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「心の隠れ家」  作者: あーちゃん


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6/8

名前のない明日へ手を伸ばす

この詩は、まだ名前のついていない明日へ向かう心を描いたものです。


悲しみでもなく、希望だけでもなく、

「今はまだ何者でもない自分」が、

それでも静かに前へ進もうとする夜の詩です。

誰にも呼ばれない朝があった

窓の外では

まだ世界が眠っているような顔をして

薄い青だけを空に溶かしていた


私は布団の中で

昨日の自分をそっとたたみ

胸の奥にしまおうとしたけれど

どうしても端がはみ出してしまう


忘れたい言葉ほど

なぜか形をなくさず

忘れたくない温もりほど

指の間から砂のようにこぼれていく


それでも

時計の針は私を責めない

ただ静かに

進むということだけを続けている


名前のない明日が

部屋の隅に座っていた


「怖いの?」と聞くと

明日は何も答えず

ただ小さな光をひとつ

私の足元へ置いた


それは夢と呼ぶには頼りなく

希望と呼ぶにはまだ幼く

約束と呼ぶには

あまりにも震えていた


けれど私は

その光を捨てられなかった


誰かに見せるためではなく

誰かに褒められるためでもなく

ただ

自分の暗闇の中で

消えずにいるものがあることを

知っていたかった


大丈夫、と言える日ばかりじゃない

頑張る、と立ち上がれる朝ばかりじゃない

笑顔を作るだけで

一日の力を使い切ってしまうこともある


でも

それでも


心のいちばん深い場所で

まだ終わっていない音が鳴っている


小さく

細く

誰にも聞こえないくらいの音で


それは

「生きたい」ではなく

「消えたくない」でもなく


ただ

「もう少しだけ」

という音だった


もう少しだけ

この空の色を見ていたい


もう少しだけ

冷めたお茶の苦さを感じていたい


もう少しだけ

誰かの優しさを信じてみたい


もう少しだけ

自分を嫌い切らずにいたい


そんな弱い願いが

私の中で

折れた枝のように横たわっていた


けれど

折れた枝にも

雨は降る


折れた枝にも

朝日は触れる


折れた枝にも

いつか小さな芽が出るかもしれない


誰かがそう言ったわけじゃない

本に書いてあったわけでもない


ただ

私の中のどこかが

まだ完全には諦めていなかった


だから私は

名前のない明日へ

そっと手を伸ばす


届かなくてもいい

掴めなくてもいい


ただ

伸ばした手の先に

まだ未来があると

信じるふりをしてみる


信じることができなくても

信じるふりなら

今の私にもできる気がした


明日は

私の手を握り返さない


けれど

逃げもしなかった


その沈黙が

なぜだか少しだけ

優しかった


私は歩き続ける。


大きな夢を抱いたからではない。


誰かに勝ちたいからでも、

何かを証明したいからでもない。


ただ今日という一日を、

昨日より少しだけ優しく終えられたら、

それだけで十分だと思える日がある。


空を見上げる。


雲は急ぐこともなく、

風に身を任せながら形を変えていく。


人は変わることを怖がる。


でも、

変わらないままでいることも、

本当は同じくらい怖い。


だから私は、

少しずつでいい。


昨日の私から、

ほんの一歩だけ未来へ近づいてみる。


失敗したら戻ればいい。


泣きたくなったら泣けばいい。


立ち止まったら、

その景色を覚えておけばいい。


人生は、

走り続けるためだけの道ではない。


座り込んだ場所にも、

きっと意味はある。


誰も見ていないと思った夜も、

月だけは静かに見守っていた。


誰にも届かないと思った声も、

風はどこかへ運んでくれていた。


だから、

今日という日は、

決して無駄にはならない。


涙が流れた日は、

心がまだ生きている証。


悔しかった日は、

本気だった証。


寂しかった日は、

誰かを大切に思えた証。


そして、

笑えた日は、

あなた自身が奇跡だった証。


私は完璧にはなれない。


強くもなれない。


器用にも生きられない。


それでもいい。


不格好でも、

遠回りでも、

転びながらでも、


前へ進もうとする心だけは、

誰にも奪えない。


未来は、

遠い場所にあるものじゃない。


今、

小さく息を吸ったこの瞬間も、

未来へ続いている。


だから今日を嫌わないで。


今の自分を急いで捨てないで。


まだ咲いていない花を、

枯れたと決めつけないで。


夜明けは、

誰かが連れてくるものではない。


長い夜を越えた人の前に、

静かに現れるもの。


だから私は、

この夜も抱きしめる。


孤独も、

不安も、

迷いも、


全部連れて歩いていく。


置いていけないものなら、

無理に捨てなくていい。


抱えたままでも、

人は幸せになれる。


心に残った傷は、

弱さの印じゃない。


誰かを信じた証。


誰かを愛した証。


懸命に生きてきた証。


だから私は、

その傷まで愛してみたい。


まだできなくても、

そう思える日を信じたい。


名前のない明日は、

今日より少しだけ優しいかもしれない。


優しくなくても、

私はまた歩き出せるかもしれない。


その「かもしれない」が、

私を今日まで生かしてくれた。


希望とは、

まぶしい光じゃない。


消えそうで、

何度も揺れて、

それでも最後まで消えなかった

小さな灯火のこと。


私はその灯火を、

両手で包むように守りながら歩いていく。


誰かのためでもなく、

何かのためでもなく、


いつか、

未来の私が振り返ったとき、


「あの日、

諦めなくてよかった。」


そう微笑めるように。


今日という一日が、

その一歩になりますように。


名前のない明日へ。


私はもう一度、

静かに手を伸ばす。


今度は少しだけ、

笑いながら。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。


この詩は、「大きな希望」ではなく、「消えそうでも残り続ける小さな希望」をテーマに描きました。


誰かの人生は、いつも強くある必要はありません。

立ち止まる日も、涙を流す夜も、何もできない朝も、そのすべてが生きている証です。


もしこの作品の中の一節が、あなたの心にそっと寄り添い、「もう少しだけ歩いてみよう」と思えるきっかけになれたなら、この詩はその役目を果たせたのだと思います。


あなたの明日が、名前のないままでも、優しく続いていきますように。

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