第六十七話 スキルの限界
「すぐ行ってやるって言っていたのに全然来ないからこっちから来てやったんだよ。
まったく、あの邪魔なおっさんを始末するだけだったはずなのに、いつのまにか皆君にやられた……
僕も正直ショックを受けたよ」
エヴァーは言葉とは裏腹にほくそ笑んでいた。
何のつもりだ?いきなりここに来て……。
「それで、敵討ちかい?やられた仲間達のために」
「まさか、計画が狂った事にショックを受けただけさ、勘違いしないでくれ。
コウキが君に殺されたのはチャンスだったんだ。僕自身がリーダーとなる為にはね……」
異様な雰囲気に私達はその場で警戒をするしか無かった。
フレイはいつでも『機械仕掛けの神』を使えるように身構えている。
「本当に仲間が死んだ時になにも思わなかった?カスミ、ミヤビ、サトル、ネヅ……誰も君を恨んでなんていなかった。君が意見に賛同してくれない事を除いて何も君に反感を抱いていなかった」
それを聞くと、エヴァーは楽しげな含み笑いを浮かべた。
それと同時に屋上を取り囲むようにして、白煙が辺りの風景を塞いだ。
「カスミ……僕によく構っていた。結構保護者のような側面もあったけど……」
その瞬間、さっきまでエヴァー居た所から忽然と姿が消える。
「どうでもいい」
横から聞こえる方向に振り向くとウンディーネがエヴァーに身体を掴まれていた。
ウンディーネは半液体、掴まれるはずがないのに、掴まれていた。
「『概念破壊』はもう覚えた。この精霊の半液体と言う概念を壊したんだ」
「概念……破壊……!?」
「サツキ、かはっ……こいつ、かなり強いわよ……気をつけなさい、ね……」
ウンディーネがその言葉を言い終わるよりも前に、エヴァーは掴んでいたウンディーネを投げ捨て下へと落とした。
そんな……!
「ウンディーネ!あり得ない……!概念を『破壊』するだなんて……!」
「スキルは物理的な物にしか適用しない……誰がそんな事を決めた?
自分のスキルに可能な事を、自分で考えて屁理屈でも作るんだよ。
スキルの活用方法はアイデアから、何も考えつかない間はその能力にリミッターが掛かるのさ」
そんな無茶な論理、ありえない……!
スキルの解釈を捻じ曲げるなんて……!
「……それで、サトル?いっつも僕に付き纏っていたけれど、うざったかったんだよね。
自分の立場を守るためだけな感じがしてさ」
「きゃっ……!ちょっと、あんた何すん……えっ……ちょっと嘘でしょ!?待って待って!やめて!」
サラマンダーの声?そんなはずは……サラマンダーは私の腰に……無い!?
いつの間にか鞘ごとサラマンダーが抜き取られていた。
エヴァーはサラマンダーを手に持ち、今にも落とそうとしていた。
「やめろぉぉ!」
『神速』を使い私は走る。こんな距離なら一瞬で辿り着く。しかし、
エヴァーに近づいた瞬間、私の身体にヒビが入っていき、伸ばした右手がボロボロに崩れ去った。
「風化した岩みたいに身体が……!?まさか『破壊』!?」
「脚も力が入らないだろう?『変化』の回復速度じゃ間に合わないだろうねぇ」
エヴァーは私を見下し、サラマンダーから手を離す。
『変化』……!早く、早く……!
「ちょっ……!待って!そんな……きゃあああぁぁぁ!」
「サラマンダー!」
身を乗り出し、私は白い煙の中へ落ちて行くサラマンダーへ叫ぶ。
この距離じゃ追い付かない……!
「サツキ!まだです、私がサラマンダーを!」
フレイはそう言うと翼を形成しサラマンダーの元へと降下していく。
フレイが助けに行ってくれて、本当に助かった……私も、こいつとのケリを……
その瞬間、私の耳を何かが通り過ぎるような感覚がした。
なんだ……?一体……?
不吉な、当たりたくもない予感がする。
私の目の前に、突如白く光る羽が舞い散ってきた。
落ちる姿を逆再生するかのように、羽は上へ登って行く。
白い……羽?
「『概念破壊』に射程距離は無い。この僕が破壊したいと思うものを一つだけ破壊できる。」
エヴァーは何のつながりも無い言葉をいきなり発する。
何の……つながりも……?
「フレイ!?聞こえてる!?ねえ!サラマンダーは助かったんでしょ!?返事してよ!」
「仲間がどうとか君は言っていたけど、僕の仲間っていうのは残機なんだ。
君と戦わせてそこからの敗北理由を学習する。
ミヤビやコウキは君に仲間がいたから、もとい仲間とのつながりを絶てなかったから負けた」
そんな……嘘だ、今までだって何度もこんなピンチを乗り越えて……
「別に絆を断つなんて周りくどい事しなくたって良い。君のいる世界から居なくしてしまえば良いんだから」
「冗談言わないでよ、フレイ達は生きているんだ。そうに決まっている……」
王がなんだ、転生者がなんだ、私達ならそれくらい……
「声が震えているけど。そんな根拠どこにある?はっきり言おうか、君の仲間は死んだ」
っ……!フレイ、サラマンダー、ウンディーネ……本当に……?
エヴァーの左腕が抉れていた。私が握って引きちぎったからだ。
それでもエヴァーは呻きもせず、こちらを見据えていた。
「今だけは、フレイ達のことを忘れる。お前を徹底的に潰す為に」




