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『妖精の取り替え子』認定喰らって即寒村送り!弱小氏族次男坊の独立戦争記  作者: くろすーおーばー
第一章 幼少期(グレンガルト・トゥア編)

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28:フェアル・ジャラグがやってきた

【ブクマ】【評価ポイント★】【リアクション】を是非ポチッとワンクリックよろしくお願いします(人´∀`o))

朝日を浴びて地霧の立ち上る畑を横目にマードック大叔父様と一緒に牡蠣殻を回収して回る。

 同時に煮た後の汁が残っている場合はそれも壺で回収しクラウとソラスに家に持って帰ってもらう、微々たるものかもしれないけど牡蠣殻から染み出したカルシウム(アルカリ性)が入っているはずだ。     


 この土地が見立て通り酸性土壌ならもしかしたら酸性値を下げてくれるかもしれない希望的観測でしかないが試す価値はある。


 回収を終えて鍛冶屋跡(窯)へ向かう前にシェーナさんのケール畑に煮汁を撒く、まだ冷え切っていないからみるみる雪が溶けていく。

「レテウス!何をしているの?」

「水やり」

「水やりなんて必要ないのに困った子ね」

 シェーナさんは呆れ混じりに笑う。


 実際ケールはというかケールだけがこの厳しい環境でも育っている事は知っているけど、言い換えれば逆にこの時期に成長を確認できるのも今のところケールだけしかない


 レテウス君と一緒に勉強した限りではこれなら枯れることもないはずなのだ。それにこれで冬の間の楽しみもできた。なんだか夏休みの研究を思い出してしまう…真冬だけど


「またおかしなことをしているな、叔母の畑に見汁を捨てるとは…」

「おかしくないんですよ」

「まあお主のことだから意味があるのだろう」


「終わりました!」

「よし!今日は何をするのだ」

「今日も大叔父様大活躍ですよ」

「そうかそうか!」

 今日も大叔父様は元気だ。窯に着くと既にギャラリーが出来ていて中には昨日まではいなかった大人もちらほらいる。何をするのか楽しみにしているみたいだけど申し訳ない来たからにはもうお客さんではなく参加者とみなします。


 なんだか難しい顔をしているゴブ爺さんに声をかける

「何か有ったの?」

「いや、悪いことではないのじゃがなどうも腑に落ちんくてな」

「何が?」

「このピートの量じゃ」

 目を向ければ結構な量余ってる

「わしはあの火力を知っておる、それを元に必要な量を見立てたんじゃが…」

「思ってたより少ない量ですんだと」

「そうじゃ」


「少なくて済んだのなら良いんじゃないの?それにこの窯の初めての焼入れなんだから計算が合わないことだってあるでしょ?」

「それはそうなんじゃが…こんなに少なくて済むのは異常じゃ、だから腑に落ちんと言っておる」


 こっちとしてはアナム・グアル(超高圧縮乾燥ピート)を作る数が減るのは大歓迎


「次はこれを焼きたいんだけど」

「なんじゃ、牡蠣の殻ではないかレテ坊こんなもの焼いてどうするんじゃ?」

 袋の中を見たゴブ爺さんが俺に聞いてきたが説明が難しいな…

「ゴブ爺さん、石灰って知ってる?」

「知っとるがあれは石からとれるものじゃ」

「焼くと石灰になるのさ」

「そんな話聞いたことがないぞ!こんな殻が石灰になるものか」

 う~ん、なんて言おう


「よいではないか、どうせケルプも焼くのであろう?一緒に焼くだけなんじゃから試してみれば答えも出よう、ゴブごちゃごちゃうるさいぞ」

 ゴニョゴニョとしかめっ面で口ごもるゴブ爺さんだったけど渋々了承、大叔父様、ナイスアシストです。


 さあ始めよう!


 先ずは周囲の魔法で雪を溶かし地面が乾くまで温め続け渇いた地面にリネン(布)を広げる。窯の熱のお陰か思ったよりも早く渇いてくれた


 次に雪に濡れないように窯の中にしまっておいた資材を皆にお願いして取り出し、資材ごとにリネンの上に広げていく


 僕らが仕上がりを確認している間に参加者達はカラムに従って窯のお掃除と点検をしてもらう。


「ゴブ爺さんどう?ちゃんと火が入ってる?あれ石英は?」

「あれなら川の中じゃマードック様引き上げてくださらんか」

 川の中から冷やされた石英が出てきた

「なんで冷やしてたの?」

「説明はあとじゃあとじゃ、今はこっちを見ておる」

 そう言うとそれぞれの資材を手にとってハンマーで叩くゴブ爺さん

「レンガの骨材は大丈夫じゃろうし、沼鉄は余計な物がしっかり焼けておるが、ケルプと砂はよく分からんな」

「初めての焼きだからねしょうがないよ、それで石英のお話教えてよ」


「あれはな一度高温にして冷やすと脆く砕きやすくなるんじゃとは言っても粉々にするには難儀じゃぞ」

「なるほどぉ」

 勝手に熱で粉々に割れると思っていた自分が恥ずかしい


「でもマードック大叔父様の力なら楽勝だよね」

 大叔父様の顔を見つめる


「あったりまえじゃわい」

「待ちなされ粘土の方はマードック様の手にかかればあっという間に粉々に出来るじゃろうが石英は別じゃ粉末になるまで細かくせにゃならん」


「石臼とかで挽く感じ?」

「石臼はご法度!氏族長の息子で色んな事を知っておるのにそんな事も知らんとは」

 呆れられちゃった。

 今思い出したけど石臼で勝手に麦を擦られると税の徴収が出来なくなるからパンの粉挽き所以外では石臼は持ってるだけででも犯罪なんだった…


「やだなぁちょっと忘れてただけだよ」

「取り締まる側なんじゃしっかりせい」

「じいちゃんレテウス様はまだ四歳なんだよ、普通その歳で知ってる方がヤバいと思うんだけど」

(にいには大人なのにね)

 まあ誰も知らないからね。クスクスと笑うレテウス君


「……そうじゃな…余りにも賢いもんじゃから忘れておった」

「でもあれだよね麦の粉挽きの石臼で石英を挽くわけにも行かないし…」

「地道にやるしかないの」


「う~ん、先に大叔父様に骨材をやってもらうしかないかお願いします。大叔父様」

「おう、任せとけ!」

「粒が残るくらいでお願いしますぞ」

「相分かった」

 マードック大叔父様が焼いた粘土を握りつぶして子供たちがそれを石で叩いて更に細かくする。大人たちには補修の終わった窯へケルプと牡蠣殻を運び入れ、カラムに言われた通りに配置していった。


 なんか良い感じに連動できてる気がする。


 俺は俺で魔法で石英を粉末に出来ないか考える。


「そうだこないだの魔法!」

 俺の声でギャラリーもとい参加者たちがこちらに振り向いた


「ま~た、レテウス様が何かするみたいだぞ」

「今度はなにするんだろうね。」


 ご自分のお仕事に集中してほしい。


 地面を乾かしたときの様にまず風魔法で球体を作る、50cm位でいいかな。


 球体の外側を高圧にして壁を作り上に穴を開けてっと


「誰か石英二つちょうだい」

「レテウス様は~い」


 渡された石を穴から投入っと開けておいた穴を閉じて球体の真ん中に向けて風を…


 カンッ カッカッカッカッカカカカカカ


 球体の中で石英同士がぶつかりあって割れ始めた

「もう少し出力を上げて…」

 かなり細かくなった所で出力を下げていく

「誰か袋持ってきて~」

 袋をもらい袋の上で球体の底を窄(すぼ)めていく

「いくよ~」

 窄めた先に穴を開けるとサラサラと粉が袋に落ちていく

「ゴブ爺さんこれくらいでどう?」


「なんか真面目に教えるのが馬鹿らしくなってくるな…」

「そんなことないよ、現場を知ってるゴブ爺さんがちゃんと指導してくれるからアイデアが浮かぶんだから」

 納得行かないのかゴブ爺さんはうなだれたままだ

 そりゃあ解るけどさ、こっちも時間切羽詰まってるんだもん正確なタイミングは判んないけどあと三年くらいしかないんだから仕方ないじゃん


 今度は大きさを倍にして直径一メートルの球体を作り出して残った石英を全て入れてやってみる


 バキッ ガッ ガッ ギッ ガガガガガガカカカカカ… 


 結構な量の魔力を持っていかれる、キツい…

(がんばってにいに)

 おうよ!兄ちゃん頑張るよ。


 音が消え球体の中が真っ白な煙で見えなくなった。


 袋を持ってきてもらいさっきと同じ要領で粉末になった石英を袋に入れる。


 こんなに疲れたのは久しぶり、やっぱりなんでもかんでも魔法で発展とか無理、体が持たないよ


「やはりお前の魔法の使い方はおかしい、普通は火球や水球を飛ばすもんじゃぞ」

 素手で握りつぶして骨材作ってる大叔父様も大概おかしいと俺は思うんだけどな


「だって疲れるじゃないですか、四歳で弓矢なんて射れないし魔法で補助するのは当然です」

「矢はまだ解らなくもないが、今のは補助とは言えんだろ」


「補助ですよ!ゴブ爺さんのお陰で柔らかくなったと言っても子供にこれが割れると思います?割れるように石同士をぶつけてるだけなんですから」

「そもそも石同士をぶつけるという発想が狂っておる」

 酷い言われようだ


「その分新しいとも言える、だが新しいものとは受け入れられにくい側面もある気をつけるんだぞ」

 あれ?これは心配してもらえてるんだよね…


「はい!気をつけます」

(気をつけます)


「それと村の外では安易に使うな、どうしてもという時だけにせよ」

「はい…」


「それとな、お前を受け入れている村の衆にも感謝するんだぞ、今お前が何をしても許されておるのは村の集のお陰じゃからな」

「胸に刻みます」

「ほんにお前は子供らしくないのう、普通の子どもは嫌じゃ嫌じゃと駄々をこねるもんじゃぞ」

 大叔父様はがははと笑い飛ばしてくれたけど、村の外や偉い人と会った時は本当に注意しないといけないことだ。


 今の生活が楽しくて忘れていた。何故この村に来ることになったのか…


 半分消えかけていた母の顔が浮かぶ


「レテウス様~二回目の火入れの準備が終わりました~、火付けお願いできますか~」

 窯の前から手を振るカラム


「うん今行く~」


 カラムと一緒に窯に入る。

「カラムはどう?この作業きつくない?」

「きついですけどそれよりも新鮮で楽しいですよ」

「新鮮?」

「ええ、焼けちゃったときは流石に困りましたけど、まさか鍛冶屋丸ごと窯にするなんて思ってもなかったですし」


「爺ちゃんにはこんな事言えないんで四歳のレテウス様に言うのも違うとは思うんですけど、俺ねこの仕事嫌いじゃないし爺ちゃんの後を継ぐんだってのと、心のどっかで同じ事の繰り返す人生なんだなって諦めてた気持ちもあって…でもレテウス様が来てからの村は退屈じゃなくて、なんて言えば良いのか纏まんないけど今が楽しいです。レテウス様」


 そっか…

「ありがとう、そう言ってくれて僕も嬉しいよ」


< ふふふ… >


「カラム?」

「なんですか」

 気のせいかな笑い声が聞こえたような…レテウス君?

(僕じゃないよ)


< 笑っちゃ駄目だよバレちゃうじゃない >

< わっ、この子からだの中にもう一人居るよ!変わってる >

< ………うん >


 こそこそと話す声やっぱり誰か居る。それも一人じゃない

部屋を見回しても誰も居ない…


「ねえ隠れてないで出てきてよ」

「レテウス様?」

「誰か居るんだこの窯の中に」


< ほら~バレちゃったじゃない >

 きょとんとしたカラムの顔を見るに、彼にはこの声は聞こえてないのか?


 ポゥ

 次々に窯の中に優しい明かりが灯る、四つの灯りが炎を纏った空飛ぶ小さな子供たちに変わる

(わぁ)

「エース・シー(丘の民)…」

 目玉を飛び出させる程かっぴらいてカラムがつぶやく

 エース・シーってアイルランド語でアオス・シー、精霊様のことだったよな


「精霊様精霊様、お目にかかれて光栄です。こんなところで今日はどうなされたのですか?」

 精霊様や妖精様はプライドが高い高圧的だったり舐めた態度をするとどんな目に合わされるか解らない…はず、少なくとも地球の民間伝承だとそういう事になっているケースが多い。


 あと伝承どおりだと決して感(・)謝(・)し(・)て(・)は(・)い(・)け(・)な(・)い(・)はずだ。


 感謝=じゃあお別れね

 という精霊にしか分からない理があるらしい。



「あのね、あの炭すごい美味しいの、もう一度するんでしょ」

「だから待ってたの早く早くなの~」

「僕は別に待ってたりしてないもん」

「…………」

 四体?四柱?の精霊様はや継場早に話しかけてくる。一人黙ったままだけど…


「美味しいのですか?」

「そうよこの炭は、こうぎゅぎゅぎゅ~ってされてるから美味しいの」

 女の子の火の精霊様がおにぎりでも握るように両手をギュッギュッしてる…おにぎりかこの世界で食べるチャンスは~…多分無いな。


「火付けに時間かけ過ぎじゃ、一体何を」

 痺れを切らしたゴブ爺さんがドカドカと入ってきて硬直する。


「ゴブ爺さん?お~い」

 眼の前で手を振っても動かない


「お爺さんどうしちゃったの?」


「じいちゃん?じいちゃんってば!」

 カラムが揺さぶってみても効果なし…って、ゴブ爺さんの目から光るものが流れ落ちる。


「おぉ…精霊様、わしの窯に精霊様がお越しになってくださった…もう死んでも良い…」

 いや、死なないで!

「?」

 ほら精霊様も戸惑ってるじゃん

「もしかして楽しんじゃ駄目だった?僕たち長く楽しみたかったからこの炭ゆっくり燃やしたのが行けなかったのかな?」


 ゆっくりという言葉にピンときた

 民間伝承にこんなのが有る


 妖精たちとほんの少し一緒に踊った男が家に帰ると何年も経っていた…まるで日本の浦島太郎みたいなお話、この精霊たちがその力でアナム・グアルの燃焼時間を伸ばしたのなら、ゴブ爺さんが腑に落ちないといった少量のアナム・グアルで焼けた理由に説明がつけられる。


「失礼しました、いえいえそんな事はありません。どうやら精霊様に会えて感激して固まってしまったみたいでして」

「そうなんだ~、それでね」

 なんていうか精霊様の対応が軽いというか…

「お願いがあるの!次はあれを入れるのだけは止めてほしいの?」

 あれ?精霊様は外に出された沼鉄鉱を指さした


 あ~、妖精や精霊は鉄が苦手なんだっけ

「大丈夫ですよ。今回は入れる予定ありませんから」

「良かったの~」

「…………」

「ごめんね~その代わり僕たち食べさせて貰う代わりにお礼がしたいんだ~」

「お礼ですか…」

 下手に断ると怒って帰っちゃうかもしんないし


「…じゃあしばらく、そうですね精霊の国に帰る迄の間御滞在頂けないでしょうか?」

「居るだけ?それがお礼になるの?変なの」

「でもいいじゃないか僕らが居ると、この子も嬉しいんでしょ」

「ええ、そうしていただけるととても嬉しいです」

(うん!嬉しい)


 今嬉しいって言っちゃったけどこれって感謝に入るんじゃ…

「なら良いんじゃない」

「………」


 セーフ!嬉しいは大丈夫らしい

「じゃあ、火をつけますから存分お楽しみ下さいね」


「わ~い」

「やったぁ!」

「ごちそうだ!」

「………」


「ご滞在される!?」

 それを聞いたゴブ爺さんの涙腺が崩壊…ちょっと…しばらくの間、使い物にならなそう


 カラムがゴブ爺さんを抱えて外に出る。


「随分と時間がかかったな、それにゴブはどうしたんだ?」

 ぱんぱんと骨材を払う大叔父様に事情を話すと


「なるほどのう、それにしてもフェアル・ジャラグ(赤の男)まで来るとはの」


 大叔父様が言うには


 どうやら精霊様が自分の鍛冶屋に来るのは一生かかっても一握りの鍛冶屋にしか現れない誉らしい、そしてそれは本家からこの開拓村に送られたゴブ爺さんからすれば精霊様に逢える可能性はゼロに等しい絶望だったであろうと教えてくれた


 そりゃあ嬉しいよね


 …でもフェアル・ジャラグのフェアルって『男』を指すんだけど女(・)の(・)子(・)居たよなどういうことなんだろ?まあそれを聞いて腹立てて帰られるのも嫌だから考えるのを放棄した。

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