第六十六話 爆発
夏のお祭りで嗅いだ事があるような……この刺激臭……。
……花火の匂い?
「これって……黒色火薬!?」
気づくと同時、窓から小さな玉のようなものが投げられる。
動けないサラマンダーを取り、即座に部屋を脱出するために飛び上がる。
しかし。
「間に合わない……!」
炸裂するその爆弾を背に受け、私は爆風で弾き飛ばされた。
爛れる背中を回復させ、私の目の前は白い煙に包まれる。
黒色火薬。
人類の三大発明の一つである火薬の原初、黒く輝くその見た目より黒色火薬という名が付いた。
現代でも花火として使われる事があり、爆発力は申し分の無い威力。
しかし、その激しい白煙の為に軍事としては使われる事が減っていった。
そんな物がなんでここに……?転生者の物か……?
でも、この白煙による目眩しも考えているとするなら……きっと合理性に富んだ人間なんだろうな。
「サツキ、ちょっと大丈夫!?これ煙でしょ!?」
「うん……早めに出ないとまずいね、窒息しちゃう」
スキルをいくつか併用すれば煙を晴らす事もできるけど……正体不明の環境でのマナ切れはとても危険だ。
あまり無駄遣いもできない……。
『万物理解、脱出マップを出して』
『最短ルート演算完了。意識フォルダに表示されるようにします』
しばらくいくと、そこは屋上だった。城の多くが赤い金属で作られた外壁だったが、そこだけは石で作られていた。
数平方メートルの地面には白煙が立ち昇る穴が二つあった。
一つは私達が出てきた穴、もう一つは……。
「よいしょっと……フレイ、出たわよー。すぐ引っ張るからー」
穴から、ウンディーネがひょこりと出て来る。伸びている右手がメジャーのように巻き取られ、そこにはフレイがくっついていた。
「こんな所があったんですね……って、サツキ!?どうしてここに来ているんですか?」
「どうしてって……脱出する為に探していたらここに来ただけだけど……」
まさか……とでも言うような顔をするフレイの横でウンディーネが不思議そうな顔をする。
「おかしいわね……身体を城中に伸ばしたけど、出口はここ以外閉じられていたわ」
閉じられていた……?こんなバカでかい城全ての出口を……?
その時、カランという音が足元で鳴った。
見ると、そこには先ほどと同じ形の……。
「またか……!転移で飛ばしてやるさ!」
私が数十メートル先の空中へ転移させると、それと同時に爆発が起こった。
しかし、先ほどの威力とは比べ物にならないほどの威力に変わり私の頬を爆風が軽く撫でた。
「そんな……この威力は……!」
「無煙火薬さ」
私が驚きのあまり口を開けていると、後ろから声が聞こえてきた。
黄緑色と黒の服、二つに結んだ蛍光色の黄緑色髪。
「エヴァー……!」