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星間リコレクター  作者: 無色なそら


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第二十七話 反撃

 アステルたちはアザガニの群れから逃げ、漸くしてリミナの者たちの元へとたどり着く。


「降ろすよ」


 ユエルォトルの体の反対側まで走り、アステルはすぐさま老人を肩から降ろす。


「無事? 何事もない?」


 リトはアステルに駆け寄り、心配そうに聞く。


「大丈夫だよ、それよりも──」


 アステルが答え切る間もなく、アザガニがアステルの顔に飛んでくる。

 ユエルォトルの体の反対側では、既にリミナの者たちとアザガニの群れが衝突しており、場がかなり荒れていた。


「おいおい、なんだこいつら!? めっちゃ痛え!」


「ひとりになるな! なるべく固まって、足を使わず槍を使ってまとめて弾き飛ばせ!」


「え? あ、やべえ足の指1本取られた!」


「ぉお馬鹿ァ──ッ! お前はいつも……、話を聞けって!」


 あまりにも数が多すぎるアザガニの群れに飲まれ、傷負する者が急激に増えていく。


「やっぱり、質や大きさよりも、数で攻められた方が厳しくなるのかな」


 アステルはリミナの者たちとアザガニの群れが争っている様を淡々と眺めているが、


「そういえば、ラナデ君はどこに……?」


 と、ふと気が付きアステルが注意深く辺りを見回すと、体格の良い男の背に、アクア・リタたちが獲物をしまっていたように、ラナデの体をマントの中に入れて背負われている。

 その近くでは、メモリーが迫り来るアザガニたちに向かってお姉ちゃんパンチを繰り出していた。もちろん、ホログラムなので当たりはしないが。


アステル(あなた)はここに居て。わたしは皆を手伝いに行く」


 リトはアステルに告げると、他の者たちを手助けに向かっていく。

 アステルは少し考え、ユエルォトルを見上げる。


「今のうちに詳細を記録しておこうかな」


 アステルは老人をその場に置いて、ユエルォトルの周りを見て回る。


 ──アステルが暢気にユエルォトルの記録をしている間にも、アザガニの群れの進行は続く。

 リミナの者たちがアザガニの対処に手こずっている中で、ドゥカッセただひとりだけが、アザガニが寄りつけないほどの速度で捌いている。


「どんだけいんだよ! ドゥ母ちゃん、こいつらどうにかなんないの?!」


 ブッセがあまりの量のアザガニに手を負えず、ドゥカッセに助けを求める。


「はぁ、ドゥカッセは教えるのは苦手。そういうのはずっと、アイタがやっていたから」


 ドゥカッセは「だから……」と、周囲のアザガニを払いのけながらブッセを見る。


「ドゥカッセに教えを請うのなら、見やすいようにゆっくりとやってあげるから、それを見て覚えると良いよ。他全員もね」


 周りの視線が自身に集まるのを確認すると、ドゥカッセは「よく見ておいて」と、周辺のアザガニで足下に円ができるように払っていく。

 その動きは先ほどより遅く、他の者にもどう槍を使っているのかがはっきりと見える。


 槍を振る際、槍端に近い1匹を裏返しながら貫き、振った勢いで貫いたアザガニを群れの中に飛ばし、その衝撃で周りのアザガニを吹き飛ばしている。


「おおー、ドゥ母ちゃんすげー!」


 ブッセがドゥカッセの技量に興奮していると、パッソが間に割り込み視界を遮る。


「ブッセ、お前も見て分かっただろう。ならば視線を逸らすな、迎え撃つぞ」


 そう言うと、パッソはぎこちなくはあるが、ドゥカッセのようにアザガニの群れを捌いていく。


「下手くそだな、あっちゃんの方が絶対上手くできる」


 ブッセは返し、自身に群がるアザガニを捌く。ただ正直、自分の方が上手くできると言っていた割にはそこまでである。

 周りの者たちもふたりに続き、ドゥカッセのようにアザガニを捌き始める。


「上手く貫けないな。どうやってるんだ?」


「さっきドゥカッセが見せてくれただろう。こうして腹を突くんだ」


「おお、できたできた!」


 それまで押され気味だったリミナの者たちは、ドゥカッセの手本を見真似てアザガニたちを押し返し始める。


「リト、大丈夫そうか?」


 アザガニの数が減り始め、余裕ができたアクア・リタは聞く。


「余裕。ブッセにできて、私にできないことはない」


「そうか、ふたりは相変わらずだな」


 アクア・リタは苦笑し、目の前のアザガニたちに再び意識を戻す。

 

「高め合えるのは良いことだ」


 それからというもの、アザガニの数は着実に減らされていき、まともに動ける個体は3分の1以下にまで減っていた。

 残りのアザガニたちは、まだ軽傷までしか負っていない動ける者が相手をし、著しい負傷をした者は後方のユエルォトルの陰に避難して休む。


「なあリタ、ちゃんとこいつら捌けてるか? できねえならあっちゃんが教えてやっても良いぞ」


 アクア・リタが賢明に後方の者たちを守りながらアザガニの群れを対処していると、ブッセが片手で槍を振るいながら歩いてくる。


「いや、問題ない。君はそのまま自分の身を守っていると良い」


「ちぇ、つまんない」


 ブッセはアクア・リタが誘いに乗らず、退屈そうにため息を付く。


「そんなこと言っていて良いのか? ドゥカッセさんがこっちを見ているぞ」


 アクア・リタはアザガニの群れから視線を逸らさず言う。

 その言葉にブッセが肩を跳ねさせ、ドゥカッセの方を見やると、ドゥカッセが迫り来るアザガニに全く気を向ける素振りを見せず、じっとブッセのことを見つめていた。


「な、なんでドゥ母ちゃんじっとこっち見てんの……?」


 ブッセが、じっと自身を見つめ続けるドゥカッセの視線にたじろいでいると、ドゥカッセがブッセを手招きする。


「呼ばれているみたいだが、行かなくて良いのか?」


 アクア・リタはドゥカッセを指さしながら聞く。


「なんだよもぉ、せめてこいつらシバいてからにしといてよ」


 ブッセはため息を付き、周りのアザガニを蹴散らしながらドゥカッセの元に向かう。


「ドゥ母ちゃん、なんか用?」


 ムスッとした態度でブッセは聞く。


「そこまでの用、と言えるのかは分からないけれど、ひとつ。

 あなたさっき、“上に何か居る”と言っていたよね? それは今も居るの?」


 先ほど、ブッセが述べたときは誰もまともに相手をしていなかったが、ドゥカッセだけはブッセの言葉を気にしていたようだ。

 ブッセは一度、大きく槍でアザガニたちをなぎ払い、天を仰ぎ耳を澄ませる──。


「居な……ん?」


 ブッセは言葉を止め、目を開いた。そして──、


「まずいぞ! お前ら全員槍を──」


 声を張り上げ、その場の全員に呼びかけている最中、ドゥカッセに横腹を槍で殴り飛ばされる。

 その直後、瞬間的な爆音が鳴り響いた。


「ってぇ……、ドゥ母ちゃん、何す──」


 殴られた腹部を顔をしかめながら押さえ、ブッセが悪態をつこうとするが、目の前の光景に思わず口から出そうとした言葉が止まる。

 ブッセの視線の先では、直前まで話していたはずのドゥカッセが片腕を切り離されてうつ伏せに倒れており、更にはその頭部を何かが貫いていた。


「か、母ちゃん……?」


 母を呼ぶブッセの声と伸ばす指先は、細かく震えている。


 ブッセたちに何か事情があろうが、アザガニたちには全く関係がなく、群れは止まることなく倒れているドゥカッセにまで集り始める。


「ブッセ! まだこいつらを仕留め切れていないぞ! 立て!」


 パッソがブッセの前に立ちはだかり、アザガニの群れをなぎ払う。そして、ブッセを再び奮い立たせようとしたその時──、


 突然アザガニの群れが何カ所も巻き上げられたかと思えば、先ほど聞いた瞬間的な爆音が連鎖的に鳴り響く。


「な、なんだ!?」


 巻き上げたれたアザガニたちが地面に散らばり、複数の小さなクレーターを作り出すと、アザガニでできたクレーター1つ1つ全ての中心に長い嘴のようなものを持つ生物がおり、アザガニを捕食している。


 その場のほとんどが警戒し動かないで居る中、ユエルォトルの記録を終えたアステルが、ブッセの元に歩いてくる。


「凄い音がしたけど、何あれ」


「さ、さあ、分かんない。って、そんな場合じゃない!」


 ブッセは立ち上がり、一目散にドゥカッセの元へ駆けつけていく。


 ドゥカッセの頭部を貫いているものは、いくつもできたクレーターの中心に居るものと同じ生物だろう。

 貫通して地面まで達しているのか、その生物はドゥカッセの頭部から嘴を抜こうと藻掻いている。


「ドゥ母ちゃん!」


 ブッセはドゥカッセの頭部に刺さっている生物を引っこ抜き、投げ捨てる。


「ドゥ母ちゃん、刺さってたの抜いたよ。だからさ、起きてよ」


 訴えかけるが、ドゥカッセからの返事はない。


「ね、ね……、もう悪戯とかもしないからさ」


 横たわるドゥカッセの身体を、ブッセは小さく揺する。


「そうだ、手がないとね、起き上がれないよね。持ってきてあげる」


 ブッセは四つん這いで近くにある切断されたドゥカッセの片腕を取りに行き、切断面を合わせて付けようとする。

 

「どうしようか、付かないね。じゃ、じゃあ、あっちゃんが起こしてあげる」


 そう言うと、ブッセはドゥカッセを仰向けにし、上半身を抱えて身を起こさせる。


「これで起きられるでしょ……? 母ちゃん、ね?」


 いくら呼びかけようと、ドゥカッセの目は開かず微動だにしない。

 ブッセは震える腕でドゥカッセの身体を抱き寄せる。


「母ちゃん、起きてよ。ちょっと前に父ちゃんも死んじゃったばっかなのに、嫌だよ……」


 ブッセがドゥカッセの身体に顔を埋めていると、ブッセの頭に何かが当たる。


「母ちゃん……?」


 そう呟き、ブッセが顔を上げると、ドゥカッセが薄く目を開け、先の無い自身の手を見つめていた。


「ドゥカッセの腕、無くなってしまっているのね。上手く躱したつもりだったけれど、そうもいかなかったようね。少しばかり気を失ってしまっていたようだよ」


 ドゥカッセは頭の真横部分に穴の開いたフードを確認する。

 そんなドゥカッセの様子を見て、ブッセは安堵のため息を付くのであった。


「母ちゃん……んな暢気な……」


 第二十七回 メモリーお姉ちゃんの豆知識!


 『ブッセ』について


 ブッセさんはドゥカッセさんの娘で、リミナの方々の中では6番目の実力を持っています。


 狩りに出る際、よく自身の双子の兄であるパッソさんと出歩いている姿を確認されているそうです。何でも、毎回狩った獲物の量を競っているのだとか。

 ただ、ブッセさんはかなり耳が良いらしく、小動物の呼吸音まで聞き取りその居場所を突き止めてしまうため、パッソさんが負けることがほとんどらしいですよ。


 はーいそして、ブッセさんは相手と話すとき、かなり舐めてかかる癖があり、よくドゥカッセさんに注意されているそうなのですが、リトさんに対してだけはいつも喧嘩腰で辞める様子を見せないそうです。仲が悪いのでしょうかねー?

 他にも、かなり戦うことが好きなそうで、先ほど話した相手を舐める癖も相まって、タイミングや相手によって口調がコロコロと変わりやすいそうです。


 もしかしたらお姉ちゃんのことも、「メモリーお姉ちゃん」と呼んでくれるかもしれませんねー。エニフルでお仕事をすることになったときのために、今のうちに仕込んでおいても……?

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