あー、こりゃ左遷されるワケだ
――大通り
昼時の大通りは、行き交う人で溢れていた。
さてと……時間を潰しつつ、聞き込みでもするか。
どーすべ? もしこの街にいなけりゃ、街中で探したって意味は無ェ。
とりあえず、門番あたりに聞いてみるのも手か。
まずは、ココから近い方……北門だな。
俺はゆっくりと北へと歩き始めた。
――北門
北門の衛兵は、またあの二人だった。
う〜ん……正直言ってあの連中にあんまり顔を覚えられたくはないんだがな。
まっ、二回ぐらいなら大丈夫だろ。多分。
にしても……相変わらず二人でぶつくさ言ってんのな。ヒマなんかねぇ?
まぁアテにゃならんだろーが、聞いてみるとすっか。
近づいていく。が気付きゃしねぇや。
「何で俺達だけがこんなコトを……」
とかボヤいてるのが聞こえてくる。あー、こりゃ左遷されるワケだ。
ま、いーや。声をかけてみよう。
「すいません」
「うおっ!?」
盛大に驚かれた。
「な、何だ。そういえば、アンタは昨日の……」
チッ、覚えてやがったか。まっ、時間置けば忘れてくれるだろうさ。多分。
「驚かしてすいません。ちょっと聞きたいことがあるんですが……いいですか?」
「あ、ああ……」
衛兵は動揺しつつ、頷く。
「ちょっと猫を探してるんですが、見かけませんでした?」
「猫? 猫と言われても……」
「金色の目をした、黒い大きな猫です。ご存知ないですか?」
「う〜ん、デカい黒猫ねぇ……。見たことないな〜」
「ああ、どっかの宿の猫だろ? つい最近いなくなったとかいう。けどここじゃ見てないねぇ……」
「そうですか……」
ダメか。
……そうだ。この件も聞いとくか。
「そういえば、ラバンって人知りません?」
「ああ、ラバンか……。しばらく前にこの街にやってきたっていう傭兵だったな。その人が何か?」
へ? 傭兵なんか。じゃあ、ドン臭いとかいうコトはなさそーだな。
……例外はいるかもしれんが。
「いや、ちょっとね。腕の立つ人かな、と」
何食わぬ顔で答える。
「いかにも歴戦のっていう風体だったな。傭兵ギルドには属さないフリーの傭兵らしいが」
「へ〜、そうなんだ。今どの辺にいるとか分かります?」
「いや〜、分からんな〜」
まっ、少なくともカデス方面にゃ行ってねーか。
「そうですか。ありがとうございます」
俺は礼を言い、北門を後にした。
ふむ、北門は空振り、と。
まぁ焦るコトはねぇ。
俺は次に、騎士団駐屯地へと歩を向けた。
大通りを南へと歩く。
途中、“イチョウ通りの満月亭”の前を通りがかったので、ついでに聞いてみる。
が、空振り。
猫については全くわからないそうだ。
ラバンの方は、おそらくこの街にやってきて、すぐにこの店にもきたという事ぐらいしか情報はもらえんかった。
……ちなみにあの店は、羊肉を薄焼きパンに挟んだヤツもウマイ。スパイスの効いたタレがクセになりそうだ。
それは置いといて、と……
更に南へと歩くと、街の中心にある広場に出た。
ここはどうやら、市なんかが開かれる場所みてぇだナ。バザールっつーんだっけ?
そこは、東西方向の大通りとの交差点だ。その通りを西へと向かうと、領主の館。そして東へと向かうとアルセス聖堂騎士団駐屯地がある。
猫はこの広場のアチコチで見るんだが、やっぱりデカい黒猫の姿はない。
ま、そんなにカンタンに見つかるんなら依頼なんてせんよな。
とりあえず俺は、東へ向かうことにした。
――騎士団駐屯地
そこは、思いの外巨大な神殿だった。
正式名、ネヴィラーム神殿。
大理石で覆われた、三階建ての建築物だ。
巨大なアーチ構造の門。そして金色に輝くドーム屋根。奥には僧院っぽい建物も見えるな。規模の大きな伽藍配置だ。
古びているが、頑丈で威厳のある神殿だな。そりゃ乗取りたくもなるか。
門の脇には、二人の衛兵……っつーか騎士がいる。
北門の門番と鎧は同じだが、こっちはきちんと紋章がついてら。
ステイタスは……
ふむ。あの二人よりは高いか。が、傭兵ギルドのに比べたら一枚落ちるかな?
……おっと、こっち見た。
ヤベェ! ただの旅行者っぽく振るまわんと。ヘタに目立って異世界人だとバレたらマズいしな。
この辺りで猫について聞くのはよしとこう。
……さて、次はどーしたモンか。
そーだな。ここから裏通りも近いワケだし、一旦あの辺りで聞き込みするか。
とりあえず、も一度裏通りに戻る。
多分、あのゴロツキトリオにでも聞いてみれば、何か知って……って、オイ。
連中は気の弱そーなオッサンに絡んでいた。
親父狩りってヤツか?
ケドよく考えりゃあ、あのゴロツキトリオもそっちに近いトシかな。……まぁイイや。ヤツらに聞いてみっか。
「やあ、ちょっと聞きたいことが……」
「ゲッ!? ソースケさん!?」
ゴロツキトリオはいきなり直立不動の体勢をとる。
いや……なぜそこまで? ま、いいか。
「実はさ、ラバンってヤツを探してんだけど……」
とりあえず、ラバンについて聞く。
「ゲェーッ! あのラバンっすか!?」
「お、おう。よくわからんが、多分そのラバンだ」
確認してみると、“イチョウ通りの満月亭”で聞いた特徴とほぼ一致する。
にしても、そのラバンとやらは、ナンかドン引きされるよーなコトでもしたんか?
「ええ……ジツを言いますと、そいつ、数日前にギルドに来たコトあるんですよね」
「へぇ……」
仕事を依頼しに来た時かな?
とりあえず、相槌を打っておく。
「で、そんトキにちょっと『話』をしたんですが、コレまたえらい強いヤツで……」
……絡んで返り討ちにあったんかい!
「歴戦の傭兵っぽいって聞いたコトあるな。今どの辺に居るか分かる?」
「えっと……“神殿通りの大樹亭”ってトコで宿をとってるって聞きましたケド……ソイツにナンか用でも?」
「いや、ちょっとね」
俺はテキトーに笑ってゴマかした。
とりあえず、特徴などを聞き出しておく。そして一通り聞き終えると、一枚の銀貨を渡した。
「ありがとな。とりあえず、情報料だ。どっかで一杯やってくれ」
「イイんスか?」
ヤツは嬉しそうにそれを懐に入れた。
「ああ。あと、ハルジーの親父にはナイショな」
俺はそう言って連中と別れた。




