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7. 水がないと人は生きていけない

 その日は洞窟内で休み、翌日の朝から活動を始めた。

 さっそくゴブリン刈り……というわけにはいかない。

 水場の確保だ。

 水がなければ生きていけない。


 ルッツの記憶によれば、近くに小さな川が流れている。

 あやふやな記憶を頼りに行くと、川を発見した。


「うおー、きれいな水だ」


 自然の森、そこに流れている水は澄んだ色をしていた。

 前世ではコンクリートジャングルに囲まれた生活をしていから、余計きれいに感じる。


 川に口をつけて、がぶがぶと飲む。


「プハーッ、美味い!」


 体に染み渡る。

 生き返るぜ。


 人間、生きていくためには水が必要だ。

 そのことをしみじみと感じた。


 ひとしきり川の水を飲んだあと、洞窟に水を持って帰る方法を考えた。

 毎回、ここまで来るのは大変だ。

 かと言って、水場の近くに拠点を移すのは危険である。

 当然、良い拠点には敵も集まりやすい。


 ゴブリンとの遭遇率が上がりかねないからだ。


「そういえばスライムって水を吸収できるのか?」


 剣やゴブリンを吸収できたなら水だって吸収できるはずだ。

 貯水としてスライムを使えれば、今後の行動がだいぶ楽になる。


「ドライ、スライムに戻ってくれ」


 俺は隣りにいたドライに言う。

 ドライは首を振って答えた。


「イヤダ」


 え? 拒否られたんだけど……。

 なんで、こいつ言うこと聞かないの?

 俺の従魔だよな?


「ワタシ、ガ、ナリマス」


 アインスがそう言ってきた。


「アインスは本当に良いやつだよな」

「アリガト、ゴザイマス」


 それも礼儀正しい。

 この礼儀正しさはどこで覚えたんだ?

 そもそもなぜ、人間の言葉がわかるんだ?

 純粋な疑問が浮かび上がる。


 スライムがスライムとして生活していたら、人間の言葉なんてわからないはずだ。


「アインスたちは人間に飼われてたりしたのか?」

「イエ、ソンナコト、アリマセン」


 アインスが首をかしげるながら答える。

 俺の質問の意図がわからない、という表情だ。


 これまでにアインスたちが人間と接触してきたなら、そこで人間の言葉を覚えたんだろう、と推測を立てての質問だ。


「ならどうして人間の言葉がわかる?」

「ワタシタチ、ルッツサマ、ノ、ジュウマ。ルッツサマト“カンカク”ガ、キョウユ、サレマス。ソノ、オカゲデス」

「なるほど」


 スライムたちは俺と契約し、俺とのつながりができたことで、人間の言葉が話せるようになった。

 つまり、そういうことらしい。

 ちなみに彼らが話しているのは日本語ではなく、この世界の人間の言葉だ。


「アインス、スライムになって水を吸収できるか?」

「モチロン、カノウデス」

「なら、頼む」

「ショウチ、シマシタ」


 アインスはゴブリンからスライムへと姿を変える。

 そして、ぴょんぴょんと跳ねてから川に入った。


 川は浅く、流れも緩やかだ。

 アインスが流されることもない。


 しばらくすると、アインスが川から出てきた。

 見た目はさっきと変わっていない。


「水を吐き出せるか?」


 俺が尋ねると、アインスがぴゅっと水を吐き出した。


 試しにどこまで溜め込んだか、確かめてみる。

 アインスには悪いが、吸い込んだ水をすべて吐き出させてみた。

 すると、結構な量だった。


 当分の間は水に困らなさそうだ。


 アインスに水を溜め込ませ、ついでに他のスライムにも水を吸収させておいた。

 ドライも渋々言うことを聞いてくれた。


 俺というよりも、アインスの話を聞いたようだ。

 どうやら、ドライはアインスには頭が上がらないらしい。


 これで水の問題が解決した。


◇ ◇ ◇


 その後、俺たちはゴブリン狩りを開始した。

 ゴブリンキングに見つからないように、こっそりと狩る必要がある。


 だが、幸いノーマルゴブリンの知能は低い。


 こちらが注意して動けば、ゴブリンキングに居場所がバレる危険は少ない。

 ふははははっ、兵の質が違うんだよ。


 ただし、いくらこちらのほうが質が良くても、圧倒的な数の前では無力だ。


 新しいスライムのテイムは期待できない。

 ここらへんにはもうスライムがいないようだから。

 そもそも、この森でスライムたちを発見できたこと自体が奇跡に近い。

 というのも、俺達がいる一帯はゴブリンキングの支配区域であるからだ。


 弱肉強食。

 魔物の世界では強さがすべて、とアインスが教えてくれた。

 まず真っ先に殺されるのは最弱の生物、スライム。

 だから、ここで今日まで生き残ってこれたのは、スライムにとっては奇跡に近いことらしい。


 現代日本と違って、生存競争がまさしく生死に関わる過酷な環境だ。


「よく今日まで生きてこれたな」


 俺は近くでスライム状態になっているフィーアを撫でた。

 フィーアは気持ちよさそうにする。


 おそらく、俺がテイムしたスライムたちは相当賢い奴らだ。

 特にアインスは魔物とは思えないほど、冷静な判断力がある。

 アインスが知恵を絞って、スライムたちを引っ張ってきた。

 だから、こいつらは生き延びれてこれたんだ。


 俺と出会ったからには死なせない。

 そのためにもスライムたちを強化させる必要がある。

 倒したゴブリンをスライムたちに食べさせまくった。


 もちろん、強化するのはスライムだけじゃない。

 俺もしっかりと腕を上げた。

 ゴブリンを狩れば狩るほど俺自身も強くなる。


 技術や経験云々ではなく、単純に体が強くなっている。


 すべての魔物には魔素がある。

 魔素とは魔力の(もと)になるものであり、大量に魔素を纏わせた者はそれだけで強い。

 強いというのは腕力や脚力などの力のことだ。

 ぶっちゃけ、力さえあれば技術なんてなくても良い。


 そして魔物を倒すと魔素を得られる。

 魔素とは、RPGでいう経験値みたいなものだ。

 つまり魔物を倒せば倒すほど、経験値が積もって強くなるということだ。


 魔素についてはルッツの記憶にあった内容だ。

 ここからが俺が得た情報である。


 スライムが敵を倒したときに、一部の魔素が俺にも流れてくる。

 テイムした魔物の経験値がそのまま俺の経験値になるというものだ。


 これは嬉しい誤算だ。

 配下TUEEEEEEEしたら、同時に俺TUEEEEEEEができるというわけだ。

 だんだんと俺の理想が見えてきたぞ。

 最強のスライム軍団とそれを率いる最強の男。


 俺は猛者たちを引き連れ、マントをはためかせている自分の姿を想像した。


「うむ、良い絵だ」


 最強になる日もそう遠くない。

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