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4. 剣を持っているゴブリンは大抵強い

 死骸ってリアルで嫌だな。

 死んだゴブリンを見下ろしながら、そう思った。

 ゲームみたいに光になって消えるとかにしてほしい。

 見ていて気持ち良いものじゃない。


 ゴブリンを殺しておいて、随分と自分勝手な考えだよな……。


 よし、スライムに食べさせよう。

 俺はアインスにゴブリンを食べるよう命じた。


 アインスはのそのそと動いてゴブリンのもとにいく。

 そして、ゴブリンの死骸にまとわりついた。

 食べ終わるまで、そこそこ時間がかかる。

 しばらく待っている必要がありそうだ。


 ていうか、腹減ったな。

 腹が減っては戦はできぬ。

 近くで飯でも探してこよう。


「ちょっとここを離れるから、魔物が出たら逃げろよ」


 アインスに忠告しておく。

 食事中のスライムなんて格好の的だ。

 アインスはゴブリンを食べるのに必死だが、きっと俺の言葉を理解してくれた気がする。


 俺はアインスを残して探索を再開した。

 少し歩くと、果実を発見した。


 桃のような果実だ。

 甘い香りがする。


「見た目は美味しそうだけど食えるのか?」


 とりあえず、枝からぷちっと果実を取る。

 皮を剥くと、中から黄金色の果肉が表れた。

 美味しそうだ。


 ぐーっとお腹が鳴る。

 物は試しだ、食ってみよう。

 がぶっと果肉を噛んだ。


「美味い!」


 芳醇(ほうじゅん)な香りが鼻腔をくすぐり、蕩けるような甘い味が舌に広がった。

 夢中になって果実を丸ごと食べてしまった。

 すると、途端に眠気が襲ってきた。


 さっき一眠りしたのにな。

 どうやら俺は相当疲れているらしい。

 木にもたれ掛かりながら目を閉じた。


◇ ◇ ◇


 ――――ドンッ


 俺は音に反応して目を覚ます。

 目の前ではゴブリンがいた。


 敵か!?

 俺はそう思って体を動かそうとしたが……力が入らない。

 あ、これはやばいやつ。


 目の前には魔物。

 そして、動けない俺。


 まじか、ピンチだ。


 ゴブリンが近づいてくる。

 そして、俺の目の前で棍棒を振ってきた。


「くッ――!」


 ――――当たる。

 そう思い、俺はとっさに目を閉じた。

 だけど、予想していた衝撃はいつまで経っても訪れなかった。

 その代わり、


「ぎゃおおおおおおォォォォ」


 俺の真後ろから悲鳴が聞こえてきた。

 俺は首を無理矢理に動かし、ゆっくりと後ろを向く。


「――――」


 そこには大きく口を開けた木の魔物――トレントがいた。

 俺が食べた果実は、トレントがぶら下げていたものだったようだ。


 どうやら、俺はトレントに食べられそうになっていたらしい。

 おそらく果実を食べた後の強烈な眠気はトレントの仕業だろう。

 そして、寝たところを食べられる。

 くっ、なんて卑怯な手だ。

 危うく食べられるところだったぜ。


 俺は顔を正面に戻し、ゴブリンを見る。

 ゴブリンも俺を見た。

 目が合う。


 敵意はなさそうだ。


「ぐぎゃ、ぐぎゃぎゃぎゃぎゃ?」


 ゴブリンが俺に話しかけてきた。

 なんとなく言っている意味がわかる。

 大丈夫ですか?

 と、ゴブリンは言っているようだ。


 ていうか、こいつアインスじゃん。

 アインスがゴブリンに擬態している。

 俺とスライムたちは見えない力で繋がっている。

 だから、スライムが姿形を変えても判別できる。


 アインスは俺の危機を察知して、トレントに食われそうになっているところを助けてくれた。

 良いやつだな、お前。


 それに比べて俺は……。

 魔物が出たら逃げろよ、と忠告しておいたくせに、魔物に食べられそうなるなんて……情けないぜ。


「ありがとう、アインス。おかげで助かった」

「ぎゃぎゃ」


 アインスは頷いた。


 それにしても……。

 こいつらは色んなものに擬態できるんだな。

 ゴブリンに擬態できたのは大きな収穫だ。


 強い魔物をどんどん倒して食わしていけば、いずれ最強のスライム軍団を作れる。

 やっぱり『スライム使い』はチートだった。


 少し経ってから動けるようになった俺はアインスを連れて歩く。

 アインスは俺の後ろに控えるようについてくる。

 まさしく従魔の立ち位置だ。


 ちなみにアインスが持っている棍棒だが、ゴブリンの持っていたモノを吸収し、擬態で作った棍棒らしい。

 水色の棍棒だ。

 スライム棍棒……語呂が悪いな。

 普通に棍棒と呼ぼう。


 しばらく歩くと、またもやゴブリンが現れた。

 二体だ。


 アインスが一体を相手し、その間に俺が一体を倒す。

 そして、最後は二対一でゴブリンを倒した。


 ツヴァイとフィーアにゴブリンを食べさせ、擬態させる。

 ツヴァイは盾を持っており、フィーアは鎧を着ていた。

 フィーアはゴブリンと一緒に棍棒を吸収したため、アインスのように棍棒を持っている。


 余談だが、スライムにも性別があった。

 アインスとツヴァイは男、フィーアは女だった。

 おそらくドライも男だろう。


 これには驚いた。

 てっきり性別がないと思っていた。

 フィーアに鎧を食わせたのナイスチョイスだった。

 さすがに人型のフィーアを上裸にさせておくわけにはいかないからな。


 ちなみに擬態したあとのスライムたちだが、腰に布のような物を巻いている。

 全裸ではない。


 俺はスライムソードを持ち、アインス、ツヴァイ、フィーアを連れて歩く。


 すると、またもやゴブリンが現れた。

 やけにゴブリンとの遭遇率が高い。


 剣を持ったゴブリン――ゴブリンナイトだ。

 ゴブリンナイトは俺を見つけると、地面を蹴り肉薄してきた。

 同時に、錆びた剣で斬りかかってくる。


「グガアアァァァ――!」

「ッ……!」


 俺はスライムソードで受け止める。

 ゴブリンナイトは普通のゴブリンよりも力が強かった。


「アインス、援護しろ!」


 俺は横にいたアインスに命令する。

 アインスは棍棒でゴブリンナイトに殴りかかる。

 だが、後ろに飛んだゴブリンナイトに攻撃を躱された。


 四対一。

 数の面で見たら、俺達のほうが有利だ。


 しかし、ゴブリンナイトは明らかに普通のゴブリンよりも強そうだ。

 油断はできない。

 普通のゴブリンよりも背が高く、スマートな顔をしている。

 要は顔の皺が少ないってことだ。

 そして、しっかりとした筋肉がついている。


「ツヴァイ、擬態だ」


 強敵相手には、やはり盾が必要だ。

 ツヴァイはスライムシールドに変化する。


 右手に剣、左手に盾。

 そして、側にはアインスとフィーアがいる。

 現状、俺達の最適な布陣だ。


 ゴブリンナイトが攻撃をしかけてきた。


 俺はスライムシールドで錆びた剣を受け止める。

 そして、スライムソードで反撃する。


 ゴブリンナイトは後ろに下がって、俺の斬撃を避けた。

 アインスとフィーアがゴブリンナイトに追撃する。


 ゴブリンナイトは二人の攻撃を剣一つで止めた。

 二人がかりでもゴブリンナイトに押し負けている。


「ガッ……!」

「ウッ」


 アインスとフィーアがゴブリンナイトに吹き飛ばされる。

 その瞬間――。

 俺はゴブリンナイトに接近した。

 胴体ががら空きだ。


「隙ありッ―――!」


 俺はゴブリンナイトに斬りかかる。


 ――――ぐがああああああ。


 ゴブリンナイトは苦痛に顔を歪ませた。

 ゴブリンナイトの動きが鈍る。


 休み暇を与えず、三方向から俺、アインス、フィーアで攻める。

 しばらくゴブリンナイトも頑張っていたようだが、俺たちの猛攻を受け止めきれずに力尽きた。


 武器の差が大きい。

 軽くて丈夫なスライムソードとスライムシールドは良い武器だ。


 そして、今回の勝因はなんと言っても数の力だ。

 ゴブリンナイトと一対一だったら勝てなかったかもしれない。

 質で劣っていても数を揃えれば戦いには勝てる。


 ただし、この世界には”数”を凌駕する”質”が存在する。

 つまり化け物みたいな奴らがいるということだ。


 たとえば『剣聖』であるルッツの妹だ。

 実家で妹が訓練している姿を見たことがあるが、凡庸な兵をいくら集めたとしてもあれには敵わないだろう。


 理不尽なまでに能力に依存する世界。

 それがこの世界だ。

 そして、その頂きにいずれ俺はたどり着く。

 なんせ『スライム使い』はチートジョブだからな。

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