第十六話 恋のゲームだと思った?人生でした
突然ゲームのヒロイン、アルプスに転生した夢果実。
アルプスの義姉のサラと協力し、ついに真犯人たどり着く。
真犯人は、アルプスの婚約者の一人、ポツダム・センゲンだった。
言動から彼も転生者という仮説が浮上、私とサラはポツダムにすべてを吐かせる計画を立てる。
「アルプス、準備は良い?」
「オッケーだよ、サラ」
「じゃあ行くわよ」
サラの合図で私達はポツダムの部屋に侵入する。
「観念なさい! ポツダム!」
誰もいない、さっきまでここにいたはずなのに!
勢いに任せてここまで来たが、正直、ポツダムを縛り上げて拷問する気はない。
いや、ヤツは悪人だし、出来ることなら全部教えてもらいたいが、気合がないのだ。
こっちは女二人だし、ポツダムもゆうて男よ。力で勝負したら勝てん。
「いないね、どーする?」
「どうしましょうか……あら? こんな扉あった?」
サラは本棚の隣の扉を指差す。
「なかった、かも。本棚ももうちょっとこっちにあった気がするし」
「隠し扉かしら?」
私はドアノブを回してみる。
「あ、開いてるよ? 行ってみる?」
「はあ? こ、こんな怪しいところ、行くの?」
サラは困惑したように後ずさりする。
「逆に行かないの? 私は行くけど」
「あっ、あなたが行くならわたしも行くわ」
私はドアノブを回して引く。ゆっくりと扉が開き、ギリ人一人通れる廊下に続く。
私は後ろを振り返って震えてるサラの手を握る。
「進むよ? ついてきてね」
「も、もちろんよ」
暗い廊下を四メートルくらい進んだら、もう一つ扉があった。
「押し扉だ、サラ、開けるね?」
「えぇ、気を付けて」
私は慎重に扉を押す。
「なッ! 誰だッ!」
……!?
扉の奥から声がする。私は急いで扉から手を離し、後ろに下がるが、サラがいて下がれない。サラは怯えて私に抱きつく。
「誰なんだ! 今すぐ出てこいッ!」
ポツダムだ、この声。
いつもは私にデレデレしてる声しか聴いてなかったけど、絶対ポツダムの声だ!
「ど、どうしよう、サラ」
「え、し、知らないわよ、でもポツダムを捕まえるために来たんだし……」
「分かった、行くんだね」
「え? いや、まず状況を……」
私はサラから離れ、扉を勢いよく開ける。
「私はアルプス・ローレンス! あんたを問い詰めに来た!」
扉の奥は小さな部屋になっていた。簡素なソファと机があり、窓はなく、明かりはロウソクだけの、クソほど怪しい部屋。
「あ、アルプス様?」
ポツダムはソファから立ち上がり、何か手に持っていたものを後ろに隠す。
「びっくりしました、なにか話すことがあるのですか?」
こいつ、すっとぼけやがって。
「あんたが真犯人なのはわかってる! こっちは一人じゃないの、サラ!」
「えっ、はっ?」
どさくさに紛れて逃げようとしていたサラは急に名前を呼ばれ、仕方なく出てくる。
「なッ、サラ様まで!」
ポツダムはサラを見て目を見開く。私が独断でここまで来たと思ってたんだろうな。
「ポツダム、もうそのような演技はやめて。すべてを話してもらうわ」
「そうだそうだ!」
サラは少しずつポツダムに近づく。二人の距離がなくなる。
サラがポツダムに手を伸ばしたと思ったら、ポツダムが腰が抜けたようにソファに座り込んだ。
「くそ! 取りやがって!」
ポツダムはソファを叩く。
「サラ、何をポツダムから何を取ったの?」
「これよ。後ろに隠してたわ」
私はサラから黒い物体を受け取る。
これは……。
「ゲーム機?」
友達とかがやってるところしか見たことないけど、これは紛れもない、現代のゲーム機だ。
電源ボタンを押すと、ホーム画面が表示される。
「あ、ゲームの途中みたいだよ、なんだろ、これ……」
私は開いてるゲーム名を見て思わず口を閉じる。
『聖女アルプスと七つの光』
このゲームは紛れもない、この世界のゲームだった。
次回 第十七話 あんたが全部始めたくせに無視とかマジでナシ




