大変です!ヒロインの顔も名前も知りません!
あれから1週間。お父様の言葉通りユーラ様は隣国へ留学されたらしい。婚約者と数年間文通しか出来ないのがこの世界の常識なのか、と疑ったがこの世界でも数年会えないのは珍しいことらしい。婚約破棄だけはされないようにしなくては。
私の破滅ルートはきっと婚約破棄されることから始まるはず。……多分。
「一度考えをまとめてみた方がいいよね」
自室の机に向かってペンを握る。まずはよくある悪役令嬢の破滅ルートを書くことから始めよう。
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特徴
・婚約者と仲が悪い。
・性格が悪い。
・ヒロインに嫌がらせをする。
・家柄がいい。
・婚約破棄される。
破滅への道のり
婚約者と仲が悪い
↓
婚約者がヒロインのことを好きになる
↓
ヒロインに嫌がらせ
↓
婚約破棄される
↓
破滅する!
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……これは酷いな。
私はユーラ様と婚約したからこの破滅ルートのスタートラインに立ったというところか。これが本当にリリー・アルラリアの破滅ルートなのかは分からないが、現段階で1番可能性が高いのはこれだろう。だって婚約したし。
さて、問題はここからだ。どうやってこの破滅を回避するのか。
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対策
・ユーラ様と仲良くする。
・ヒロインに嫌がらせをしない。
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ここまで書いて私の手が止まった。先人たちの知恵を借りようと小説の主人公たちがしていた対策を書こうとしたものの1つ問題に気づいたのだ。
……ヒロインって誰?
ヒロインが分からないというのはここまで致命的なことだったのかっ……!
「ヒロインって見たら分かるのかな」
私がやっていたゲームのヒロインは特別な力を持ってて、その力が原因でいろんな王子様から声を掛けられるんだけどヒロインの優しさに王子様たちが心を開いていく感じだった。
この世界でもヒロインは特別な能力なりなんなりを持っているのだろうか。もし、持っていなかったとしたら見つけるのは至難の技だ。
「取り敢えず、みんなに優しくしたらいいのね!」
結局その結論に達した。みんなに優しくしていればヒロインに嫌がらせすることもないだろう。
「よし!そうしましょう!」
あの、神様。
みんなに優しくするってどうしたらいいのでしょうか?
嫌いな人に優しくできるほど人間できてないのですが……。