第八十三話 記憶の片鱗
「さて……ではサツキさん、改めてようこそ、ホークプロフェッサー評議会へ。
まずは我々がこの世界の今後の方針を決める、『会議室』へ来ていただきましょうか」
ホークアイは歩きながら私の方を向いて話す。
前からホークアイ、私、芦名の順に並んで歩いているが、風景も少しは変わった。
土くれがたまに崩れるような土剥き出しの壁では無く、磨かれた暗く青い金属で作られた壁となっている。
しかし、照明がほぼほぼ無く、ホークアイが持つ小さなランプの明かりを頼りに進んでいた。
しかし……なんでこんなに暗いんだ?
「ああ、ところで暗すぎると思っていたりしませんか?すいません、大体の人間が照明がなくとも動けますので……」
だからと言って照明を落とす必要も無いと思うけど……
電力削減の意味もあるのだろう。
「……さて、着きましたよ。この扉の先が『会議室』です。まあ、今は会議などしていませんが……」
その扉は、私が二人か三人縦に入るほどの大きさで、顔を見上げる程だった。
木製の両開きで2、3年前に行った西洋の裁判所の扉を思い出した。
「議長、入ります」
ホークアイが扉を指の骨でコツコツと叩きながらそういうと、「入れ」とくぐもった声が扉の奥から聞こえてきた。
それを聞くとホークアイは扉を開け、一礼をした。
「連れてきたか……ローブについているバッジを見る限り……しっかりと記憶消去は成功しているようだな……」
その声の主は大きな男の姿をしていた。
男は私よりもずっと大きなローブをつけ、顔も隠されている。
私がその姿をまじまじと見ていると、芦名が後ろから歩を進め、先ほど書いていたものを男に対して無造作に出す。
「ふむ、なるほど……レベル3か……十分だ。ご苦労、さて……調子はどうだ、ホークアイ?」
「いつもと変わりありませんよ、ああ……そうそう。こちらを土産としてお持ちしたのですが」
ホークアイは何処からともなくそれを出した。
丸い形状をし、黒く細い糸が何本も生えたそれは……
「ほう、例の同盟を作っていた弱小王の首か。ふむ……いい出来だ。断面もきれいに分かれている」
男は首、と呼ばれたそれを様々な方向からじっくりとみつめる。
……なんだ?何か……あれを見ていると胸騒ぎのようなものが……
「では……遊んでみるとしようか!」
男がそういうと、ホークアイが手刀を構える。
きっとあれを壊そうとしているのだろう。別に私には関係ない。
「はっ!」
掛け声を上げ、ホークアイはその手刀を振り下ろす。
どうでもいいはずだった。それなのに、それなのに____
「……これはこれは」
私は気づけばホークアイの腕を切り落としていた。
『変化』『神速』……何故だ?私の知らない何かが、私を……




