24:ブラックハウス窯計画
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無惨にも焼失した鍛冶屋の前に集まるレテウス達、大人たちは鎮火を見届けて帰ってしまったけどヨゾとマザを含めた村の子供たちも野次馬でやって来ている。火事の熱と石に籠った熱の影響で元鍛冶屋の周りは雪もなくなっていた
「じゃあおめえさんは今までの炉より強い炉を作るってのかい」
「そうだよゴブ爺、元々色々と変えていくつもりだったから使えそうなものは集めてたんだ…まあその前に炉が焼け落ちるとは思いもよらなかったけど」
それを聞いてゴブ爺は孫で弟子のカラムと顔を見合わせる、普通ならド素人のしかも幼児の言うことなど到底信じられるものではないのだが、眼の前の焼失した工房が信じさせるに足る説得力を持って煙を上げていた
「煉瓦、それもとびきり熱に強いやつを作りたいんだけど」
「煉瓦?今までみたいに石積みじゃいかんのか?」
「駄目だから今こうなってるんじゃん」
言い方が悪かったゴブ爺さんに睨まれる
「まあそうじゃが、わざわざ粘土を焼いて作るのは手間がかかりすぎるじゃろ」
「そんなことないよ、作り置きしておけば炉以外にだって転用出来るんだからじゃんじゃん作ろうよ」
今まで泥を焼き固めて作った炉しか使ったことのないゴブ爺さんはちょっと懐疑的
「レテウス様、一々小分けにせず一塊の炉を作らない利点は何なのでしょうか?」
カラムの聞き方はゴブ爺さんと違って興味が有るって聞き方だな
「そうじゃ七面倒くさい!」
ゴブ爺さんは経験を積んでいる分嫌なんだろうな、よしちゃんと説明しよう
「先ずはメンテナンスが圧倒的に楽になる、炉にヒビが入っても煉瓦なら寸法が同じだからその部分だけを交換できる、これを一塊で作ると劣化したら全部作り直しだよね」
「なるほど」
云々と頷くカラムと渋い顔のゴブ爺さん
「交換しながら使えれば炉の寿命は長くなるし、作る前に仮置きできるから完成した時の想像もしやすい」
「おおぉ~」
「……」
感嘆の声を上げてくれるカラムと対象的に黙ってしまうゴブ爺さん、でも反論してこない所を見ると理解は出来ているんだろうな、気に食わないだけで
「そっか寸法が同じならレイアウトも合わせやすいですね、やったね爺ちゃん!爺ちゃんの好みに合わせた工房が出来るじゃん!」
「お、おう…判ったわい、それで何処から手を付けるんじゃその煉瓦からか?」
「と行きたい所なんだけど、ねえゴブ爺さんこの水車ってもう使えない感じ?」
「工房の中は燃えてしまったが壁が厚いからの、幸い水車の転輪自体はしばらくは使えそうじゃな…軸は交換した方が良いじゃろうが」
「う~ん」
結構時間がかかりそうだな、先に資材を皆に持ってきてもらうか
「ヨゾかマザは僕の家から海の砂と海藻の袋持ってきてくれる?1が砂で2が海藻だからすぐ判ると思う大丈夫だよね?」
二人はにっこり微笑んで走り出す
「あ~、あとクラウとソラスにも来てくれって伝えて~」
「は~い」
「みんなはこないだのやつ持ってきて欲しいんだけど」
「ぴーとの?」
「そうそう、全部じゃなくていいよ一袋分くらいかな」
「判った~」
数人の子供たちが山へ入って行くのを見届ける
レテウス君準備は良い?
(いいよ、にいに)
「じゃあ水車は後でいいや、えっとね~」
大学の図書館にスタンバっているレテウス君の視界を借りて説明を始める
「ゴブ爺さん煉瓦自体は知ってるんだよね」
「当たり前じゃここでは碌な質の粘土がないから作らんだけじゃわい」
「粘土はこのあと持ってくるから質を確認してほしい、それから失敗品が有ったよね」
「ああ今もあの中じゃ…」
無惨になった鍛冶屋跡地に目を向ける
「その失敗品を細かく砕いて煉瓦を作る時に混ぜてほしい…え~と、うんそうそうシャモットっていうんだけど…」
「骨材か」
「そうそう!」
ゴブ爺さんは何を思ったのか両手を広げて
「レテ坊、降参じゃ、まさか四歳の子供がそんなことまで知ってるとはな正に神童じゃ」
ごめんなさいレテウス君を使ってチートしてます
「でもそのあとの粘土に入れる量とか判らなくて不安なんだ…」
「そんなもん回数重ねりゃなんとでもなるわい任せとけ、しかし簡易的な炉を作っても数が捌けんな…かなり時間がかかるぞ」
確かにそうだ、どうしようか…
(にいに、おっきい釜がひつよう?)
うん、そうなんだけどね
(眼の前のじゃだめなの?)
眼の前?そうか!ありがとうレテウス君
(やったー)
「ねえゴブ爺さんどうせ一回目は失敗してもいいから一気に数こなしてみない?」
「じゃから炉がないと…お主まさか」
良かったゴブ爺さんも気づいたようだ、ブラックハウスの壁は厚みが1メートルは有ってこの火事でも中と屋根は燃えたけど健在だ
「ぶっ飛んでおる、これが子供ならでは頭の柔らかさか…」
実際俺も思いつかなくて考えたのはレテウス君だから間違ってない
「問題は」
「屋根だよねぇ」
そうなのだ燃料はアナム・グアルを使えばいいが屋根がなければただの大きな焚き火だ
「せめて太めの生木を使えればその上から泥を被せて炉に出来るんじゃが」
< 父大変! >
クラウどうした?ヨゾ達に何か有った?
< そうじゃなくて!ごめん追いつけない >
クラウとソラスが慌てるなんてよほどの事態だ
ドドドドドと地鳴りのような音が近づいてくる、本当に何なんだ
(にいに?)
なんかわかんないけど隠れようか…レテウス君の安全が第一
「アンガスはおるかぁぁぁぁぁ!」
まるで雷のような声が響いて思わず目をつぶる、アンガスって兄上?なんで?
「何処じゃアンガスゥゥゥ!」
兄上が来てるのか
「ありゃあマードック様じゃな」
一人だけ落ち着いているのはゴブ爺さん、あとは俺と同じで皆ビビってる
「マー…ドック様?」
「落ち着くんじゃレテ坊、おまえさんの親戚じゃ」
事実上の追放をされてから血縁者は叔父上しか会っていないから不思議な気分だでも声が大きすぎてちょっと怖い、それになんで兄上?
姿が見えると地鳴りの原因が判った
馬だ、それもとびきりデカい馬だ、その上にいる人も負けじとデカい
「本当に親戚?」
「お前さんにとっては大叔父になるお方じゃぞ挨拶せんとな」
ゴブ爺さんに背中を押されて前に出る
「なんじゃ小童?」
威圧感が凄い…
(こわい)
レテウス君も怖がっている…いざという時は魔法で…って親戚だった
「あの、兄上をお探しなのですか?兄上はここには居ないと思いますよ」
「なんじゃとぉぉ!!ん?」
(うるさぁ~い)
声デカすぎ、判っていても肩が跳ね上がる
「そうじゃアンガスではなったわ、あ~~~なんじゃったか次男坊の」
え?俺…なんで?益々分からない
「レテウスなら僕ですが」
「そうそうそんな名前じゃったのう、お前がサーロンの息子か!ちっちゃいのぅそんな身体でどんなやんちゃをしたのだ、わしには検討もつかんぞ」
なんだそれ
お馬さんを降りたムキムキマッチョな大叔父に襟をつままれて持ち上げられる
「面白いくらいちっこいのう、さあどんなやんちゃをしたのだ教えておくれ」
(ちっちゃいちっちゃいうるさい!大きくなるもん)
何だこの人それが聞きたくてこんなとこまで来たの?あと息がぐるじい…
「マードック様、お戯れをそれでは喋るに喋れませんぞ」
「ん?貴様は…おおゴブではないか久しいのう」
「ご無沙汰しておりますじゃ、さぁレテウス様を降ろして話を聞きましょう」
「そうであったな、ほれほれレテなんとかとやら申してみよ」
なんでこの人こんなに楽しそうなの?
「え~っと、そこの鍛冶屋が僕の作った燃料のせいで燃えちゃったと言うか」
突然ぶるるっと震える大叔父様
「おんし、気味が悪いのう大人みたいに喋りおって」
「こういう人間なんで諦めて下さい」
もう一度震える大叔父様
「がははははは、気味が悪いが面白いのう、ではその燃料とやらを早速見せてみろ」
この人無茶ばっかりで苦手だ
< 父!大丈夫?怪我してない >
クラウとソラスが低い唸り声を上げて大叔父様から俺をひったくる
大丈夫大丈夫、それにこの人親戚のおじさんだから威嚇しないで
< え?父の家族? >
たしかに怖いけど暴力は振られてないし…首は絞まったけどね
「ほう…これはただの狼ではないな妖狼の子とは珍しい」
判るのか、この大叔父様ただもんじゃないな
「僕の家族で兄弟です。傷つけたりしないで下さいね」
「ますます面白いな小童、名前は何と言ったか」
「レテウスです」
全然人の名前覚えないなこの人
「早う燃料を使ってみせよ」
話も飛び飛びだし
「使いたいのですが炉が使えないのです」
そう言って鍛冶屋跡に目をやれば
「炉?釜のことか?釜など何処にでもないではないか」
キョロキョロと子供みたいに炉を探す大叔父様
「そこです、その燃えた家です」
「何と剛毅な!家丸ごと釜にすると申すか、あっはっは」
「はい、でも屋根がないので蓋が出来ないのです」
「う~むどうすれば良いのだ?」
「とりあえず、丸太を上に組めれば後は泥で固められるのですが」
「本当か」
俺にではなくゴブ爺さんに確認する大叔父様、ゴブ爺さんも頷いて答える
「おいゴブ道具を貸せ、斧くらいあるんだろ?」
「焼けずにすんだものが二本ほどございます。ほれカラム持ってこい」
カラムから手渡された斧で二度三度と素振りをするのだがカラーバットでも振っているかのように重さが感じられない
「相変わらずの腕じゃのう、レテウスしばし待っておれ」
大叔父様は馬にも乗らずに山へと分け入ってしまった
そういえば理由聞く前に行っちゃったけど…あの人なにしに来たんだろ?
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