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21話演劇部の王子様

今更ですが『事』→『こと』みたいに一部の漢字をひらがなにして小説っぽさを演出しています。ただどれをどっちにするかは試してる段階なので読みづらかったらすみません。




 数日前から始めた部活見学で、今日は演劇部を見学するために体育館までやってきた。事前に先生から話が通っているので、扉を開けると舞台の準備をしている全員が一斉にこっちへ注目する。




「どうも、見学に来た相藤優希です」


「「「キャー!」」」




 笑顔で挨拶すると、貴族、騎士、村人など様々なファンタジー衣装に身を包んだ演劇部員たちが黄色い声を飛ばしてくれる。


 そんな中、短い紫色の髪を跳ねさせた王子様みたいな女の子がマントをはためかせながら僕に近づいてきた。




「ようこそ演劇部へ、ボクは部長の須天(すあま)星(せい)。今日はよろしくね、相藤くん」


「よろしく」




 挨拶を返しながら握手しようと手を差し出すと、彼女は一瞬ニヤけた後すぐに表情を戻して優しそうな笑みで握手に応じた。




「本当に助かったよ。体育館を使える日は限られているからね」


「いえいえ、僕は女に優しい系男子なので」


「それは素晴らしいね」




 僕が手を離すと彼女は悲しそうに眉を下げる。しかし、すぐに気を取り直してみんなの方へ振り向き発破をかけた。




「さあ! ボクたちの実力を示そうじゃないか!」


「「「オー!」」」




ーーーー




 ボクは昔から、周りにカッコイイと褒められながら生きてきた。いや、嫌味とかではなく。現代の女の子は男に飢えている。だから、イケメンなボクがモテるのは当然のことだった。


 ボクは色々な女の子に囲まれながら学校生活を送っていたし、高校生になってからもそれは変わらなかった。誘われるがまま演劇部に入るとさらに持て囃されるようになり、可愛らしい子猫ちゃんがたくさん増えた。


 一年後、ボクは演技力がそこまでにも拘らず部長に任命された。理由は唯一メインヒロインである男役を演じられる見た目だから、あとみんなに好かれているからだそうだ……頑張ろう。


 そうして、努力が報われる時が来た。男子の編入アンド部活見学、みんなは知らないだろうけどボクは普通に男の子の方が好きだ。女なんだから当然だろう、むしろ受け側と言っても過言ではない。だから嫌われないよう、慎重に接する。


 男装女子は普通の女子より男の子からの印象が良い。だからいつも通りカッコつけた態度で挨拶を行い、性欲を感じさせないよう胸とかに視線を送らないように気を付ける。




「ようこそ演劇部へ、ボクは部長の須天星。今日はよろしくね、相藤くん」


「よろしく」




 彼はそう言いながら、いきなり女であるボクに手を差し出してきた。恐らくは握手、もし間違っていたらセクハラで逮捕されるが彼を信じて手を握り返した。男子特有のゴツゴツとした手の感触に危うくニヤけそうになるが理性で抑え、笑顔で会話を続ける。


 しかし、彼は見れば見るほど素晴らしい。見た目が整っているのはもちろん、ボクが提案した日に見学の予定を合わせてくれる優しさとかもう……最高だよね。




「本当に助かったよ。体育館を使える日は限られているからね」


「いえいえ、僕は女に優しい系男子なので」


「それは素晴らしいね」




 実際その通りだと思う、こんなに優しい男子をボクは知らない。絶対に顔には出さないが、頭の中で彼に無理やり襲われる妄想を楽しみながらみんなの方へ振り向き発破をかける。




「さあ! ボクたちの実力を示そうじゃないか!」


「「「オー!」」」




 ――二時間後、無事に劇を終わらせたボクたちは舞台から下り、椅子に座って見学していた彼に感想を求めた。




「どうだったかな? ボクたちの劇は」


「うん、すごく良かったよ」




 彼が笑顔でそう答えるとみんなは大いに喜ぶ。女が男に褒められる機会なんて皆無だからね、気持ちは分かるよ。


 でも、ボクは気付いていた。彼の表情が何かを隠していることに。




「……本当に?」


「演技が良かったのは本当だよ。ただ、台本が女向けだったから、そこがちょっと」


「ああ、なるほどね」


「というわけで、台本を少し弄らせてほしいんだけど……いいかな?」


「そうだね、それは彼女に――」


「どうぞお好きにしてください!」


「ありがとう」




 監督ちゃんは勢い良く台本を差し出し、お礼の笑顔を見て気を失った。仲のいい部員たちが彼女を持ち上げ、端の方へと運んでいく。




「監督いなくなっちゃったし、僕が代わりにやろうかな? せっかく書いたことだし」


「「「えっ!?」」」




 ボクを含めたみんなが驚く。当然だ、彼はそれだけあり得ないことを言っているのだから……だからといって、この機会を逃すなんて馬鹿なマネはあり得ない。




「そうだね、是非ともお願いするよ」




 ――一時間後




「みんな、お疲れ様!」


「「「お疲れ様でしたー!」」」




 男子に命令されるという最高に楽しい時間はあっという間に終わり、ボクたちは解散した。ただ、自分の演技に納得がいっていなかったボクは、制服に着替えた後も一人舞台の上で身体を動かしていた。


 ほんの少しだけの予定だったのに思っていたよりモヤモヤが晴れず、しばらく練習を続けていると視線を感じたので舞台裏の方を見てみると半分の彼と目が合った。




「うわああっ! ……コホン、ど、どうかしたかい? 相藤くん」




 ちょっとしたホラーだったので危うく驚きそうになったが、何とか普段通りに言葉を紡いだ。別にホラーが苦手というわけではないよ、少し驚いただけさ。


 急いで取り繕ったボクを見て、彼は笑いをこらえながら近づいてくるとボクの手を取って動かした。




「あの、相藤くん?」


「本物の男である僕が、星に男のことを教えてあげる。特別指導ってやつ?」




 特別指導!? ていうか名前呼び!?


 色々なことが同時に起こりすぎて脳がパニックに陥るが、脳内ピンクなボクにそれらのことを考えている余裕はなかった。


 なぜなら、彼の方から漂ってくる甘い匂いとかボクより背が高いところとか布越しに感じる筋肉とか力強さとか……この身体に押さえつけられたら、抵抗できないんだろうなぁ。




「……星?」


「ハッ! いや、何でもないよ」


「そう?」


「そうだとも」




 いつの間にか妄想の世界にトリップしていたらしく、彼に呼ばれてようやく意識が現実に戻ってくる。なんかもう、色々と手遅れだと思うが王子様の演技は忘れない。


 まるでダンスを踊るように、彼は密着しながらボクの身体を動かす。疲れていたはずなのに、そんなもの初めからなかったかのようにボクの身体は軽々と動いた。男子って本当にすごい。




「星はすごいね。もっと難易度を上げちゃおうか」


「ああ、今のボクは無敵さ! 何でもこなしてみせるよ!」


「じゃあ、脱がすね?」


「ああ! ……ん?」




 今、あり得ない言葉が聞こえたような……ボクの耳がおかしくなったのかな? そう思って聞き返してみたが、やっぱり聞き間違いなんかじゃなかったらしい。




「なんでさ!? ボクの裸と演技に何の関係が!?」


「度胸を鍛えるためだよ……ほーら脱ぎ脱ぎしようねー」


「子供扱いするな! ていうか、ちょ、力つよっ……」


「……えいっ!」


「ひゃああああああっ!?」




 無理やり脱がそうとする彼の手を掴んで抵抗を試みたが、耳元で星と囁かれたボクはあっさりと力を失い全てを剝ぎ取られた。


 彼に見られている……そう意識した瞬間、あまりの恥ずかしさに手で全身を隠しながらしゃがみ込む。しかし、彼はボクの背後に回ると腕を掴んで無理やり立ち上がらせてきた。




「ちょっ! 相藤くん、ダメだって、見えちゃうから!」


「それが目的なんだよ。ほら、イメージして、観客が星のこと見てる」


「え……あっ……」




 舞台の向こう側に目を向ける。当然、体育館の中にはボクたち以外誰もいない、誰もいないはずなのに……。何故だかボクの胸が高鳴る。恥ずかしいはずなのに、興奮という感情がボクの全身を支配する。


 こうして、新しい扉を開いたボクは彼の手によって様々な辱めを受けるのだった。




天体 素 甘える 一等星

↓

須天 星 (すあま せい)

ボクっ娘イケメン女子。

女子からモテモテだし関係を持っている友達も何人かいるが普通に男が好き。この世界では珍しい受け側の性格ではあるが普段は需要に答えているため本当の自分を知っている主人公には甘えることが多い。


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