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5. 危機は油断したときに訪れる

 ゴブリンナイトの死骸を見ていると、突如、ドライがスライムに戻った。

 そして、のそのそと動いてゴブリンナイトを食べ始めた。


「お前な……」


 俺の許可なしに食べ始めるなんて……本当に自由なやつだ。

 もともとドライに食べさせようと思っていたから別に構わんが。


 ちょっと休憩しながら、ドライの食事風景を見る。

 スライムに全身を纏わりつかれたゴブリンナイトが徐々に溶けていく。


 ゴブリンナイトを食べ終えたドライはゴブリンに擬態した。


 他の三匹よりもシュッとしている。

 健康なゴブリンという感じだ。

 筋肉がしっかりとついており、剣を携えている姿は一介の剣士のよう。

 目がつり上がっていて、勝ち気そうな顔をしている。


「……ヨロシク」

「お、おう。よろしく」


 スライムが人の言葉を使った!

 人語を話すスライムなんて見たことがない。

 そもそも、ルッツはスライムを見る機会があまりなかったが……。


「俺のジョブ『スライム使い』が関係しているんだろうな」


 『スライム使い』は未知の部分が多い。

 俺以外の『スライム使い』を見たことがないし、サンプルがないから過去の記録もない。


 似たジョブに『魔物使い』があるが、『魔物使い』は魔物と話ができたり、従わせたりするものだ。

 魔物の能力を向上させるようなものではない……とルッツの記憶を探りながら思った。


 未知の部分が残っているということは、言い換えれば、成長の余地が残っているということだ。

 『スライム使い』の可能性は無限大。


「でも、なんでドライだけが人語を?」


 普通のゴブリンより強力な個体――、


「ゴブリンナイトを吸収したからだろうな」


 他のスライムにも強力な魔物を食べさせれば、人の言葉を話すということになる。


 俺はドライの擬態した姿をまじまじと見る。

 さっきドライが食べたゴブリンナイトとは容姿が違う。

 擬態と言っても、吸収したモノと全く同じ姿になるわけではない。

 それはスライムソードで実証済みのことだ。


 ドライの見た目は人間に似ているゴブリンだ。

 俺からしたら人間っぽいほうが親しみが湧く。

 醜悪な顔のゴブリンを引き連れているのは、絵面的によろしくない。

 格好良くないのだ。


 俺はスライムたちを連れて歩く。


 途中で遭遇するゴブリンを片っ端からやっつけた。

 ドライが活躍した。

 ドライは戦いのセンスがあり、どんどん強くなっている。

 好戦的なドライは楽しそうにゴブリンを奢っていた。


 俺はほとんど何もしていない。


「……俺にも活躍の場を与えてくれよ」


 ちなみにドライはスライムソードを二つまで作れるようだった。

 俺が食わせた剣とゴブリンナイトが持っていた剣、二つを食べたためだと考えている。


 実はスライムソードの件でひと悶着あった。

 ドライが自分で戦いたいと言って、スライムソードに擬態してくれなかったのだ。

 そうすると、俺は武器がなくなる。

 どうするかと悩んでいたときに、ドライがスライムソードを二つ作り出したのだ。


 だから、俺とドライはそれぞれスライムソードを持ち歩くことができた。

 盾はない。

 スライムシールドが一つしかないから、ツヴァイに持たせている。


 スライムたちに倒したゴブリンを食べさせていく。

 すると、徐々に体つきがしっかりしていき、見た目が人間らしくなった。

 相変わらず、緑色なのは変わらないが。

 人間の容姿に近づくのは俺のジョブの効果だろう。


 今の俺達はゴブリン相手なら無双できる。


「はっはっは。これがチート無双! 最高だぜ」


 俺は何もやっていなんだけどな。

 ていうか、この森ゴブリンの遭遇率高くない?


 スライムは全然見つからない。


「もっと、スライムをテイムしたい……」


 そろそろゴブリン以外とも遭遇してみたい。

 もうゴブリンは見飽きてきた。


 ということで、アインスを偵察に行かせた。

 メンバーの中で最も冷静なのがアインスだ。

 さっき俺を助けてくれたのもアインスだしな。


 周辺にどんな魔物がいるか探ってもらっている。


 その間、俺は体を休めている。

 ルッツの体が弱すぎる。

 一度の戦闘での疲労が大きい。


 俺に比べてスライムは全然疲れる様子を見せない。

 その無尽蔵な体力が羨ましい。


 俺だって、日本では毎日欠かさず体を鍛えていた。

 いつ異世界転移しても良いように筋トレをしていた。

 俺の数少ない友達の鈴木くんに、


「お前は何を目指してるんだ?」


 と聞かれたことがある。

 もちろん、俺の答えは決まっていた。


「異世界で無双する、最強の男だ」


 そのときの鈴木くんの、昔を懐かしむような目を覚えている。

 鈴木くんも中学2年生のときまで、俺と同じような夢を持っていたらしい。


「お前も早く卒業しろよ」


 と優しく言われたが、あれはどういう意味だったんだ?

 考えてもわからなかった。


 俺は大木にもたれ掛かりながら、スライムたちを見た。


 ドライは「ウオォォッ」と叫びながら素振りをしている。

 ツヴァイはぼぉーっとしており、フィーアは俺の隣で正座している。

 ゴブリンに擬態したから余計に、スライムたちの性格の違いが顕著に現れている。


 そろそろアインスが戻ってくる頃だ。

 と思ったとき。

 アインスがちょうど良いタイミングで現れた。

 ちなみにアインスも言葉が喋れる。

 ゴブリンを三体くらい食わしたら、話せるようになった。


「ゴブリンキング、ハッケン」


 アインスが表情に少しだけ焦りを見せながら報告をしてきた。


 うおっ、まじか。

 偵察が役に立った。


 ゴブリンキング……名前を聞くからに強そうだ。

 いきなりゴブリンキングと戦うのはハードルが高い気がする。


 ゴブリンキングが近くにいるからゴブリンがやたら多いんだろうな。


「ドウシマスカ?」


 アインスが尋ねてくる。

 うーん。

 どうしようね。


 そもそもゴブリンキングがどのくらい強いかわからない。

 実際に見てないからなんとも言えんな。

 よし、一度見に行ってみよう。


 と、そう考えて立ち上がった瞬間――。


「ぐぎゃああああああ」

「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ」


 茂みの中からゴブリンが現れた。

 四方から、わらわらとゴブリンが出てくる。

 数は十を超えてる。

 三十体くらいいるんじゃないか?


 いつの間にか俺たちはゴブリンに包囲されていた。

 くそっ、油断した。


 ゴブリンの知能は低い。

 まさかゴブリンが集団で行動するとは思えず、油断していた。


 そして直後――。

 一際体格の大きいゴブリン――ゴブリンキングが姿を現した。

 体長は2メートル以上ある。

 でかいな。

 筋肉隆々しており、ゴブリンキングから暴力的な匂いがする。

 赤いマントを羽織っているところからも強者感がある。


 ゴブリンキングは俺を見ると、獲物を追い詰めたような嗜虐的な笑みを浮かべた。

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