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そ、ソレ喰えるの!?

――ガルンダール街道 アルタワール -リシュート中間地点

「ふぅ……。片付いたか」


 ジャイアントスコーピオンを倒した俺は、埃を払うと大きく息を吐いた。

 ついでに脳内で、ステイタスを確認。

 ジャイアントスコーピオンを倒した経験点は110。まだレベルアップは先の様だ。

 まっ、仕方ねぇ。

 そして、エスリーンに目をやる。


「エスリーン、怪我はないか?」

「ええ。大丈夫。ソースケこそ……」

「俺は何ともないぜ。ただ、ハラが減ったな。そろそろメシにしねぇ?」


 まだどっかからいい匂いがしやがるナ。気のせいにしちゃあ……


「そうね。私もお腹すいたわ。そろそろお昼時だものね」

「よし。じゃあ保存食を……」


 リュックを下ろし、開こうと……


「何言ってるの? 今食べ物が手に入ったじゃない?」

「へ? 今?」

「これよ」


 彼女が指差したのは、まだ微妙にくすぶっているサソリだった。


「へっ!? そ、ソレ喰えるの!?」

「この辺りじゃご馳走よ。……いい感じに焼けてるし、食べましょ」


 だから炎魔法を使ったんだろーか? というか、あの匂いの正体はコレかよ!


「お……おう……」


 硬直する俺を尻目に、彼女はナイフを取り出すと手際よくサソリの脚を切り落としていく。


「どうぞ」

「あ、ああ……」


 彼女は俺に脚を一本差し出した。

 お、おい……コレ喰うのかよ。

 見ると、エスリーンはすでに脚の外殻から引っ張り出した肉に軽く塩をふり、かぶりついている。

 ええい、ままよ……

 俺も関節部分を折り、引き出した肉を恐る恐る口に入れ……


「ン? 意外とイケる?」


 カニとかエビみたいな味と食感で、結構ウマい。見た目はアレだが……

 よく考えりゃ、同類か? ……昆虫もこんな味なんかねェ? イナゴの佃煮とかあるケド……。ゴキブリとかは流石にちょっと、だがな〜。


「でしょ?」


 エスリーンは既に二本目をパクついてら。

 ハラ減ってるしな。背に腹は代えられん。

 俺も二本目に手を出した。



――約二十分後

 食事を済ませた俺達は、再び歩き出していた。

 ハラも膨れたし、足取りも軽く……

 ……ちっと精神耐久度がケズれたケド。

 ちなみに食い残したサソリは、リュックに放り込んである。宿が取れなかった場合の食料だ。

 一応袋に入れてから放り込んではあるが、こン中にデカいサソリか……。

 まっ、仕方ねェケドさ。

 そーいえばリシュートの料理って、どんなんなんだろな〜〜。

 この手の虫とか多用してるんだろーか? それどころか、もっとアヤシゲな生物を使ってたりとか?

 精神耐久度が持つんかな〜。

 結局は慣れちまうんだろうケドさ。


「な、なぁ……リシュートとかじゃ、ああいうのをよく食べるのかい?」


 恐る恐るエスリーンに聞いてみる。


「う〜ん、よく食べるって訳じゃないけど……」


 ホッ、良かった。


「イナゴを使った名物料理もあるわよ」

「おう……」


 『郷に入れば郷に従え』って言うしな……。まっ、しょーがねェ。出たら食うしかねぇ。

 ……精神耐久度が持てばいーな。



 ちなみにあのサソリから魔導石が一個手に入った。

 ああいった非常識にデカい個体は“魔化”しているらしい。

 ドラゴンなんかはその最たるモンだな。

 “魔化”とは、通常の生物が“魔素”を取り込んで、魔物へと変化する事だそーな。

 ヒトなら魔人になり、獣なら魔獣となる。サソリは……魔虫か?

 この大陸の各所にある“魔素”が噴き出すスポットのそばには、そうした魔物が多数生息しているそうな。

 そうしたスポットを管理する為に、神殿や魔導師の塔が各地に建てられているという。

 今回の目的地も、そーした場所なワケだ。

 ふ〜む、あっちでも寺社仏閣なんかをホットスポットだかパワースポットだかいってたケド……もしかしたら、気がつかんだけで地球にもそーいう場所もあるんかいな?

 例えば、俺が転移したあの山とか……



――更に二時間後

 赤茶けた大地の中に、緑の森が現れた。

 そしてその前には城壁と、堅牢そうな門。

 先刻まで、幾度か同様の光景が現れては消えていたが、どうやら今度こそホンモノらしい。

 砂漠の中の、オアシス都市。


「あれがリシュートよ。そして……」


 エスリーンが森の後方を指差す。

 森の奥に、微かに見える建造物がある。


「この向こうに見える塔が、私と父様が暮らしていた塔だったの。でも……」


 彼女の目に涙が浮かぶ。

 あの時のことを思い出してしまったんだろう。

 突如現れたラバンことフィルズ・ロスタミによって……


「……そうか」


 彼女の肩を抱く。

 う〜む、気の利いた言葉で慰められたらいーんだけどな……。

 残念ながら、俺の引き出しの中には無い。

 もしあったら、あっちでもリア充ライフが送れて……いや、そんなにアマくはないな。だから魅力度8か……

 思わず心の中で凹んだ。

 ……と、とにかく、だ。何とか慰める言葉を考えねば。

 『分かるよ』というのもアレだな。別に俺は親が殺されたりしたワケでもねぇから、正直彼女の気持ちを分かりようも無い。まぁ、もしかしたらもう親には会えないかもしれんケ……ド……。

 あ、あれ? いや、今、何を?

 ……それよりも、彼女を慰めねば。

 う〜む、とはいえ……

 何も浮かばんので、開き直るか。


「……俺がついてるさ。もしかしたら、天が遣わせた勇者サマかもしれないんだぜ?」


 わざと明るい声で、アホなコトを言ってみる。

 彼女は俺を見……そして視線を外すとため息をついた。

 うげっ、あかんかった? 機嫌を損ねたら、エラいこった。


「……期待して、いいのかしら?」


 彼女がぼそりと呟く。

 ふと見ると、その口元には微かに笑みが浮かんでいる。

 まっ、無理やりでも笑ってくれるのがイチバンだよな。

 とりあえずココでアイツをやり過ごせばいい。ケド……もし戦わなきゃならねぇのなら、俺が火の粉を払ってやる。

 …………。

 う〜む……やっぱ俺、彼女に少々ホレちまってるな。

 逢った当初は、とりあえずカワイイ女の子と付き合いたい。出来れば……っって思ってたケドさ。

 そのためにゃ、もっと強くならんといかんよな〜。

 などと考えているうちに、リシュートへと到着した。

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