表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花の贖罪 笑えと貴方は言った  作者: 雛雪
第十三章
14/15

眠れる記憶

祭壇から噴き出す白い霧は、空気そのものを変質させるような感触を伴っていた。

騎士たちが即座に防御態勢を取り、リリスとエヴァの前に立つ。だが、霧は毒でも炎でもなかった。ただ、記憶をかき乱すような“懐かしさ”を帯びていた。

「これは……見覚えがある……」

リリスが呟くと、神官のような男が声を荒らげる。

「愚か者ども!これは“召喚”だ! 花は呼んでいる、お前の魂を!」

彼の言葉に呼応するように、祭壇の中央の石が微かに浮き上がり、奥底から淡く光る根が蠢きはじめた。

「リリス、下がれ!」

カインの声と同時に、彼はリリスを抱え、後方へ跳んだ。だがその瞬間――

「う……っ!」

リリスの頭に鋭い痛みが走った。

何かが、彼女の意識に入り込んできた。白い霧と共に、過去の断片が次々と押し寄せる。赤い月、祭壇に立つ自分、祈りを捧げる声――そして。

笑う“花の顔”。

『ラフレアが喰らうのは、肉体ではない――魂だ』

それは、誰の声かもわからなかった。ただ、その言葉だけが、はっきりと心に刻まれる。

「リリス!」

カインの声が遠く聞こえた。

霧が彼女の足元を這い、手首に絡みつき、まるで過去へ引き戻そうとしている。

「私……また、生贄にされるの……?」

その瞬間、リリスの瞳が真紅に染まった。

「下がりなさい!」

今度はエヴァの声だった。

彼女は震える手で剣を抜き、神官の前に立ちはだかった。普段は滅多に抜かぬその剣から、淡い青白い光が滲み出す。

「彼女には、触れさせない……あの夜のようには、もうさせないわ」

神官が嘲笑う。

「ならば問おう、エヴァ・アツィルト。貴様はあの夜、何を“代償”にしたのだ? 本当に選ばれたのは誰だった? 彼女か、それとも――お前か?」

エヴァの剣先が微かに揺れる。だが彼女は口を閉ざしたまま、一歩も退かない。

「母上!」

カインの低い声が、霧の中で響いた。

リリスはその声に、意識を引き戻された。白い霧の中に沈みかけていた足元を、カインの声が支えてくれている。

「……ごめん……少し、思い出しかけたの」

リリスがそう呟くと、カインは軽く頷いた。

「大丈夫だ。お前はもう、“一人”じゃない」

その言葉と同時に、リリスの周囲を取り巻いていた霧が、ゆっくりと後退をはじめた。

神官の表情がわずかに歪む。

「ラフレアは……まだ目覚めていない。だが次に目覚めた時――世界は選ばれるぞ。誰を喰らい、誰を赦すかは、あの“花”が決めるのだ」

そして彼は杖を地に打ちつけると、霧のようにその姿を消した。

静寂が戻る。

リリスは息を詰めながら、祭壇跡を見つめた。かつて自分が喰われた場所。けれど“殺されなかった”場所。

カインがふとリリスの方を見た。

「……お前は、生き延びたんじゃない。生かされたんだな」

リリスは、そっと頷いた。

エヴァはそれを見て、視線をそらす。

その瞳の奥には、まだ語られていない何かが潜んでいた。

神官はエヴァの心を揺さぶってます。

(っ*´•ω•`*)っ(((((((´-ω-`)))ユサユサ

言ってることが正しいとは限りません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ