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クロス×ドミナンス《旧版》  作者: 白銀シュウ
第2章 私の愛した幼馴染
20/60

【2‐8】  数は力なり

この物語は、ある程度の史実を織り交ぜながらも完全にこの現実世界とは完全に別の未来を歩んでいる別の世界であり、実在もしくは歴史上の人物、団体、国家とかその他固有名称で特定される全てのものとは、何の関係もありません。何も関係ありません。

つまり、この物語はフィクションです。



【2‐8】  数は力なり



「啓介!もうやめてよ!」


 アリエルは理奈に押さえつけられながら叫んだ。


「やめなさい!啓介は自分の意志で戦ってるのよ!?」


 理奈は羽交い絞めでアリエルを止めながら啓介と信綱を見た。


「午前中に三時間。休憩に二時間。午後に五時間か…。そろそろ終わりにするか」

「ぜぇー…はぁー………」


 啓介は膝と右肘を突いて床に跪いていた。


「(つよ…い…)」


 体全身がボロボロで啓介の着ている剣道着は既に血で赤く染まっていた。


「超能力者は通常攻撃じゃ簡単に死なない。逆に言えば、苦しまないと死ねないっていう事だ」


 信綱は息を吐くと啓介を見る。


「今日はコレでお終いな。……まぁ、そう落ち込むなよ。理奈だってこれクリアするのに三日はかかったし」

「(マジ…かよ)」


 信綱は竹刀を壁に放り投げると倒れている啓介に肩を貸す。


「よいしょっと…。ところで理奈よ、今日はどうするんだ?」

「あー……今日は帰ります。とりあえず、ホテルにまた泊まって…また明日来ます」

「そうかー。じゃーおつかれん」


 信綱は啓介を理奈に預けると部屋の奥へと去っていく。

 啓介はしばらく死にそうな声を出しながら呼吸していたが、やがて傷が修復してきているのか正常に戻り始めた。


「…啓介、大丈夫?」

「あー…今にも死にそうだ」


 アリエルの心配そうな声に啓介は呟くような声で答える。


「ただ…反射神経はすっげー良くなったと思う」

「そうね。最後らへんは師匠の攻撃かわしたり竹刀でガードしたりしてたし」

「けどよ…竹刀で竹刀をへし折るとかマジねぇわ…」


 啓介は理奈の持っていたタオルで汗と血を拭く。

 そしてアリエルのそばに置いていた服を取る。

 理奈とアリエルはくるりと回って後ろを向く。

 理奈は庭にあるししおどしを眺めながら啓介に質問をする。


「啓介さ、今日一日殺し合いの模擬練習して…どう思った?」

「…俺は命を狙われているんだなってより一層感じた」

「世界に二十四人しかいない最上位能力者(LEVEL7)の一人だし…放っておくには危険すぎる存在だと認知されている。しかも、世界で十三体しか確認されていない暗黒種(ダークマター)の一つ…」

「俺だけを守るならともかく、俺の周りの人間を守るためにも…もっと強くならないとなって思ったよ」

「そう…」


 啓介の「もういいぞ」という声に二人は振り返る。


「…それじゃ、今日はもう帰ろうか」

「そうだな。…しばらく学校はサボりかぁ…」

「この稽古が終われば少なくとも刺客には対抗できると思うからそれまでは我慢して」

「うげぇー…」


 三人は縁側に置いていた靴を履くと砂利を踏んで門へと向かう。

 時刻は既に夜。

 夕日も完全に沈んだ午後七時。

 辺りを照らすのは街灯だけ。


「そういや理奈って学校どうしてんの?」

「書類上は市内の高校に通ってるんだけどねぇ…」

「行ってないのかよ」

「まぁね」


 三人は何も知らずに外に出る。


「まぁ、しばらくは私がお金出すし、ホテル暮らしね」

「げぇー…服とかどうすんだよ」

「お金出してあげるから」

「うぅー……」

「プライドとか捨てなよ」

「アリエルまでそんなこと言うか!」


 三人は楽しそうに話しながら坂道を降りる。

 周りに人は誰もいない。

 静かな街を三人は降りる。


「今日の晩御飯は何がいい?」

「寿司!寿司がいい!」

「アレ、お前この前中華料理とか言ってなかったっけ?」

「今は寿司が良いです!」

「変わるの早いなオイ」

「回転寿司にでも行く?」

「ソウデスネ…」

「アレ、啓介って魚苦手だったっけ?」

「いや、理奈…。俺は崩壊しつつあるプライドに関して──」



「ちょっとそこの少年少女、良いかな?」



 3人の動きがぴたっと止まる。


「…どちらさまで?」


 啓介は目の前の男性に尋ねる。

 警察と同じ服を着ているが、帽子を深く被っていて顔がよくわからなかった。


「いやいや。ただのしがない警察だよ」

「……」


 アリエルは啓介の腕にしがみ付いている。

 理奈は左手で日本刀の柄の部分に触れる。


「明石海峡大橋の爆破事件の件と無免許運転、公務執行妨害などの罪で署にご同行を願いたいわけですが?」


 男が啓介の右手を掴む。


「ちょ!」

「さぁ、ついてきてもらいますよ」

「ま、待て!」

「さぁ!」


 男は啓介の腕をぐいっと引っ張った。



「待ちなさい」



 男はべしゃりと尻餅をつく。


「…は?」


 男は自身の左手を見る。

 手首から先が無かった。


「は?は?は?…はぁ?」


 理奈は刀を振って血を払うと鞘に仕舞う。


「アンタ、所属は?」

「え?あ、お前…これは?」

「…回し者ね」

「い、いや待ってくれ!!」


 理奈は男の顔面を掴む。


「…目的は大方分かるけど…やっぱり啓介の回収?」

「!」

「ま、待ってくれ!!俺は──」

「うるさい。喋るな」


 理奈は手から放った電撃で男性の身体を焼く。


「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!」


 男は一瞬で髪の毛が総毛立ち、目、鼻と言わず体中の穴と言う穴から青白い光を

吹いて瞬時に黒こげになる。

 理奈は黒焦げの死体から手を離すと啓介の方を向く。


「啓介、逃げるわよ!」

「え?いや、でも──」

「いいから!!」


 理奈は啓介の左手を握ると引っ張って走り出す。

 アリエルも慌てて走り出す。

 啓介は遠ざかっていく黒焦げの死体を見ながら理奈に尋ねる。


「い、いいのかよ!?後始末とか!」

「そんなもん、どうにでもなるわよ!それよりも今は逃げることに集中して!」


 三人は坂道を走って降りる。

 すると路地裏や建物の屋根の上から武装した人間が次々と現われ、集団が形成されていく。


「ちっ、全員が武装兵士か!」


 理奈は刀を一本抜くと右手で持つ。


「啓介!離れるんじゃないわよ!アイツの狙いはアンタだから!!」

「え、えぇぇええええ!?」


 理奈は啓介の前に飛び出ると集団の先頭部分へと突っ込んでいく。

 斧を持った屈強な男の腕を斬り落として腹を蹴り飛ばす。

 そして男の後ろにいる武装兵士達をまとめて吹き飛ばす。


「ちぃっ!」


 理奈は上半身を後ろに退けて横から降ってきた日本刀をかわすと日本刀で攻撃してきた男に左指を指差す。


「くたばれオラァッ!!」


 人間を一瞬で葬る電撃が槍のように放たれ、男は感電しながら吹き飛ばされる。

 そして上から降ってきたハンマーを理奈は右に転がってよけると刀に電撃を溜めて集団へ向かって電撃を放つ。


「どきなさい!」


 集団は抵抗も出来ずに電撃のソードビームに飲み込まれ、黒焦げになっていく。

 しかしそれでも武装兵士は次から次に湧いて来て三人の行く手を阻む。


「啓介、後ろ!」


 理奈は応戦しながら後ろを振り返って啓介に注意する。

 啓介はその声で後ろを振り向く。


「やっべぇ!!」


 啓介はアリエルを突き飛ばして自身も尻餅をつくようにして後ろからきた斧をかわす。

 そしてすぐに立ち上がると男に向かって突っ込む。


「クソがぁ!!」


 右手の指に刃を生やすと斧を振った男の顔面に掌で殴るようにを叩き込む。


「ぐあああ!!」


 男は顔を左手で押さえながら右手で斧を使って啓介の首を目掛けて攻撃してくる。

 啓介は身体を屈めて回避すると左手と右足を軸にして伸ばした左足を使って男の足を払う。

 啓介は倒れた男の首を能力を発動した状態の右手で掴んで力を入れて握った。

 男はしばらく抵抗していたがやがて力が失われていったように動かなくなった。


「アリエル!攻撃に当たらないように逃げろ!」

「逃げちゃダメよ!」

「どうしてだ!」


 啓介は理奈に怒鳴る。


「ここでアリエルだけを逃がしたら間違いなく別働部隊に捕獲される!そうなったらゲームオーバー!」

「チッ!」


 理奈も啓介も攻撃をかわしながら話し合う。

 理奈は目の前にいた女の胸を切り裂くとバックステップで啓介の元へ戻る。

 二人とも息が乱れている。


「こんだけの大群に、能力を持たない武装兵士。…あきらかに啓介の弱点を狙ってきてるわね」

「でもお前がいるんだし、問題はなくね?」

「そうかもね」


 理奈は刀を構える。

 啓介はファイティングポーズを取る。

 すると武装兵士達は少しだけ後ずさる。


「アンタたち、私の存在を忘れてたのかしら?」

「……」

「答えなさい!」

「……」


 武装兵士達は何も答えない。

 理奈は苛立ちを覚える。

 そんな彼女に何処からともなく少女の声が届いた。


『勿論、覚えていますよ』


 それは、理奈にとっては聞いた事が無い声だった。


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