第五十四話 病魔の拡大
私はエルゲの言葉を聞き、すぐさま病室へと向かった。
状況を理解するために、無知をできるだけ減らすために。
「うぅ……苦しい……」
「誰か……誰か水を……」
しかし、その先には身体の苦しみに喘ぐ何人もの人々がいた。
車椅子に乗っていた私の足が若干震え始める。
「な……なんだよこれ……」
「恐らくはサツキさんと同じ病魔に侵されたのでしょう。
普段から医者は倒れた者達に手いっぱいなのに、ここまで倒れてしまっては十分なケアは難しく……」
あの仮面男が言っていた言葉はこういう意味だったのか……!?
私がもっと警戒をしておけばこんな事には……!
「げほっげほっ!」
そう考えていると、突如として喉から咳がこみ上げてくる。
咳は止まらず、何度かしているうちについに口を押さえていた私の手に血がついた。
「……血?」
一瞬困惑し、頭が真っ白になった後、私の意識は黒い闇へと葬られた。
目覚めると、そこはまた私が寝ていたベッドだった。
横にはいくつもの機械と管。そして管の先には私の腕があり、刺さるようにして私に繋がっていた。
「良かった。起きたのね」
突如声が聞こえ前を見ると、そこにはサラマンダーがいた。
「……サラマンダー、私どうしてたの?」
私が問うと、サラマンダーは驚いたようなそぶりを見せる。
「覚えてないの?まあ……意識もなかったししょうがないわね。
あの仮面が言っていた通り、日にちが経つにつれてあんたの症状は酷くなっているわ。
血を吐くようになったのもその段階と思って問題ないし……」
サラマンダーは少し言いづらそうにしながら説明をする。
だが、私はその意味を理解していた。
「つまり、私はこのままだと確実に死ぬし、症状の途中段階で身動きが取れなくなる可能性もあるって事でしょ?」
私の言葉にサラマンダーは悩ましげに身体を動かすと、刀身を曲げて頷くようなそぶりを見せた。
「……やっぱりね、だったらすぐやるしか無い。ウンディーネもいるんでしょ?
今から作戦開始だ!」
私はそういい、意識を子機へと回す。
目の前には、一人で私を抱えているフレイがいた。
「……あれ?フレイ」
私の声を聞くと、フレイはひゃっ、と声を上げて若干飛び上がる。
結構長い時間一人だったので突然聞こえた声に驚いたようだった。
「も、もう……サツキですか……あまり驚かせないで下さい……」
フレイが恥ずかしそうにしながら抗議をする中、私は周りを見渡していた。
ウンディーネを出せるか計算していたのだ。
私はあらかた計算を終えると、再び意識を戻した。
「……よし、座標固定。ウンディーネ、準備はいい?『時空転移』であっちまで君を飛ばす」
私の言葉を聞くと、ウンディーネは得意げにしながらサラマンダーの方を見る。
私もサラマンダーの方をみたが、ウンディーネとは別にウインクをした。
“私に任せて“という気持ちを込めて。
「さあ、行くよ!『時空転移』!」
私の言葉とともに、魔法陣がウンディーネを囲むように現れる。
そして一瞬強く光ったかと思うと、次の瞬間にはウンディーネは消えていた。
「……じゃあ、私も行ってくるからサラマンダー、いざという刻は頼むよ!」
私の心からの言葉に、サラマンダーも自信を持って頷いた。




