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星間リコレクター  作者: 無色なそら


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第二十五話 リミナの民の狩り

 穴の中央にのさばる巨大生物は、リミナの者たちが置いていた獲物を片っ端から食い漁っている。

 大きいものから小さいものまで、付着している泥ごと地面をなめ取るように平らげていく。


「ルオロートルの雌雄別個体か近縁種、それとも成長過程の違いかな?」


 アステルは額に手をかざしてオオサンショウウオに酷似した見た目の巨大生物を眺める。


「ありゃあユエルォトルつって、ルオロートルとは別もんだ」


「名前、あるんだね……」


 老人はアステルに言うと、ユエルォトルを見て盛り上がっている若いリミナの者たちの元へと、自身の背丈の倍以上ある槍を杖にして体を支えながら歩いて行く。

 そして、若者たちが道を空けると、老人は巨大な穴の縁に立ち、ゆっくりと片手を上げる。

「お前ぇら、リタに続いてあの盗人狩ってこい」


 老人は上げた手を前に倒し、若者たちに合図する。


「行くぞみん──」


「このパッソが一番──」


「悪いなパッソ、一番乗りはあっちゃんだ!」


 アクア・リタの掛け声をパッソが遮り、そのパッソの威勢をブッセが体を乗り上げて遮り我先にとユエルォトルの元へと巨大な穴を颯爽と駆けて向かっていった。

 それに続き、続々とリミナの者たちがふたりの後を追ってユエルォトルの元へと駆けていく。

 その様子をアクア・リタは呆然と眺めていたが、


「リタ、私は行く。あなたは?」


 と、リトに背中を叩かれてすぐにハッと我に返る。


「お、おいみんな! 待ってくれ!」


 アクア・リタは先へ行く者たちに呼びかけるが、もちろん止まる者が居るはずもなく、急いで追いかける。

 リトはアステルたちの方へと振り返る。


「私たちの狩りの様子、しかとその目で見てるといい」


 フードを目元まで深く下ろすと、リトは走り去っていき、その場にはアステル、ラナデ、メモリー、老人の4人だけが残った。


「皆さん、大丈夫なんですか? あんな大きい生物に対して、槍だけって……」


 ラナデは自分たちより遙かに大きい生物に、喜々として襲いかかっていくリミナの者たちを見て、心配そうに老人に聞く。

 老人はラナデを1度見上げ、再び巨大な穴の中央に視線を戻す。


「まぁ見ておけぃ。あいつらがどぅ戦うのか」


 ──先頭を走るブッセは、いまだに気付かずに暢気にしているユエルォトルに向けて、槍を構える。


「たははッ! あっちゃんがいちばーん! っらあぁ!」


 ブッセはユエルォトルの首目掛け、穂先から1本手元側に曲がった棒の付いた槍を投擲。

 槍は狙い通りに首元に刺さり、突然の痛みを感じたユエルォトルは首を振り、喉に刺さる槍を前足で払いのけようとする。


「抜かせねぇよォ!」


 ブッセは叫ぶと、暴れるユエルォトルの懐に潜り込み、自身の刺した槍へと飛びつく。

 そして、槍を掴むと飛びついた際の遠心力を使い、勢いのまま回転して更に傷口を広げる。

 ユエルォトルは、ブッセを排除しようと傷口を下に体で押しつぶそうと倒れ込む。


「ブッセ、このパッソが助けるぞ!」


「ならさっさと来い」


 間一髪のところでパッソが槍ごとブッセを連れ出し、倒れるユエルォトルの頭上に飛ぶ。


「そしてもう一度、行ってこいブッセ!」


「おうよ! 任せとけ!」


 パッソは空中で体を捻り、ブッセを叩き付けるようにユエルォトル目掛けて投げつける。

 ブッセは穂先から飛び出た棒の部分に足を掛け、ユエルォトルの目を貫きつつ着地。暴れ出す前に、軽くこねくり回しながら引き抜き離れる。


「おいおい、ふたりだけで終わらせんじゃねえぞ」


 ようやく、ブッセたちに続いて向かってきた者たちも追いついてきたようで、ユエルォトルの体に群がりよじ登ろうとする。

 しかし、


「クソ、やっぱり滑るな」


 ユエルォトルの体表は粘膜が張っており、凸凹とした体の取っ掛かりを掴もうとするが滑って上手く掴めずにいた。

 そしてついに、ユエルォトルは体制を立て直し、力の限り暴れ始める。


 リミナの者たちが攻め手に欠けていると、アクア・リタも遅れて追い付き、先に戦っていたパッソとブッセの元に行く。 


「パッソ、ブッセ、無事か?」


 アクア・リタはふたりの状態を確認する。


「このパッソに心配無用」


「何だ? 怪我でもしてたらあんたが何かしてくれたのか? でも残念、あっちゃんも元気ピンピンだな」


 何事もないことを確認し、アクア・リタは安堵する。


「そうか、それは何よりだ。それで──」


 と、アクア・リタたちユエルォトルの方へ視線を向ける。


 3人の視線の先では、ユエルォトルが盛大に血や粘液を撒き散らしながら暴れていた。

 周りを囲うリミナの者たちが攻めるに迫られず、状況が難航していると、集団の中から2つの人影が飛び出した。


「全員退いて、ドゥカッセとリトが行くよ」


 ドゥカッセとリトがユエルォトルの前足へ向かって走る。


「リト、ドゥカッセの後ろについててね」


「分かった」


 ドゥカッセに言われ、リトは後ろに隠れるように付く。

 撒き散らされる血や粘液を、ドゥカッセが槍で弾きつつ突き進んでいく。


 暴れるユエルォトルの前足が地面に付いた瞬間、ドゥカッセがその前足に槍を垂直に突き刺した。


「リト、来て」


 ドゥカッセの合図で、リトはユエルォトルの前足に刺された槍へと飛び乗り、それを確認したドゥカッセは槍を下から蹴り上げリトをユエルォトルの頭上に飛ばす。


「ブッセと同じようにするのは癪。でも、構う程のことじゃない」


 リトは狙いを定め、ユエルォトル目掛けて降下。

 見事、暴れるユエルォトルの頭部を槍で貫いた。


「どうせ、私の方が上だから」


 ユエルォトルは急激に動きが緩慢になり、自身の頭に乗るリトを残った目が見たかと思えば倒れ、その震動で周囲を小さく揺らす。


「──うおおおおおぉぉぉぉ!」


 一瞬の間を置き、周囲を囲っていた者たちが一斉に歓喜の雄叫びを上げる。


 リトはその様子を見下ろして「ふん……」と息を付き、ユエルォトルの頭から槍を抜いて滑り降りる。


「……弱い」


 リトがユエルォトルを眺めていると、アクア・リタたちがリトの元に来る。


「よくあんなに上手く刺せたな」


 アクア・リタがユエルォトルの頭を見ながら言う。


「簡単。そもそも、目なんか狙わず一撃で仕留めるべき」


「……。おいリト、それあっちゃんに向かって言ってんのか?」


 側で聞いていたブッセがリトに近付いていき、間近でリトの顔を睨み上げる。


「好きに受け取れば良い」


 リトはブッセを気に留める様子もなく、アステルの居る方を向く。


「ッ! この野朗──」


「よーしブッセ、あっち行くぞ」


 リトに掴み掛かろうとしたブッセを、パッソがすぐさま脇に抱えてドゥカッセの元へ連れて行く。


「この、離せパッソ! ──ッ!? ば、馬鹿ちょっと待て! パッソ、それだけは辞めろ! おいコラ聞いてんのかッ!」


 ブッセのは抗空しくパッソにドゥカッセの元へ連れて行かれるのであった。


 第二十五回 メモリーお姉ちゃんの豆知識!


 『ユエルォトル』について


 ユエルォトルとは、別名“大老山椒魚オオオイサンショウウオ”と呼ばれる有尾目・ミズアガリサンショウウオ科・オオミズサンショウウオ属に分類される肉食性の有尾両生類です。


 ルオロートルとは違い、幼形成熟(ネオテニー)ではなく普通に成長した個体のことを言い、“真っ当に老いる”と言う意味を名前に持ちます。


 このユエルォトルはルオロートルよりも乾燥に強く、と言っても水没星なので差程変わりませんが、水に浸からずとも湿った地面さえあれば、地面に自ら埋まって体表の粘液に水を吸収・長時間保持ができます。潤い肌ですねー。


 見た目はほとんど、皆さんの知るオオサンショウウオの巨大化版ですが、間違えてはいけないことがあります。

 それは、ルオロートルとユエルォトルは、地球に居るアホロートルとオオサンショウウオとは違い、“成長先が違うだけで種族としては同じ”ということです。アホロートルとオオサンショウウオは全くもって別の種族ですので、こんがらがってしまわないようお気を付け下さい。

 そうですね、例えるならば、同じ親から生まれた(人間)が、陸上選手と水泳選手になるようなものですかねー。


 なぜユエルォトルが突然リミナに現れたんですかねー? ふふっ、今までのお話と、この豆知識を読んだ勘の良い方はお気づきになられましたか? 分からない方、豆知識では教えませんよぉ-!

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