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さて、オシオキだ

――翌朝

 陽光がカーテン越しに、部屋へと差し込んでくる。

 目覚めた俺は、一つ伸びをし……

 ……ン?


「やあ、おはよ……んぐっ!?」


 起きざまに、リラへデコピン一発。


「い、痛いじゃないか」


 涙目で抗議する彼女。イタズラする猫には躾が必要だ。


「あ〜の〜な〜」


 俺は思わず頭を抱えた。


「裸で抱きついてるんじゃねぇ!」

「いや、既成事実をだな。君だって昨日、“責任”をとる覚悟を決めたのだろう?」


 そそそ、そーだけどさ。


「だからって、今すんな、今」

「その決意を覆される前にと思ってな。君はいつもそうだ」


 ……痛いところ突くんじゃねぇヨ。


「あ、あの……やっぱり外に出てくよ」


 アーミルの声。彼は慌てた様に服を着ている。


「お構いなく。いや……そうだな。少しばかり外に出ててくれないか? 一小刻(約十分)もいらないからさ」

「いいけど……早すぎない?」

「いくらなんでも、それは情けなさすぎるのではないか?」


 いや、だからさー。内心がっくりとくずおれる。


「るせー。……ちげーよ」


 なんとか抗議の声を絞り出す。

 首をひねりつつ、アーミルは一旦部屋の外に出て行った。


「さて、と」


 俺は布団を引き剥がした。リラの姿が露わになった。

 oh……やっぱし全裸になってやがる。


「さあ、早く」

「ああ。……“麻痺”!」

『なっ!?』


 硬直するリラ。

 俺はそれを、手早く布団で包んだ。そして床上に落ちた下着と寝間着を拾う。


「さて、オシオキだ」


 そして簀巻きのリラを担ぎ上げた。


『そんな〜』


 “念話”で抗議の声を上げるリラを無視し、俺は部屋を出て浴室へと向かった。

 まー、途中で行きあったアーミルやティシアさん夫妻はドン引きしていたがな〜。



――朝食後

 茶を飲みつつ、三人で今日の予定を話し合う。


「今日の狩場は、ティフレス村へと向かう街道沿いなどはどうでしょうか?」


 アーミルの提案。


「ふ〜む……」


 ティフレス村、か。

 騎士団の連中はまだうろついてるのかな?

 まぁ、街道から外れりゃ問題ないか。


「この辺りは、オアシスから続く地下水道が通ってるので、あのイモムシも出現する可能性があります。昨日の場所ほどではありませんがね」


 あ〜、何だっけ? 地理の授業で習ったヤツ。中東なんかの地下灌漑施設だっけ。そいつがリシュートから周辺の村へと水を送ってるのか。

 そしてそこから滲み出た水分のおかげで、巨大イモムシも生息できる、と。無論、大サソリも水分は欲するわけだしな。


「なるほどね」


 それも、アリか。


「……エスリーンはどう思う?」


「騎士団の連中は気になるけど……あの辺りはわりと大サソリが出るのよね。悪くないと思うわ」

 おkか。なら……


「じゃあ、そこにしようか」

「それじゃ、決まりですね。ラクダを連れて来ますので、荷車の準備をお願いします」

「おう」


 そうして俺達は席を立つ。



「……そういやリラは?」


 裏庭へと向かいつつ、エスリーンに問う。

 そういえば、“声”が聞こえんな。アドバイスが欲しかったんだが。


「何か半泣きっぽい声で、ブツブツ言ってるみたいだけど……何かあったの?」

「あ〜、ちっとオシオキをね」


 ……効きすぎたか。


「なるほど。……詳細は聞かないほうがいいわね」

「……ああ」


 それがお互いのためだ。……多分。



――しばし後

 アーミルと合流した後、ティフレス村側の門へと向かう。

 一つ気になったのは、アーミルがラクダを連れて戻ってくるまでの時間が昨日に比べて少々長かった事だ。

 手続きに時間がかかった様なのだが……

 まぁ、いい。

 それよりも気になったのが、やはり騎士団の動きだ。

 大通りに出た途端、おとつい遭遇した騎士が、アルタワール側の門へと向かう姿が見えたのだ。

 幸い気付かれる事なく通り過ぎて行ったが……。

 頻繁に行き来があるってコトは、何かあるのだろうか?

 そういやあの左遷騎士もここにいたな。とりあえずフードを目深にかぶり、極力顔を見られない様にし、往来を歩く。

 そして、門へとたどり着いた。

 ……ナンか混んでんな。前はほぼ素通りだったのに。

 そこで簡単な手続きを行い、……おっと。

 何故か門にまで聖堂騎士がいやがる。衛兵の後ろで、通行人のチェックをしている様だ。幸い見知った顔ではないが、あまり気分のいいモンじゃないな。


「何かあったんですかね?」


 前に並んだおっさんに聞いてみる。彼も騎士達の姿を見て顔を顰めていた。あまり印象は持っていないよーだな。


「ここ数日ずっとだよ。何でも、裏切り者とやらを森の中に追い詰めたのはいいが、返り討ちにあってしまったらしいんだよね。それ以来……おっと」


 おっと、騎士がこっちを睨みやがった。

 うーむ、帰りは北門からにした方がいいか。



 門をくぐり、街道を行く。そして、門が見えなくなったあたりで道から逸れた。

 十数分ほどしばらく進むと、ちょっとした藪ができている箇所があった。

 つまりはこの下を、リシュートからティフレス村へと続く地下水路が通っているワケだな。

 少し藪の奥に分け入ると、ちょっとした池もある。調整池ってトコか?


「ヨシ。ここで狩りをするか」


 エスリーン、そしてアーミルを見る。


「そうね。まさかこんな場所があったなんて」

「ここならよさそうですね」


 ふむ。それなら話が早い。

 池のそばにテキトーな木陰を見つけ、ラクダをつなぐ。

 じゃ、狩りを始めようか。

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