第五十五話 潜入開始
フレイから聞いた話だと、ここは地下深くの場所のようで、今まで潜入した場所と比べてかなり条件が違う。
周りを見渡してみても確かに薄暗い印象が強く、壁や地面は岩が剥き出しになっていた。
所々にある暖色系と言うべきか……白熱電球のような明かりを辿って探索をしている。
「にしても……ここかなり簡素な作りだね。ちょっとまずいかも……」
私はフレイと二人でウンディーネの頭の上に乗りながら呟く。
私が何故そう言うのか、それは彼女の潜入方法にある。
以前ウンディーネが話していたが、敵からバレないようにするため、私達は液状化で小さな溝や穴に潜り込もうとしていた。
しかし、こうも溝も穴も無いと潜伏もできない。
と、ウンディーネはそれを分かっていたのか平然とした態度のまま歩き続ける。
「それくらい問題ないわよ。もし誰かと鉢合わせるようなことがあったら……」
その時、突如曲がり角で軍服を着た男が現れた。
男は慌てて私たちから距離を取り、ピストルらしき銃を構えた。
「動くな!侵入者め……」
男はピストルを構えたままこちらへジリジリと歩み寄る。
しかし、ウンディーネは慌てるわけでもなく、相手を侮るように笑みを浮かべるとその少女の姿をした外見を液状へと変え、男へと高速で近づく。
驚いた男はピストルを二回発砲したが、向かう銃弾はウンディーネの体に取り込まれスピードを失う。
そのままウンディーネは身体を男の首に巻き付けたかと思うと一気に締め上げ、男は地面に顔を打ち付ける事になった。
この時間僅か三秒。私達はウンディーネに取り残されていたので地面にいたが、ウンディーネはこちらを向いて得意げな笑みを浮かべた。
「すぐに倒して動けなくしてやるわ」
ウンディーネの早業に私は感嘆の意を覚えていた。
探索はまだまだ続く。
「ところで、ここ最近スラ吉を見ないけど」
最近はよく会話に挟まっていたスラ吉が出てこなくなった気がする。
ウンディーネが乗っ取ったとなると私も流石に黙っていられないが、実際はどうなのだろう。
「それが……最近すっかり眠っちゃって。冬眠……なのかしらね?」
ウンディーネも不思議に思っていたらしく、首を傾げながら適当そうに答える。
「今は夏ですよ……でも、確かにスラ吉が出てこないのは少し寂しいですね。早く戻ってきてくれるといいのですが……」
フレイが私の隣でツッコミを入れる。
スラ吉が眠っている……何か理由が有るのだろうか……?
「あら、それよりもなんか扉が有るわよ」
ウンディーネが指す先には、鉄製の扉があった。
近日文字数が少なく申し訳ありません……!