こっちの世界の価値観と世界観
「スピッスピッスピッ」
本日はアラネア小隊も参加し体を横に曲げる運動をスピカの号令で行っている。
「キクイムシたちって上手…てかむしろそれが本質的な動きなのか、ところで蛹とかになんないの?」
キクイムシたちがぎこちない動きをして止まった。
「おっなんか怪しいぞ」
『餌が欲しくて脱皮しない』
アラネアが代わりに答えてくれた。
「えっ?それでいいの?一生イモムシのままのつもり」
アラネア小隊の隊員たちは揃って頷いている。
「まじか…この世界の生き物の価値観が理解できない」
『冬に死ぬし…だって』
「おぅ…まじで理解の範疇超えた…」
立ちくらみがしてこめかみを押さえる。
「…トレーとボウルのために○してしまうことになるとは、すまん」
『問題ないあの実の種と埋めて…だって』
キクイムシが激しく頭をヘドバンしてる。
「おっなるほど、アラネアみたいに蘇る系?」
『そうしろと魂が叫んでいる…だって』
アラネアは小首を傾げている。
「もしかしてなんとなく?」
『あぃ』
「そんな賭けに命を使っちゃだめでしょ」
キクイムシがピタッと止まってこっちを見上げた。
『仲間はみんな死んじまった…気の良い虫達だった…だて』
「うっ…あぁ…まぁね…ワタシがね…○しましたよ、ええ確かに、見つけ次第に殲滅しましたとも…」
キクイムシはまだこっちを見上げている。
「…まぁなんだ…諸君達には手伝ってもらった恩もある、小官がちゃんと供養させてもらおう」
キクイムシたちは嬉しげにくねくねしながら転げ回ってる。
「殺虫剤でもスプレーされたのかってくらい元気、んっ?それって元気っていうのか?…まぁいっか」
スピカが吸っている水飴を拝借しておが屑にかけてキクイムシたちに上げるとヘコヘコしながらまっしぐら。
バナナもどきの子房を食べようとしたら、小さいものがいくつかあり、表面に黒糖の粒がついていない。
試しに食べてみると甘くない上に、片栗粉を生で食べたような味がする。
「甘くないということは、この小さいやつの実はデンプンが糖に変わる前だったってことなのかな…なんか使い道があるかもしれないので、後でお湯で溶いてデンプンなのか確かめてみよう」
黒糖の粒がついた大きい実をアラネアと分けて出かけることにした。
「兄弟様、今日も一日お見守りください、ぱんぱん「スピッスピッ」と」
スピカはフードの下の髪の毛の中に入り込んで準備万端、アラネアも肩に乗って何か編み物をしている。
「今日はなにをするんだっけ?糸は出来た、服も出来た、靴も出来た、椅子も出来た、さて?」
『冬』
「あー冬かぁ、保存食とか寒さ対策とかいるのかなぁ」
「バナナもどき以外にも確保しないとまずいかな、ここらへんは寒くなるのかな?」
『あぃ』
「そっか、となると暖炉とか作りたいけど、ウロの中で火は焚けないし、ホビット小屋を作る動画くらいしか見たことないし…竪穴式住居とか?穴掘る道具がないか…」
「スピッスピースピッ」
「お、スピカさんなにかおっしゃりたいと?」
スピカが顔の前でホバリングして誘うように鳴いている。
「いいところがあるのかな?」
「スピピッ」
「じゃ行こっか、キクイムシは…ポケットに入れる?中でうんこしたら潰してから埋めるから気を付けるように」
スピカに連れられて歩き出そうとしたら、フードの中に戻ってきて、頭をつついて方向を教えてくれるナビモードに変わる。
「横着すぎませんかねスピカさん」
頭を5回連打でつつかれる。
「痛つつ、5回は愛しているのサインじゃないのかよ…ってここは異世界か」
スピカナビに案内され、川沿いに出て少し遡ったところで川を渡って崖側の岸を少し歩くと大きめの落石の後ろに隙間があり崖を登れるようになっている。
5mほど登ると隙間が広くなり落石を起こした部分の上部が庇のようになっており、雨が防げそうな感じ。
スピカがフードから出て落石でできた崖の凹みの中ほどに飛んでいき「スピッスピッ」と鳴いている。
「スピカが連れていきたいのはそこ?」
「スピッ」と鳴いてフードの中に戻ってきた。
「アラネア、あそこまで登れる?」
『あぃ』
「お願いできるかな」
『任せて』
ササッとアラネアは登りきって4mくらい上からひょっこり顔を出す。
『主ぃ、見晴らしがいい洞穴がある』
「おぉアクセスさえ問題なければ良物件っぽい、で、ワタシはどうやって登りましょ、はしごを作らないと行けなさそう」
『主ぃハシゴってなに?』
「あぁこんなん」
編み物のように共有しようとしたらできない。
「あ、そっかはしごは木工品だよね、縄ばしごならできるかなっと、おぉできました」
『これが縄ばしご』
「そう、この形を木で作るとハシゴになるよ」
『アラネアと虫たちで作れるかも』
「あぁ風斬とキクイムシで設計図さえあればできるね、ワタシも風斬使えるし、後は材料となる乾いた木があればいいだけか」
スピカがフードから顔を出して「スピッ」と鳴く。
「スピカ、なにか知ってるの?」
「スピピッ」と鳴いて顔の前でホバリングしている。
「じゃぁついていく…ってまたフードに入るのね、ナビよろしく」
川を遡り滝を越え、糸の木の前を通過、糸の木の兄弟はもうヒコバエが出ていてかなり元気、かるく挨拶をしてチョロ水をまいておく。
10分くらい歩くと崖の上から落ちてきてたとおぼしき倒木が折れ重なっている現場に到着。
「おぉこれは凄い、ログハウス作れるレベルじゃん」
アラネアが倒れている幹に登って何かを確認してる。
『まだ虫に食われていない』
「これまたお誂え向き、じゃぁ早速いい感じの木を探して切り出そう、お~!」
「スピピッスピッ」自分の役割はここまでと行った感じでスピカが飛んでいった。
「草原に迎えに行くからね」
一瞬振り向いて「スピッ」と鳴いてから森の中へ消えていった。
倒木の周りをクルッと回っただけで、すぐに真っ直ぐとは言えないながらもまっすぐ目な枝を2本見つける。
「高さが4mくらいで角度をつけるので…3:4:5で行こう、ここでいいかな…風斬」
スパパンとスキルで長さを5mくらいで揃える。
『主ぃうまい』
「あはは、師匠に褒められると照れますなぁ、でここに横木をはめる凹みをこんなふうに間隔をあけて作って欲しいかな」
ポケットからキクイムシ小隊を取り出して地面に絵を描いてみる。
とりあえず一つ削ってもらっている間に横木となる枝を切って半分に割る。
はしごの支柱を60度の角度に立てて、キクイムシの齧った跡に横木を平らな面を上に向け当てる。
「ここの部分を綺麗にハマるように同じ形で削れる?」
キクイムシたちに削ってもらっては凹みに当ててを繰り返して削り跡を確認する。
「よしこれでばっちり、こんな感じでお願い」
削る部分に石で軽く傷をつけておく。
キクイムシ小隊がアギトをカチッと揃えて鳴らしてから作業に取り掛かる。
「後はどうしようか…もし家を作るなら壁とか作らないとだめだよね、板を作ろっか」
アラネアを方に乗せて大きな幹を縦にスライスして板状にする。
「このスキルって便利だよね」
『主ぃスキルうまい』
「ありがと、これもアラネアのおかげだよ」
アラネアのほっぺたを撫でて少し和む。
「よし、とりあえずこんなんでいっかな」とここで気づいた。
「どうやって運ぼう?」
試しに板を持ち上げようとして…「せやっはっ!」…諦めた。
「まじか…いや神様は乗り越えられない試練など課さない、こっちに神様いるかわからんけど…
なんか魔法生えないかなぁ、あっでも強化系の魔法の呪文って知らないから試せもしないか
使えるのは今のところこれだけだし、ウォーターボール」
水の玉を出して手のひらに浮かべる。
「ふと思ったんだけど水が浮いてるとか、この世界ってどうなってるんだろうね、引力はガンガンに感じるのに不思議…?…!?」
「おっおっおおお、なんか今とんでもないことに気づいてしまったかもしれない」
ウォーターボールに落ちていた大きめの木の破片を放り込む。
水玉の天井に浮き上がってつかえた木が窮屈そうに水に浸かりながらも張り付いている。
「水玉の中に木があるのに重くならない?」
バンバン放り込む。
水玉が薄く伸びて木片の周りにこびりついた状態になるも水玉にくるまれた木は浮いている。
「こっこれはっっ!って地球の科学者ならなるところだろうね、ワタシも感動しているけど、そのとんでもなさが理解できていないだけ薄い反応になるよね……くっ……ヤッター!イェ~イ!イヤッフォーイ!」
狂ったように飛び跳ねてたら肩にしがみついていたアラネアが不思議そうにこっちを見ている。
『主ぃどうしたの』
「今この世界の魔法のとんでもなさに感動してるの」
『楽しい?』
「楽しいよ、とってもね」
『じゃ良かた』
その後実験した結果、全く重くならないわけではないらしいのと、中の物が水を突き破ってしまうと質量を取り戻し?というか思い出したようにドババババと崩れ落ちることがわかった、石も同様に水でくるむと水玉の中で沈みはするけど重さはあまり感じない、1mくらいの岩を入れようとしたら水玉を突き破ってしまった。
「そこそこの物なら運べそうだね、凄い能力なんだとは思うけど、地味な使い方しか思い浮かばない…」
キクイムシ小隊が加工を終えたあたりで実験を止めて、出来たはしごの材料をウォーターボールでくるんで持ち上げる。
森の中をウォーターボールに木や枝が触れないように気をつけて進み崖の洞穴の下に運ぶ。
支柱に横木をはめ込み、はしごを組み立てた後、全体をウォーターボールでくるんで持ち上げ設置する。
「よいしょっ」
洞穴の上に登って見ると視界が一気に開けた。
正面に丘、右手に滝と泉が見え、更に下の森の水平線に夕日の魁が見え始めている。
「おっもうこんな時間、お昼を食べるの忘れてた…デンプンの実験は明日にしよう、残りの板を運んだらスピカを迎えに行かないと」
丘を越えて草原につく頃には夕日が赤く染まっていた。
薄暗くなりかけた頃、スピカが飛んできてフードの下に潜り込む。
「スピカ、今日はありがとう、どうにかこっちで生きていけそうな気がしたの」
「スピーースピーー」
「寝ちゃったか、いいセリフを口にしたところなのになぁ」
『主ぃざんねん』




