……多分。そう、多分
――天蛇の塔
俺達はフィルズ・ロスタミや聖堂騎士達の遺骨を集めると、連中によって蹂躙された部屋を片付けた。
そこは、ついひと月ほど前までは、エスリーンが暮らしていた場所。
フィルズ・ロスタミが現れなければ、いつもと変わらぬ日常が続いていたはずの場所。
この塔の面々がゾンビ化されてしまっても、ここだけは手付かずのまま残されていた。
その後、聖堂騎士達の手によって、幾らかは荒らされてしまったが……
その場所が徹底的に破壊されてしまったのだ。
エスリーンは黙々とゴミを仕分け、袋に詰めて行く。
俺は破壊された家具などのあり合わせの材料で、割られた窓を塞いだ。
こういうのは得意だ。MOD無し状態で器用度16は伊達じゃねぇ。
「……そろそろいいかい?」
家具の残骸を片付け終えたところで、エスリーンに声をかける。
彼女は家具から救出した荷物をまとめ終えたところだった。
「……ええ」
ややあって、顔を上げる。
その目には、微かに涙が浮かんでいた。
やはり、思い出の詰まったこの部屋が破壊されたのは、相当悲しいのだろう。
俺ですら、自分の部屋がこうなったら、悲しむだろーな。もう、戻るコトはないのかもしれん、が……。
「……ソースケ?」
エスリーンの声。
しまった。少々ぼうっとしていた。
「じゃあ、上の部屋片付けたら、行こうか」
「そうね」
フィルズ・ロスタミと聖堂騎士達との戦場となった最上階の研究室には、聖堂騎士の脚先や緑色の粘液などが残されていた。
エスリーンの“浄炎”などでそれを片付けると、俺達は塔を後にした。
騎士達の遺骨は、森の中の小さな広場に穴を掘って埋め、小さな石を置いて墓標とした。
――祈りの小径亭
日も傾いた頃、俺達は宿にたどり着いた。
「おかえり〜。……何かあったの?」
俺たちの様子を見、ティシアさんが問う。
「ええ、実は……」
さて、どー説明すべきか。
……そうだな。
「聖堂騎士団がうろついていたので塔には入れなかったんですが……森の中で塔を襲った賊と遭遇したんです。おそらく、騎士団を恐れて移動中だったんでしょうね。で、戦闘になり、倒したんです」
「そうなの……。怪我は無い?」
「ええ、大丈夫ですよ。エスリーンの回復魔法もありましたし。見事、連中を討ち取りました。で、残った連中は騎士団に引き渡して帰ってきました」
「そう……仇を取れたのね」
「……はい」
少々嘘の混じった説明をしたので、エスリーンも少し心苦しそうだが、まぁ仕方なかろう。
「……ああ、そうだ。騎士団は何やら裏切り者を追っていたそうで……自分達の事についてはあまり人に喋るなと言われました。職務遂行に問題が起こる可能性があるとかで……。なので、この事については他言無用という事でお願いします」
「分かったわ」
彼女はうなずいてくれた。
これでよし。俺達がフィルズ・ロスタミや騎士団と接触した事が他に知られると、妙な疑いをかけられる可能性もあるからな。
あの連中の件は伏せておいたほうがいいだろう。余計な情報を与えるのは、ヘタすりゃこの人たちを危険に晒す可能性もあるワケだしな。
騎士団の動きが慌ただしいことに関しては、フィルズ・ロスタミに関連付けておけば良いだろう。
「もうすぐ夕食の時間よ。腕によりをかけてご馳走作るわね」
「おおっ、待ってましたー。腹減ってたんですよ!」
「それまでに身体でも綺麗にしておくといいわ。用意してあるわよ」
「は〜い」
用意されたぬるま湯で身体を拭く。
戦闘で流した汗をぬぐい、身体を清める。
いや〜、さっぱりしたゼ。乾燥地帯だから汗でベトつかないといっても、やっぱし身体を拭くだけでも気分が違う。
さて……そろそろ時間だな。
メシだ、メシだ〜。
――食後
あ〜、食った、食った。
……ここまで来たら、もー慣れちまったゼ。
一皮剥けたっつーカンジ?
ジャイアントスコーピオンの毒腺を漬けたヤツ、ケッコー美味いのな。毒を抜くために何年も漬けなきゃいけ無いそーなので、結構手間がかかるお高い食材だ。俺達が持ち込んだヤツも、何年後かにはいいカンジに仕上がってるんだろーナ。
そいつを祝いにと出してくれたってワケだ。食わないわけにはいかねぇよな。
日本のどこだかで、フグの肝か何かを何かに漬け込んで毒を抜くってのもあるんだっけ? アレもこんなカンジなんかねぇ?
まぁいいや。
それよりも、だ。
エスリーンの敵討ちは終わった。
だから……これからどうするか、だ。
その事は、二人で話し合わなきゃならない。
――部屋
あの〜、ナンでベッドがくっつけてあるんですかねぇ?
あ……そういや食堂で『後でこれからの事を云々』って話をしてたっけ……。
まさか誤解された!?
「ティシア姉さん、ここまでしてくれなくても……」
エスリーンが呟く。
……もしかして、おkなん? おkなん?
「……そこ、鼻息荒い!」
「ふごっ!?」
右脇腹に食い込む鋭いブロー。
こ……これなら世界をとれるかもしれねぇ。
いや、ジョーダンはさておき。
「……ゴメン。やりすぎた」
呻く俺を見、彼女が呟く。
「……いいよ。貴方がいなければ、私は仇を討つ事なんて出来なかった。だから……」
エスリーンは上着を脱いだ。
「あ……ああ」
……ダメだな俺。そーいう返事しか出来んかった。もっと気の利いたセリフが言えりゃいーんだけどサ。
そして俺達はベッドに入って抱き合い……結局そのまま眠りについちまった。
まぁ。戦闘で疲労は蓄積していたしねぇ。仕方ねェ。
……多分。そう、多分。




