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柏餅、もっと食べたい!

遠くの山のてっぺんには、まだ白い雪が少しだけ残っていて、

春の空の下でキラキラ光っていました。

ニコニコ保育園のまわりにはタンポポがたくさん咲き、

蝶々やミツバチがにぎやかに飛び交っています。

ウグイスに負けないように、ほかの鳥たちも元気にさえずり、

季節は春から初夏へと向かっていました。

そんなある日、ニコニコ保育園では恒例の「こどもの日」の行事がやってきました。

この日は、園庭に鯉のぼりを上げて、みんなで手作りの柏餅を食べる特別な日です。


倉庫からクルミ先生が鯉のぼりを抱えて出てきました。

先生たちが総出でポールを立て、鯉のぼりを上げていきます。

園児たちはそのまわりをぐるりと囲んで、わくわくしながら応援します。

五色の吹き流し、大きなマゴイ、きれいなヒゴイ、

そしてかわいらしい子どもの鯉が次々と空へ。

ほどよい風を受けて、悠々と泳ぎ始めました。

「わー、上がった上がった!」

「ほんとに魚が泳いでるみたい!」

「ぼく、鯉を食べたことあるよ!」

園児たちは大はしゃぎです。

そこへ園長先生がやってきて、鯉のぼりのお話をしてくれました。

「みんな、どうしてこどもの日に鯉のぼりを上げるか知ってるかな?」

園児たちは首をかしげます。

園長先生は続けました。

「中国に“竜門”という大きな滝があってね。

そこを登りきった魚は竜になれると言われていたんだよ。

その滝を登れたのが鯉だけだったから、

“みんなも強くて立派な人になれますように”って願いが込められているんだって」

「じゃあ、一番上のひらひらは?」

「吹き流しって言ってね、五つの色の力で悪い病気やケガから守ってくれるおまもりなんだよ」

園児たちは「へぇ〜!」と目を丸くし、

そのあとみんなで「こいのぼり」の歌や春の歌を元気よく歌いました。


歌い終わるころ、市役所の人が軽トラックいっぱいに木の枝を積んでやってきました。

市の共有林から切ってきた「柏」の枝です。

「シキコ先生、今年の葉っぱは大きいよ!」

そう言って枝をシートの上に下ろすと、市役所の人は帰っていきました。

園児たちは枝のまわりに集まり、

一枚ずつ葉っぱを“ぷちん”ともぎ取っていきます。

「いいにおい〜!」

「こっちの葉っぱ、おっきいよ!」

摘んだ葉は水道で洗い、先生が用意した籠に並べていきます。

予定どおりに作業が終わると、ちょうど給食の時間になりました。


今日の給食は特別メニュー。

兜の形のハンバーグと、鯉のぼりの形のポテトフライが乗っています。

「わぁー!」「かわいい!」「食べるのもったいない!」

園児たちはまたまた大はしゃぎです。


給食が終わると、保護者会のお母さんたちがやってきました。

今日はみんなで柏餅を作る日。

ノドカちゃんのお母さんも参加しています。

「お母さん!」

ノドカちゃんが手を振ると、お母さんも笑顔で振り返しました。

お母さんたちが給食室で柏餅を作っているあいだ、

園児たちはお昼寝の時間です。

……が、今日は気になって眠れない子が続出。

ノドカちゃんもそのひとり。

「お母さん、どうやって作ってるのかな……」

「柏餅って、どんな味なんだろう……」

そんなことを考えているうちに、

とうとう眠れないままおやつの時間になってしまいました。


各クラスの先生と保護者会のお母さんたちが、

蒸したての柏餅を大きなお盆に乗せてやってきました。

柏の葉のいい香りが、ふわっと広がります。

ノドカちゃんのクラスには、ハルカ先生とノドカちゃんのお母さんが運んできました。

「はーい、席についていない子にはあげませんよ〜」

その声に、園児たちは一斉に椅子に座り、姿勢を正します。

「手は洗ったかな〜?」

「はーい!」

元気な返事が教室じゅうに響きました。

柏餅を受け取った子どもたちは、

まだ食べないまま、葉っぱの匂いをかいだり、友達とひそひそ話をしたりしています。

「それじゃあ、お当番さん、あいさつをお願いします」

「手を合わせましょう。感謝、いただきます!」

号令とともに、みんな一斉に食べ始めました。

「葉っぱがうまく取れない〜」

「おいしい!」「まだあったかい!」

ノドカちゃんのお母さんが見まわしていると、

ノドカちゃんと目が合いました。

ノドカちゃんは口いっぱいに柏餅をほおばりながら、

満面の笑顔を見せました。

お母さんはやさしくうなずき返します。

そこへ給食のカリン先生が入ってきました。

「みんな、柏餅はどうだったかな?」

「おいしい!」「もっと食べたい!」

園児たちの声に、カリン先生は満足げにうなずきました。

「柏餅にはね、“元気に大きくなれますように”っていう願いがこめられているんですよ。

みんなも今日食べたから、きっと優しくて強いおりこうさんになれますね」

「はーい!」


保護者会のお母さんたちは先に帰り、

ノドカちゃんはいつものように保育園バスで帰ってきました。

住宅の前で待っていたお母さんに「先生さようなら〜」と手を振り、

ノドカちゃんは元気に降りてきます。

手をつないで歩きながら、ノドカちゃんは顔を上げて言いました。

「お母さん、柏餅おいしかったよ。もっと食べたい!

また作って、お父さんにも食べさせてあげようよ!」

「そうね。作り方を教わってきたから、

今度お父さんがお休みの日に、三人で作ってみようか」

「うん!」

ノドカちゃんは目をキラキラさせて、お母さんを見つめました。


その日の夜、

ノドカちゃんは玄関のドアが開く音を聞くと、

いちばんに走っていきました。

「お父さん!きょうね、柏餅つくったんだよ!」

——今日も、お父さんに報告することがひとつ増えました。

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