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コレ、ピンチ?

 フィルズ・ロスタミは籠手を戻すと、また剣を構え直す。

 ……チッ、こんなコトなら多少屋敷に損害が出ても、あの“ゾンビ”は焼却しとくべきだったか?

 いや、今言ってもしゃーない。

 それよりも、だ。


「ソイツは依頼主が回収したハズだが……」

「ああ、ヤツか。ヤツなら“コイツ”の腹のなかさ」


 オイ、待てや。屋敷掃除の依頼主を食っちまったのかよ! なんてヤロウだ。

 ……いや待て。ナンでコイツがその依頼主を知ってるんだ? まさか、ハルジーのオッサンが俺達の情報ごとコイツに渡してたんか?

 いや……あのオッサンにはそんなコトする理由はないか……って、おっとォ!

 ヤツの鋭い打ち込み。

 それを、サーベルで受け流す。


「チッ……」


 今度は上手くいった。が、手が痺れる。コイツの腕力、どーなってやがるんだ?

 鍔迫り合いをしつつ、アカシックレコードにアクセス。



――――


 名前 : フィルズ・ロスタミ 性別 : 男 種族 : 人間 経験レベル : - 身長 : 174cm 体重 : 56kg

 体力度 : 26 耐久度 : 24 器用度 : 18 敏捷度 : 20 幸運度 : 7

 精神力 : 22 精神耐久度 : 4 知性度 : 11 知恵 : 14 魅力度 : 14

 HP : 47 / 50 MP : 23 / 26

 攻撃修正 : +25 回避修正 : +13 速度 : 速 魔法修正 : +18 魔防修正 : +6

 スキル : 剣術7 短剣術2 格闘3 槍術5 暗器術2 戦術4 黒魔法1 神聖魔法4 呪術2 危険感知1 馬術4 礼儀作法3

 所持金 : 62381 経験点 : -

 武器 : 長剣 短剣 匕首 防具 : レザーアーマー ガントレット 装備 : 服 護符 呪具 魔道石

 言語 : トゥラーン語3 レマウス語1 ゼルゲト語2 ソアン語1


――――



 ……おい、ナンだこりゃ。

 一気にステータスが上昇してやがる。……一部下がってんのもあるがな。

 ヤツの身にナニが起きたんだ? まるでMODで強化された俺の様な……


「……!」


 頭の片隅に走る痛み。

 チッ、またかよ。

 まぁイイさ。俺に今出来るのは、目の前のヤツを倒すことのみだ。


「喰らいやがれ!」


 大上段からの一撃。

 しかし、軽々と受け流される。

 クソッ、埒が開かん。

 と、その時……


「“減命”!」


 エスリーンの声。

 エナジードレインか。

 なーるほど。精神耐久度が低いヤツにゃ一番有効な攻撃だろう。


「ぬぐぅ……」


 ヤツの呻き。

 おっ、効いてる効いてる。

 じゃあ、俺も……


「“恐慌”!」


 相手を混乱させる呪文だ。

 これで行動不能になってくれたら……。


「ぐっ……うぅ……」


 ヤツは頭を抱えて呻く。よし。チャンスだ。

 俺は剣を振りかぶり……。


「ガアァッ!」

「うをっ!?」


 ヤツが獣の如き咆哮を上げた。

 な……何が起きた? もしかして、マズったか?

 ヤツの左腕の籠手が、大きく膨れ上がった。ちょうど俺が切断したあたりか?

 え? まさか……

 直後、左の籠手が弾け飛ぶ。そして、腕自体も大きく膨れ上がり、姿を変えていく。

 ゲッ……あんトキのフレッシュゴーレムと同じかよ。……って、当たり前か。

 更にヤツの身体が一回り大きくなった様に感じる。

 いや……錯覚じゃねぇ。間違いなくヤツ自身がデカくなってやがる。

 ヤツの肉が膨れ上がり、骨が変形していく。そして膨張する肉体に耐えられなくなった皮膚が裂け、血と緑色の粘液が噴き出す。

 理性が失われたことで、抑え込まれていた“スライム”が暴走し、身体そのものを作り変えてしまったのか。

 精神耐久度(正気度)をケズる、スプラッタな変身シークエンスだナ。うえっ……

 そうして、ヤツは怪物へと成り果ててしまった。


「ゴフォフォフォ……」


 怪物と化したフィルズ・ロスタミは、俺達を睥睨し、嗤った。


「ソースケ……」


 エスリーンの身体は震えている。


「だ……大丈夫だ。前にもこんなヤツを倒したしな」


 精一杯の強がり。

 無論ヤツは、あの時のフレッシュゴーレムよりも強いだろう。“素材”が違うだろうしな。

 ……どうする? 二番煎じだが、フレッシュゴーレム戦と同じ戦法を試してみるか。おそらく弱点はそう変わらんだろうしナ。


「いくぜ……“迅雷”!」


 結印。そして電撃を放つ。

 あの時よりも強化された雷霆が、ヤツの身体を撃ち据える。


「グッ……ゴフォッ……ガァアッ!」

 ヤツは絶叫を上げ、身体を縮こまらせる。

 効いているのか? いや……違う!


「マズい!」

「“抗魔”!」


 エスリーンの声。


「ゴハァッ!」


 直後、ヤツは再び咆哮を上げ、電撃を弾き飛ばした。

 そして跳ね返された電撃は、俺たちをも襲う。


「うおっ!」

「きゃあっ!」


 クソッ、エスリーンの“抗魔”がなけりゃ、結構なダメージ食ってたな。ファインプレーだ。

 にしても……“迅雷”が効かねぇとはな。どーするよ。


「ソースケ!」

「うをっ!」


 大上段からの一撃が、俺を襲う。

 横っ飛びで回避。しかしその一撃は、床を深々と抉った。

 うげっ、凄まじいパワーだぜ。あんなの喰らっちまったら、真っ二つドコロかミンチよりひでぇ状態(アリサマ)になりそーだ。

 ケド、ヤツの剣も今のでひん曲がっちまった。ケッコーなワザモノだろーに、もったいねェ。

 だが、それほどヤツの戦力は落ちちゃいねぇだろーな。あの腕力だし。ヘタすりゃ直接ブン殴られた方がイタいかもしれん。

 で、次はどーするよ。やっぱ凍気系?

 とりあえず、エスリーンにも協力を頼む。

 そして、


「……“氷櫃”」

「“大凍”!」


 同時に呪文が放たれた。

 強烈な凍気はヤツどころか部屋中まとめて凍りつかせる。

 ムチャクチャ寒いが、ガマンだ。

 さて、ここに“衝弾”でもぶち当てれば……


「……待って! 何かが……」


 エスリーンの声。


「ん? どうした? ……うげっ!」


 扉が軋む音。

 誰かが蹴破ろうとしてやがる。こんなトキに、マジかよ。

 そしてとうとう扉が破壊され、数人の影がなだれ込んで来た。

 それは……ゾンビ化したアルセス聖堂騎士団の騎士達だった。

 チッ……ジャマが入ったか。ケドこれなら……

 しかし、その時……

 背後で何かがヒビ割れる音が響く。


「ちょっ、まさか……」


 振り返ると、ヤツの身体を覆う氷にヒビが入ってやがる。中まで凍ってなかったんかよォ!

 も……もしかしてコレ、ピンチ?

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