Case;03 『復讐と決着』
千奈「…パンドラ…!」
パンドラ「いやはや、お久しぶりでございますネ?」
千奈「こんなに早く会えるとはね…」
気持ち悪い笑顔に身の毛もよだつ程の恐怖を感じる
パンドラ「私もそんなつもりはありませんでしたガ、さすがに目撃者をみすみす逃したままではいられませんからねネ…殺しに来ましたヨ?」
顔は笑っていたが、その瞳は殺意に満ちたものだった
そんな…こんなに早くに会うなんて…
いや、これはチャンスだ。復讐の…目の前で唯姉さんへを殺した、あの『殺人鬼』への…
パンドラ「さて、殺り合いましょウ。もちろん、あるのでしょウ?先ほどから見ていましたガ…あなたはどうやラ、加速させるか、速度を操る能力があるようですネ」
見透かされたような一言に少し体が震える
パンドラがモノクル型のデバイスを起動する。『Code;ヲ起動シマス』という機械音と共にパンドラの横から火柱が上がる。中から出たのはパンドラのコードだった
姿は、黒と白のチェック柄のシルクハットをかぶっている、炎のマスクを着けた帽子と同じ柄の燕尾服だった。さながらエンターテイナー。または、小説に出る『アルセーヌ・ルパン』だった。右手にはトランプ、左手にはステッキ、背中には蝶々のような炎の羽を携えていた
パンドラ「この子が私のコード、『インヘル』でス。君も昨日のあの女性、『柊 唯』さんでしたっケ?あの方と同じように燃え尽きて死んでいただきまス。まあ、まずは手始めに…これでもどうでス?」
インヘルの右手が燃えると、数枚の燃え盛るトランプを私に投げてくる
まずい、どうにかしなきゃ…!どう動くか考える前に言葉が咄嗟に出る
千奈「『イダテン』!!」
咄嗟に投げかけた言葉に答えるかのように目の前にイダテンが来る
千奈「えーっと…突貫!!」
イダテンがインヘルの投げたトランプの間を抜けていく。横切るトランプの火が風圧で消えて、勢いを失う。インヘルへと向かうイダテンがそのまま走る
パンドラ「インヘル、飛翔」
そういうと、インヘルが羽を羽ばたかせて空中に移動する
イダテンは標的を見失い、一旦私の元まで帰ってくる
千奈「その子、飛べるんですね」
パンドラ「ええ、そうですヨ。これが意外に楽でねエ…重宝するんですヨ♪」
パンドラが指を鳴らす。すると、インヘルがゆっくり回転し、燃え盛る竜巻を起こす
千奈「イダテン、試してたやつ…いくよ」
答えるかのように前足をあげる
千奈「あたって…」
その右手にはハンドガン。弾は残り17発…狙いを定める。前には竜巻でできた壁がボウボウと燃えながら迫ってくる。狙いはさっきまでパンドラがいた場所…
トリガーを…引く!放たれるBB弾!通常ならば溶けて消えてしまうその弾丸は、ありえない速度で加速を続ける。その加速を、風を味方につけて竜巻を…抜ける!
「な!?グハァ!」
消え去る竜巻、狼狽えるパンドラ。よく見ると、肩から細く血が流れる。そう、被弾したのは肩。竜巻の風で少し弾道が逸れたようだった
パンドラ「こんの…小娘ェ!!」
怒りに満ちたその顔は、エンターテイナーとしての顔ではなく一人のクズの顔だった
パンドラ「絶対に!…殺してやるぞオ!!!」
余裕の失ったパンドラを見て震えが止まる
そうか、あいつも人間なんだ。頭では理解していた…でも、これで本当に理解した!あいつは血の通っていない殺人機械じゃないんだ!!
千奈「怒っているの?パンドラ。怒りに震えているの!?パンドラァ!!」
頭は冷静に、されど心は誰より情熱的に!!
パンドラ「クソが!!あいつを!あの小娘を!殺せ!!インヘルゥゥゥ!!!」
インヘルがステッキを空に掲げる。掲げた手から火球が形成され、大きく成長していく。その姿は、太陽を掲げる神のようだった
私は走り出す。火球から逃げる為ではない、作戦のために!
走った先には壁。背を壁に着けて、ポーチから空き缶ほどの『モノ』を取り出し、太陽に投げつける
パンドラ「何をしようが無駄だ!!そんなコンクリートの壁など燃やし尽くす!!」
パンドラは気付かない。投げつけた『モノ』に。そして、太陽がどこにあるかを!
パンドラ「放て!インヘル!!!」
ステッキを前に向けたその瞬間、太陽からBB弾が炸裂する。もちろん、加速により、風をまとって
その結果、太陽は消滅し、空からパンドラに銃弾の雨が降り注ぐ
私は壁に隠れていたために一発も当たらない。しかし、インヘルとパンドラにはそれなりにダメージが入る
パンドラ「貴様!貴様!!何をした!!」
千奈「手榴弾だよ。BB弾のね」
左手でポーチを弄る。中から手榴弾を出して見せる
なんちゃって、そのまま右手のハンドガンで二発撃つ。狙いは左のふともも
パンドラ「グッ…!小娘…」
顔を伏せて太ももを手で押さえる。いつの間にかインヘルも地上に戻っている
千奈「イダテン…突貫…」
イダテンはインヘルに突貫する。インヘルはイダテンの突貫をもろに受ける。それに感覚共有を受けたパンドラが後方に吹っ飛ぶ
遅い。遅いよ…こんな奴なんかに…唯姉さんは負けたんだ…
千奈「こっちを見ろ!パンドラ!!」
パンドラがこっちを見る。…きっとパンドラが最後に見た景色は…目の前に広がるBB弾なんだろうな…
パンドラの顔の目の前で手榴弾がはじける。実銃と変わらない速さで放たれる。それに驚いたパンドラが顔を引く。が、被弾。そして致命傷
千奈「起きろ!パンドラ!まだだ。まだ、私の復讐は終わってない!!立て、立ち上がれ!!」
千奈が近寄る。すると、起き上がったインヘルが炎の鞭を放つ。頬を炎が焼く
パンドラ「まだ、終わってねぇ…」
ゆらりと、今にも倒れそうな脚で立つ
パンドラ「イン…ヘル…まだだ。まだ俺は…やれるんだ…インヘル…大火球だ…」
インヘルが太陽を形成する。インヘルは足元が光の粒子に包まれる
千奈「…インヘルが…」
こんな奴のコードじゃなければ…でも、これが奴の『潜在的な欲望』なのならば…仕方がないのかな…
ハンドガンをインヘルに向ける。忠犬のように主人に従うインヘルに、向けたハンドガンの照準がブレる
千奈「…っ!なんで!」
引き金が引けない。あいつの、分身なのに!
千奈「…ならば…あいつを…」
パンドラに照準を向ける。インヘルが大火球を放つ。私もハンドガンのトリガーを引く
復讐の相手に情けなど微塵もない
捉えた弾丸は奴の胸を貫く。パンドラが静かに倒れる
放たれた大火球も目の前で消滅した。残った火の粉が悲しく天に昇る
インヘルはパンドラに寄って行く。静かに頬を撫でる。風なのか、それとも本当に触れたのか…パンドラの髪が静かに揺れた
千奈「あー…終わった。…唯姉さんに恩を返せたかな…」
腰が抜けてその場で膝を着く。走馬灯のように唯姉さんとの思い出が頭をめぐる
???「千奈ちゃん、立って。急いで」
五分か、十分か、しばらく呆けていたと思うそんな私に、誰かが後ろから話しかけてくる
誰?…もしかして見られてた?…コードマン…?
千奈「イダテン、突貫!」
慌てて立ち上がる!振り向いた先にいたのは…!?
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