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第六十八話 私はスキルに縛られない

 その時唐突に膨れ上がる、私のへし折った腕が。

 爆裂音とともに私は吹き飛ばされるが、エヴァーは微動だにしていなかった。

 自分への爆風まで『破壊』したって言うのか……!?


「君に負けた奴らは全員君を舐め切っていた。こんな奴一人、自分で片付けられると。

 だから僕は」


 煙が一気に晴れ、周りの風景が明らかになる。

 そこには、城を目指して進行する何千何万の兵が列をなしていた。


「全兵力をもって君に相対する事にしたんだ。あと数分でこの城はただの瓦礫となる。

 ……その前に僕が君を片付ける可能性もあるけどね」


 エヴァーのその言葉を皮切りに戦闘が始まった。

 私を取り囲むようにして現れる幾つもの黒い玉、『破壊』の実体だ。


「『時空転移』」


 私はすぐさま回避する。


 回避は攻撃に転じた。


 エヴァーの前側に転移する。


 そのまま拳を握りしめ。


「食らえ……ッ!」


 叩き込む。しかし拳はボロボロに崩れた。


「君の攻撃は僕に届かない。もっとも、仲間がいたらどうだったろうね?」


「言うなァッ!」


 空気を『変化』させすぐに拳を再生させる。


 私の拳はあのエヴァーには届かない。しかし、届かないからと言って策がないわけでは無い。

 私のスキルは『変化』によって、マナ切れの心配も無い。

 対してエヴァーは常にマナを消費し続ける。いつかエヴァーのマナが切れた瞬間、そこに叩き込む。

 それが必勝法だ。

 実際、エヴァーの『破壊』による腕の損傷が殴るにつれて少なくなっている。


「考えなしに殴りかかっても……いや、もしかして何か考えていたりする?」


 一秒間に何発もパンチを打つ私と対照的にエヴァーはまったく動かない。

 煙が晴れた青空も私にとっては曇りよりも憂鬱だ。


「もしかしてマナ切れを狙っていたり?だったら……これは知らないね?」


 エヴァーはおもむろに瓶に入った奇妙な色の液体を出すとそれを一気に飲み干した。

 その瞬間、肩から腕にかけて私の腕が一瞬で形を失う。


「火力が増した……!?」


「マナは気体に分類される。実験の結果マナの凝固点は-二十度と判明した。

 そして今飲んだのがそのマナさ。ちょっとでも身体のマナを一瞬で回復させる、まるでポーションだろう?」


 マナを回復できるのか!?まずい……このままだと……!


「まあこれで持ち堪えていれば僕の兵士たちが君の城を落とすだろうね。

 爆薬も大量に有る。それで君を捕まえたら……そうだなぁ、真空の部屋に閉じ込めて窒息死させるのもいいかも……ねッ!」


 立ち竦む私の隙をつき私の腹を『破壊』が貫いた。

 マナ切れの耐久戦法は使えないのか……!?


 次々と迫り来る『破壊』を私は避ける。


 身を翻し。


 転移させ。


 回復して。


 ああ……サラマンダーだったらなんて言っていただろうな……こんな時……。

 駄目だ、駄目だ。仲間の事は考えないって決めたのに……!こんなすぐに頭に……!


 その時、私の脳裏にフレイの姿がよぎった。『機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)』を使うフレイの姿だった。


 フレイはあれを手に入れて、今までよりも更に私を助けてくれるようになった……。

 翼になって、矛を持ち、盾にも……。


 ……待て。考えてみれば……フレイのあれは鎧の集合体だったじゃ無いか。

 それでも、フレイはそれを水晶、雨粒、ドリルあらゆる形状へ変えた。


 ……自分の能力自体の解釈を変えて、リミッターを外してたんじゃ無いのか?

 フレイのあれもスキルとにている。マナを使っているからだ。


 ヴィジョンが見える……!私の限界の先のヴィジョンが……!


「ん?なんだそれは?僕の『破壊』がいきなり消えた……?」


 私が避けた先、なんの変哲もないその場所に黒玉が入ると、忽然と姿を消し、最初から何もなかったかのようになる。


「それは『変化』で作った空間、『現実空間(リアリティヴィジョン)』。

 『変化』は新たな境地へ至ったんだ」


 『変化』は空間へ干渉する。その部分の法則を『変化』させる。


「そして……『複製(リ・プロダクト)』!」


 私が突き出した手を中心に、空間に波紋が広がって行く。

 その波紋は私達を正方形に囲むように広がっていき、新たな空間を作り出した。


「……何を……した……!?」


 エヴァーは驚愕の表情を見せる。


 無理もない、だってここは。


「驚いた?この空間ではスキルは使用不能。いくらマナを溜め込んでも無駄だよ。

 もう『破壊』で概念や攻撃を壊す事はできない」


 限界のその先、『複製』はスキルに縛られない。

 どんな転生者でもスキルを取りあげればただの一般人、ここにいるのは身長百七十センチの女とちっちゃな少年だけ。

 

「そしてここでは私も解除以外はスキルが使用不能。さぁ、タイマンと洒落込もうかい?僕ちゃん」


「舐めてくれるね……やってやろうじゃないか!」

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