初仕事完了だ
――中庭
地上に出ると、既に日が昇っていた。
朝か……。
とりあえず、片付けを先に済ますか。
まずは祭壇を元の位置に戻してかなきゃな。何か仕掛けのスイッチみたいなモンは……無ェか。
“識別”使っても見当たらん。
ッツーコトは、無理やり力で動かしてたってワケか?
げっ……戻すには手で押さにゃならんのかよ。
……仕方ねぇ。やるか。
――数分後
俺は力一杯祭壇を押していた。
「ゼェ……あ、あとちっと……」
疲労困憊しつつ、押し続ける。
「も、もう少し……ヨシ」
そしてようやくスライド前の位置だと思しきタイルの変色部分が、祭壇によって完全に覆い隠された。
こ、これで、元どおりか。
へたり込み、荒い息を吐く。
少々疲れたが、何とかなった。体力度を上げておいてよかった。
ふむ。地下への階段は完全に隠れたな。ココのことは報告しないでおこう。買い手がつくまでの間に中のモノを運び出しちまうのも手だしな。
祭壇動かすだけでこの有様じゃ、出来るかわからんがな。
にしても……あの魔導師はどーやって出入りしてたんだ?
『開けゴマ』みたいな合言葉でもあるんだろーか? あるいは、別の出入り口か?
そして納屋に置いておいた自分の荷物を回収しておく。
……よく見たら携行食が食われちまってら。向こうから持ってきたシリアルバーまで……。ネズミでもいたんかな? 朝食が……
仕方ねぇ。どっかで食おう。昨日のところでもいいかもな。
最後に戸締りを確認し、初仕事完了だ。
おっと、そーだな。
ヤツを倒したんで、また幾らか経験点が入ったはずだな。
ステイタス確認だ。
今回の経験点は400。今までのと合わせて1113だな。LV4は1000だから、レベルアップだ。
能力値は……そうだな、敏捷度に2。精神力と魅力度に各1振り分けておこう。
スキルはまた剣術を上げとくか。
――――
名前 : 仁木壮介 性別 : 男 種族 : 人間 経験レベル : 4 身長 : 166cm 体重 : 54kg
体力度 : 14 耐久度 : 16 器用度 : 21 敏捷度 : 15 幸運度 : 16
精神力 : 14 精神耐久度 : 14 知性度 : 15 知恵 : 14 魅力度 : 14
HP : 34 / 34 MP : 32 / 32
攻撃修正 : +19 回避修正 : +20 速度 : 速 魔法修正 : +18 魔防修正 : +12
スキル : 剣術4 格闘1 黒魔術1 神聖魔法2 危険感知 1
所持金 : 43340 経験点 : 1113
武器 : 聖剣 防具 : なし
装備 : 服 リュック 所持品 : スマートフォン 魔導石1
言語 : トゥラーン語2 ゼルゲト語1 ソアン語1 アトラス語1
――――
これでおk、と。
次能力値を上げるとすりゃあ、また体力度あたりか? で、スキルを上げるとすれば魔術関係かねぇ?
……少々チグハグだな。
う〜ん、ある程度考えて上げんと後々詰んじまいそーだな。段々レベルアップに必要な経験点も上がってくるし。
まっ、しばらくはこの街にとどまるつもりだから、レベル上げしながら方向性を決めた方がいいかもしれんな。
……にしても、ちっと眠い。それに腹も減ったナ。
とりあえず、まずは飯だ。
で、ハルジーのおっさんに報告したら、どっかで宿とって少し寝よう。
さて、行くか。
と、その時かすかな猫の鳴き声が聞こえた気がした。そして、また視線を感じる。
「ン?」
屋敷を振り返る。しかし、猫の姿はない。
ま、いっか。
俺は向き直り、歩き出した。
――おそらくは現地時間で十時を回った頃
昨日の飯屋で朝食を食べた俺は、“酔いどれ牛”にやってきた。
カウンターにはハルジー一人。客席には誰もいねェ。
「おはよう。やってるかい?」
「おう。相変わらずヒマだがな」
ハルジーは俺を見、ジョッキを掲げた。朝からかよ……
俺はヤレヤレと思いつつ、その前の椅子に腰を下ろした。
「……例の件はどうだ?」
ハルジーはジョッキを下ろし、俺に問う。
ちと息が酒臭ェぞ。
「ああ。なんとか片付いたぜ」
「へ? もう終わったのかよ!? てっきり下見だけで済ますかと思ってたんだがな」
「まっ、うまい具合にやっこさんが出てきてくれたんでね。コレが証拠だ」
俺は小さな皮袋を差し出した。中には倒したフレッシュゴーレムの破片が入っている。
「お、おう……って、ナンじゃこりゃーっ!?」
ハルジーは何気なく袋を開けて中を覗き……すぐさま顔を背ける。正気度……いや、精神耐久度が減ったよーだナ。
さすがにこのおっさんでもキツかったか。かなりグロいもんな。
とりあえず袋を一旦取ると、口を閉じる。そしてまたハルジーの前に置いた。
「“ゾンビ”の耳その他だよ。一応証拠としてね」
おっさんはそれをちっとヤな顔をしてもう一度受け取る。
「わ、わかった。にしても、どうやって倒したんだ? 結構高位の坊さんに頼んでも上手くいかなかったって話なんだがな」
「とりあえず凍気系の魔法を使ってみたら、上手く行ったよ。動きが鈍くなったトコロをブン殴ってさ。おかげで魔力がもうスッカラカンだけどな」
「へぇ……そこまで魔法まで使えるのかよ。若けェのに大したモンだぜ。よくウチのギルドに来てくれたモンだな。これからもよろしく頼むぜ」
「ああ。こちらこそ」
いや〜、人に認めてもらうってのは気持ちイイね。何やっても評価されんってのはツラいモンがあるゼ。
「よし。とりあえず、これで任務完了だな。依頼人に確認してもらう。報酬はその後になるが、構わんな?」
「おう。ちなみに残りの残骸は玄関脇に袋に詰めておいてあるぜ。後で坊さんか何かにキチンと弔ってもらった方がいいかもね」
“本物のゾンビ”になられても困るしな〜。
「わ、わかった」
「……それはそーと、別の仕事はあるかい?」
「ん〜、あるにはあるがな……」
「どーいう仕事なん?」
「ああ、猫探しなんだ」
「猫探しぃ!?」
“ゾンビ”退治の次は猫探しかよ……いきなりランクダウンしたな。まぁ、口入れ屋らしー仕事かもしれんケド。それとも、その“猫”、実は化け猫の類だったりとか?
「このところ依頼が少なくてな。今現在で目ぼしいのはそれぐらいなんだ。とりあえず、何かのついでにでも見かけたら連絡してくれればいい」
「ま、まぁ……それくらいなら、お安い御用だ。んで、どんな内容?」
一応聞いとくか。こずかい稼ぎぐらいにはなるかもしんねェ。猫ならこの街でも結構見かけたしな。
「なんでも、とある宿屋の看板猫が失踪したとかなんとか」
「宿屋の猫、ねぇ……。依頼主は、どこの宿屋だい?」
これで恩売っときゃ、泊まる時に幾らかサービスしてくれるかもな。
「猫がいた宿屋は、“金の鸚鵡亭”って宿屋なんだが……依頼主は、違う」
「へ?」
「依頼主は、ラバンという男だ」
なんだそりゃ?
「で、なんでソイツが依頼を? その宿屋の親戚か何かなん?」
「いや……目的は聞いてない。聞かないと言う約束だったからな」
ナ〜ンか雲行きがアヤしくなってきたな。やっかいごとに首を突っ込みそうな気もする。
……が、ソレはソレで面白そーだ。
まぁ、聖堂騎士団なんかに素性がバレん様、気ィつけにゃいかんケド……。
「で、特徴は?」
「ああ、そうだな……」
ハルジーの説明によると、“猫”と言っても、普通の猫よりもひとまわりデカいらしい。山猫かナンかか? それに、黒の体毛に金の目か。
へぇ、それなりに目立ちそうだが……
そんならカンタンに見つかりそーなモンだがな。よっぽど巧妙に隠れてんのか、それともそのラバンとやらがドン臭いのか。
ま、いっか。とりあえず、今晩はそこに泊まってみっか。情報が必要だしな。
俺は宿の場所を聞き、“酔いどれ牛”を後にした。




