許さんぞ!」
後衛に向かった奴にビリーが斬り掛かる。
すぐに気付いて迎撃しようとするが、俺の空間攻撃が奴の腕に突き刺さり、狙いが逸れた。
「最高のタイミングだよ、トール君!」
真正面から奴の胴を一文字斬りにする。血飛沫がビリーの身体を染めるが、奴は止まらず斬り掛かった。
ビリーも咄嗟に躱すが、避け損ねて袈裟懸けに斬られた。
「あなた!!」
急いで回復に向かうマリンを皆で援護する。
だが、奴には半端な魔法は通じず、腕の一振りで掻き消される。
仕方ない。かなり消耗するが、俺も必殺技を出そう。
「光神衝烈波!!」
俺の振るった剣から光の奔流が生まれて、床を削りながらガルファングの背中に直撃した。
爆発的な輝きが走り、奴を壁まで吹き飛ばした。
「ガハッ、ゴフッ…………な、なんだ! 今の攻撃は!?」
お師匠に習った必殺技の威力は凄いけど、消耗が激しいな。
「今の内に追撃しろ! マリンはビリーの回復を早く!」
俺の言葉に、我にかえった仲間達が動く。
背中をズタズタにされた敵に、容赦なく攻撃が降り注ぐ。
その間にビリーが回復し、俺は奴と距離を詰めた。
ライフイーターで敵から奪い、マジックイーターで魔法結晶から魔力を引き出す。
回復したビリーが斬り付け離れる。
力を溜めた俺が止めの必殺技を繰り出した。
「光神旋風突!!」
渦を巻く光を剣に纏い、敵に突きを放つ。
「グアァァァァァァァッ!!!」
奴の振り上げた腕が、力を失い垂れ下がる。
俺の剣が胸を穿ち、背中から突き抜けている。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ…………俺の勝ちだ!」
勝利の宣言をしたら、剣を抜いて後ろに跳ぶ。
ドガッと音を立てて奴の身体が床に沈んだ。
「ご主人様~! 大丈夫ですか? 怪我はないですか? お疲れさまでした!」
駆け寄ってきたユリアを抱き締めて、良い香りを胸一杯に吸い込んだ。
血の匂いは嫌いだ。
「お兄ちゃん! カッコいい~! 必殺技だよ! 無敵だよ~!」
変身を解いたカリンが顔に飛び付いて、胸の感触が気持ちいいな。
「光剣カインの技を使うなんて…………凄いじゃないトール!」
リーゼも興奮した様子で頬を上気させている。
「トール! なんだ、あの技は!?」
「見事な技だね。カイン殿から習ったのかい?」
「あなた、ケビン、気になるのは解るけど回復が先よ」
マリンの言う通りだ。まだパーヴェルが上に居る。魔力はかなり小さいが、奴の魔力を微かに感じる。
皆の体力と魔力を回復しながら、俺の必殺技の説明をする。
お師匠の流派は、光神流剣術。
闘気や戦気に、光魔法を掛け合わせた魔法剣だ。
力を込めると威力が上がるが、相応の体力と魔力を使うことになるので、最大威力で放つと回復しなければ連発は出来ない。
お師匠は戦気を使うので、同じ量のHPを使っても、威力が俺より1.5倍は高い。
光魔法のレベルも俺より高いので、込める魔力も多いし剣術のレベルも高いので、相手に直接剣を当てるタイプの必殺技は、実質的に俺より5倍くらい強力だろう。
ただ、年のせいで最大HPが下がっているらしく、全盛期の様な威力で撃てないそうだ。
光神流の必殺技は、魔族に対して特効らしく、ダメージがかなり上がるそうなので、お師匠が俺の教師として呼ばれた。
「あたしも練習したけど、闘気を操れなくて習得できなかったのに……ズルイ!」
リーゼのスキルに光魔法が有ったからなぁ、闘気が使えれば俺より威力が高いかもしれないのに、勿体ないな。
「何にしても、トールの必殺技が魔族に有効なんだから、もっと強くなればパーヴェルとも戦えるかもな!」
ケビンは少し楽観的だが、勝てる見込みがまったく無い訳じゃない。
さっきの戦いで、俺のレベルは41になったし、ユリアは32、リーゼは50、カリンが27、ビリー44、ケビン35、マリン39になった。
レベルイーターで弱体化してなかったら勝てないけど、経験値的には弱体化しない方がいい。
回復が終わり、全員満タンになったので3階を目指す。
罠も無く、探索が楽に進む。
遂に3階への階段を見付けて上ると、50メートル四方の部屋の奥に祭壇が在り、パーヴェルが漆黒の宝珠を取り上げるところだった。
「……ご主人様、封印は壊されています!」
「間に合わなかったようだね……」
パーヴェルの魔力は、もう殆んど残って無い。体力も消耗が激しく、1500を切っている。
500人の兵士、ガーゴイルや神鉄のゴーレムを倒したからか、レベルが以前より2も上がっているが。
「…………貴様はどこかで見た憶えがあるな。手加減したとは言え、私の攻撃で生きているとはな。褒めてやろう、人間」
相変わらずムカつくな!! 嘗めやがって。
「お褒めに与り恐悦至極だ馬鹿野郎!」
「フッ、生き延びただけでも驚異的だが、その度胸も褒めてやるぞ、人間」
奴が大鎌を構える。
俺、リーゼ、ビリー、ケビンが迎え撃つ。ケビンは槍に持ち換えて戦う様だ。
霞む様なスピードで斬り掛かってきたパーヴェルの鎌を、4人で受け止める。
「ぐあぁ!」
「キャア!」
「うっ!」
「うわぁ!」
しかし、4人まとめて武器を弾かれて、ユリア達の居る入り口付近まで吹き飛ばされた。
「腕が痺れて……何て力だ!」
俺だけが立ち上がり、他の3人は血を流して倒れている。マリン達が回復魔法やポーションで治療を始める。
「貴様は倒れないか……驚いたぞ。名を聞こう」
「トールだ! トール・レオンハート!」
「フッ、ではトールよ、貴様の名だけは憶えておいてやろう! 光栄に思え! あの世への手向けだ!」
ヤバいな。勝てない。
「パーヴェル、調子に乗っているとこ悪いが、自分のステータスを見たらどうだ? なぜ俺は怪我も無く立ち上がれる?」
こうなったら、ハッタリで追い払うしかない。
「…………貴様、何をした?」
ステータスを確認したパーヴェルが、警戒する様に距離を取って訊いてきた。
「奪っただけだ。さあ近付いて来い! あと数回でお前は死ぬ! この前のお返しをしてやる! 勝負はこれからだ!」
「チッ、妙なスキルを持っている様だな。対策を手に入れるまで貴様には近付くのは危険だな。今日のところは退かせて貰う」
言うなり、壁を破って外に飛び出して行った。
「助かった……」
大の字で床に寝そべり息を吐く。
仲間達も回復が済んだらしく、息を吐いて安堵している。
パーヴェルのレベルを奪ったから、俺のレベルが45まで上がっていたが、あと3ヵ月は奴からレベルを奪えない。
次の遺跡でパーヴェルに遭ったらどうしようか?
「ご主人様、大丈夫ですか?」
無言で寝転がる俺を心配して、ユリアが膝枕をしてくれる。
「大丈夫だけど、もっと強くならないと勝負にならん」
「ご主人様達4人でも力負けするなんて…………脅威です」
「トールが居なかったら、お父様の兵士と同じように全滅してたわ……悔しい!」
「……お兄ちゃん、アタシ恐いよ~」
リーゼは泣きべそを掻き、カリンは震えて抱き付いてきた。
「何なんだ! あの化け物は!」
「ケビン、落ち込まないの。みんなが無事だったんだから、私達の勝ちよ」
マリンは母親らしく、包容力があるな。
「まさかこれ程の力量差が有るとはね……魔力が尽きても強すぎるね。1度王都に戻って次に向かう遺跡を決めよう。装備品も強くした方がいい」
神鉄を手に入れたから、あれで剣を作って貰おうかな? 全員分の装備品を整えるくらいの量は有るだろう。
「封印も破られたし、いつまでもここに居ても仕方ない、探索が済んでない場所を見て回ったら帰ろう」
「あたしは一旦お城に帰って、宝物庫の中に強力な武具がないか探してみるわ」
とにかく戦力アップだ。王都で1ヵ月に1度開かれるオークションにも行ってみよう。
戦気も覚えて光魔法のレベルも上げたい。お師匠にもう一度稽古を付けて貰って、必殺技を増やさないと。
お師匠に貰った、光神流剣術の奥義書を暗記するくらい読もう。
俺達は隅々まで探索を終え、帰還の翼を使って王都の城に帰還した。




