ホレてくれてもいーんだぜ?
さて、どーしたモンか。
再び宙を舞うスノリゴスター強化型を見上げ、対策を練る。
まずは地上に引きずり下ろす事だな。
なら……
「“旋風”!」
上空で巻き起こる、巨大な竜巻。
例え魔力も使って飛んでたとしても、これには抗えまい!
「グ……ウ……」
流石のヤツも高度を維持できず、降下して来た。
そしてそこに、
「“土槍”!」
「ガッ!?」
エスリーンの呪文。下から現れた土の槍が突き上げた。
おっ、イイ感じで顎下にカウンター気味でヒットした?
おっしゃ。まだまだ行くぜ!
俺は“旋風”の効果切れを見越し、ダッシュ。さらにゴロつく岩を飛び越え、ジャンプする。
そして、体勢を立て直そうとしているヤツの脳天めがけて……って、
「グゥ?」
「おう!?」
って、跳びすぎた! これじゃサーベルがとどかねぇ。我ながら、どんな脚力だよ……
仕方がねェ。そんなら……
「“衝弾”!」
背中中央めがけて衝撃波を放つ。
「ガアッ!」
命中。ヤツはまだ残っていた土槍に叩きつけられた。
さて、と。俺は……って、ヤベッ、真下に岩だ!
魔法を放った反動でさらに上空へとはね上げられ、更に落下地点に岩があるときた。
……チッ!
「“軽身”!」
重量低減。正直白兵戦では逆効果な気もしなくはないが、この際仕方がねェ。
「……っと」
身が軽くなり、余裕ができた。体勢を整えて岩の上に着地。すぐさまそれを蹴ってジャンプ。
砕けた土槍の上で身を起こしたヤツの背中に飛びかかると、サーベルを突き立てた。
「チッ……」
「ガ? ナンノツモリダ」
クソッ、やっぱし刃が通らねェ。そりゃ体重が減っちまったらこの手の攻撃の威力は半減するわな。
なら、戦法を変えるだけだ。
その背を蹴って飛び退る。そして近くの岩の上に着地。
「……“光弾”!」
すかさず魔法攻撃。
「“光槍”!」
同時にエスリーンも呪文を唱えた。
背後からの無数の光弾に前方からの光の槍。さぁ、どうする? ……って、マズい!
奴は前方へと跳ねた。
「逃げろ!」
光の槍を躱すと、背中に当たる光弾は無視してエスリーンの方へと突進する。タフなヤツめ。
「きゃあっ!?」
彼女はあわてて飛び退る。
魔導師がよく使うフード付きマントを纏っている為にそうは見えないが、エスリーンの身体能力は高い。あのゴロツキ連中の一人や二人ならノしちまうだろう。
「……このっ!」
すぐさまマントを脱ぎ捨てると、横っ飛びしつつヤツに投げつけた。
おおっ、闘牛みてぇだ。
ケド、感心してるヒマはねェ。
とはいえ、万一あんなバケモノに捕らえられちまったら、いくらエスリーンでもヤバい。身体能力が高いと言っても、あくまでも通常の人間と比較しての話であって、怪物と正面切って殴りあえるってワケじゃない。
そいつは俺の役目だ。
「グ……ウ?」
ヤツは頭に被ったマントを引きはがそうとして苦戦している。
そりゃ通常のワニよりいくらか長いとはいえ、スノリゴスターの前脚じゃねぇ……
チャンスだ。
「“斬輪”!」
円盤型の光のカッターを放つ。
とりあえず、二枚。枚数増やしたトコロで、ラスディンのおっさんみたく精密にコントロール出来るワケじゃねェからな。まだ黒魔術のレベル低いし。
狙うは、背中の翼。また飛ばれると厄介だ。それに、そこなら装甲も薄いだろう。
俺が念ずるままカッターは宙を飛び、ヤツの背へと向かった。そして狙い過たず、命中。
「グアアッ!」
ヤつの絶叫。血飛沫とともに落下する二枚の羽根。
切断成功だ。もはやヤツは飛ぶコトも出来まい。
丁度俺も“軽身”の効果が切れたんで、あとは地上での肉弾戦で決着だ。
シバき合い上等たゼ! ……多分。
すかさずサーベルを構え、突進。そして大上段から斬り下ろす。
その一撃は、肩口を大きく斬り裂いた。だが、
「ガァアッ!」
尾の一撃で跳ね飛ばされる。
「ソースケ!」
エスリーンの声。
だが、ダイジョーブだ。こんなモンでやられやしねェ。
岩に叩きつけられる寸前、空中で反転。そして岩を蹴ると、ヤツに向かって飛ぶ。
ヘヘッ空中殺法ってヤツだ。
そのまま一気に斬りかかる。
「ぅラァ!」
すれ違いざまに横振りの一撃。
またしても上がる血飛沫。
だが、まだだ!
着地。すぐさま地を蹴り、さらに岩を蹴って方向転換。そして身体をひねって遠心力を使い、斬撃の威力を増して……
「っおりゃ!」
空中回転斬り。う〜む、二刀流なら更に威力倍だった? まっ、いーか。
「ガァー!」
絶叫。そして吹き上がる血。
おっしゃ!
「ソースケ、凄い……」
エスリーンの声。ホレてくれてもいーんだぜ?
行くぜ、もう一撃!
そしてすぐさま跳躍。また手近な岩を蹴って方向転換……って、
「あ……あれ?」
ジャンプできず、そのまま地面に落下する。
アカン。目ェ回した。
クソッ、三半規管だっけ? そーいうの強化するスキルねぇんかな? 空中殺法スキルとか。いや、曲芸でもいーか。
……おっと。
「危ない!」
エスリーンの声。
俺に向かって開かれたヤツのアゴ。
だが、そのまんまやられる俺じゃねぇ。
すぐさま跳ね起き、フラつきながらもジャンプ。バク転しながら下顎を蹴っぱぐってやる。
オーバーヘッドキックだ。
踏み切りの力が足らんかったため一人バックドロップ状態で落下するが、すぐさまヘッドスプリングで跳ね起きた。小学校のトキやってみたらボールにカスりもせんかったからな。当たっただけでもヨシとすべき?
あんトキと同じよーにアタマ打ったが、この際構ってらんねェ。
が、ちっとフラついちまう。
そこに襲いかかってくるヤツ。
クソッ、避けるヒマはねェ。サーベルを振る余裕も。
そンなら……
「ぐぅっ! ……ぅおぉ」
ヤツの身体を受け止めると、顎下に手を差し込み、もう片方の腕で頭を抱える。サーベルは手放さざるを得ん。
「グガッ!?」
戸惑ったようなヤツの声。さすがにこのパワーは予測してなかったか。
オシッ、今のうち!
「うりゃっ!」
強引に担ぎ上げ、ジャンプ。
「マサカ、ワレヲ……」
案の定、驚いてやがるぜ。
さぁ、これでも喰らいな!
「だりゃあ!」
「ガフッ!」
着地と同時にヤツの脳天を地面に叩きつけた。パイルドライバーってヤツ?
が、これで終わりじゃねェ。
「まだまだぁ!」
そのままヤツの身体を引っこ抜き、頭越しに後方へと投げた。
その下にあるのは、小さな岩。ヤツはそれで、腰のあたりをしたたかに打ち付ける。
「ガァアッ!」
ヤツの怒声。痛みに悶えてやがる。
だが、俺もアチコチやべェ。ナンか肩とか腰とか悲鳴をあげてら。
200キロから300キロ、いやそれ以上ありそーなヤツを二度も持ちあげりゃそーなるわな。
そろそろ決めねェといかんか。
サーベルを拾い、構える。
と、ヤツものろのろと起き上がった。
「ゴアァ……ヨクモ!」
怒りの咆哮。そして突進。
だが、勢いはねェ。脚にキてやがんな。
俺もまた、地を蹴った。
が、まだフラつく。
……チッ、ヒトのコト言えねェや。
ケド、気合いを入れ直さねば。
「ガァ!」
ヤツの顎が迫る。その口中に並ぶ、鋭い歯。その中でも特に長大な二対の牙が、鈍く光った。
「でりゃあ!」
俺もまた、ヤツめがけてサーベルを大上段から振り下ろす。
そして、俺とヤツの影が交錯した。




