第四十六話 空中戦
「ぬぅぅぅっっ!小癪な女め!」
戦いの舞台は部屋から空中へ。空から落ちて行く私とミヤビはさながら流れ星のようだった。
ミヤビは落ちないようにと翼を呼び寄せるが、そんなものは私達の前には関係ない。
同一の『時空転移』で呼び寄せた瞬間に別のところへと戻す。
だが落ちて行くのは私も同様だ。この時間はせいぜい十数秒。だがこの十数秒で決着が着くのだ。
「いくら予防線を貼っても無駄だ!同じ『時空転移』なら私は全て元の場所に返せる!
ミヤビ!お前の道は落下だけだ!」
私は空気の異常な圧を身体の一身に受けながら叫ぶ。
「くっ……貴様!妾もろとも……落ちて死ぬ気か!?」
「お前がそうしたいのならそうすればいいさ!どちらにせよ、死ぬことに変わりは無い!」
ミヤビは恐れと屈辱を抱いたのかもしれない。それほどに彼女の顔は怒りに歪み汗をかいていた。
この会話の間にもスキルの出し合いは止まらなかった。
銃、クッション、地面への水……だが、私はそれを全て返してのけた。
そしてミヤビの言っていた妾もろとも……それは的をいた言葉だ。
ミヤビは『時空転移』へマナを全て注ぎ込み発動している。
それが意味するのは、対処するには同じく全力の『時空転移』を使うしか無いと言うこと。
つまり私は『神速』も『万物理解』も『変化』も使えない。
ミヤビが最後までこれを続ければ私は確実に死んでしまうだろう。
……しかし、抜け道がないわけではない。私はさっきこう言った。
『どちらにせよ、死ぬことに変わりは無い』と。……そう、ミヤビの出方によっては私が生き残る道もあるのだ。
その時、ミヤビの懐から何かが落ちる。
それは『時空転移』で一瞬出てきた岩にぶつかって跳ね返りミヤビの目の前に出てくる。
「これは……!」
それを見ると、ミヤビは目を一瞬輝かせ口元をニヤリとしてそれをキャッチする。
「くふふ……サツキ、やはりお主は偽善者じゃよ。言うじゃろう?『正義は必ず勝つ』と!」
そう言い、ミヤビはそれの引き金を引く。
それはピストル。先程ミヤビが呼び寄せた物だった。
「くっ……!だったら『変化……ぐぁっ!」
『時空転移』意外のスキルを私が使ってしまった瞬間、銃の発砲とともに幾つもの石柱が私にぶつかり身体を貫く。
「く……くふふ……妾の勝利じゃ。太陽も妾を祝福しているよ……う……」
ミヤビは歓喜に満ちた表情を浮かべ、空に上る太陽を見上げようとするが、逆に目を見張ることになってしまった。
太陽を背に輝くシルエット。大きく広がる白き翼を持ち、槍を構える姿がそこにはあった。
「はは……物語の正義には仲間がいるもんだよ……言ったろう?本当の仲間だと。身体なんていくらでも治せる。難しいのは心の方さ」
私は串刺しにされながらも血を吐きその言葉を言う。
打ち出された断罪の槍は、空を落ちまいとする者を地へと打ち付けた。
それと同時に、私をその場に止まらせていた石柱も姿を消し私は空を落ちて行く。
「サツキ!」
しかし、私はフレイに支えられて、落下をすることはなかった。
「ふふ……フレイ、ナイスだったよ。本当にありがとう」
そのままゆっくりと降下し、私達二人はミヤビが突き刺さる地へと降り立った。
ミヤビの落下によって盛り上がった近くの岩を『変化』させ、私は一応の応急処置を体に施す。
「サツキ、まだ生きていますから……私はあまり苦しむ姿を見たく無いので手短に」
フレイの悪戯げな声を聞いてミヤビの方を向くと、確かに腹部を貫かれながらもまだ生きているようで痙攣をしていた。
「正直だねぇ……でもそれが今は一番さ。さて早速石を____」
その時、突如黒い影が目の前に現れた。私の目がそれを確認し、脳に行き着くまでのその間にそれはミヤビの首を切り落とした。
その時間、わずか0.05秒以内。ミヤビの首はごろんと転がり、地にその姿を覗かせた。
「いやはや、良いショーを見せていただきました。私、楽しい物を見た後にはお土産が欲しくってですね、今回はこちらを貰って行きますから」
その男はまるで野球観戦が終わった後のような軽快さで喋り、ミヤビの首を手に持って私たちに背を向ける。
「ちょ……待って!いきなり来て首切って……なんなんだよ一体!?」
私がそう聞くと、男はにこやかな顔でこちらへふりかえる。
よく見てみると黒いマントを羽織り、着ている服は茶色のスーツだった。胸には鷹の意匠が施されたバッジらしき物をつけシルクハットまで被っている。
男は片眼鏡を少し上に上げて語り始めた。
「これは失礼。私、ホークプロフェッサー評議会の副議長、ホークアイと申します」
副議長……!?しかも今評議会って言ったか!?転生者とこの世界の人間からなる多くの国のまとめ役になっているって言う……。そこの副議長か?
「おやおや?肩が震えておりますが寒いのですか?でしたらこちらのマントを……ああいや、そう言うわけではなさそうですね」
私が肩を少しだけ震わせていたのを見破ったのか……!?
それにこのどことなく漂う気配、只者じゃ無い……!
「……喋れないようですね?そちらのお連れの方も。では、またいつかお会いしましょう。それまではお元気で」
ホークアイと名乗ったその男はそれだけ言うと目の前から消えた。
消えた瞬間、私達は大きく息をつき、その場に座り込んでしまう。
「サツキ……今のは……」
「うん……かなりやばかった。でも、私達の……いや、私の目的だね。いつかは倒すことになるさ」
私がそう言うと、フレイは少し動けるようになったのか身体を立ち上がらせ私の肩に手をおく。
「いいえ、私達です。倒せますよ。この四人なら」
フレイのその言葉に、私も笑みを浮かべ思いっきり立ち上がる。
「よーし!じゃあ皆いったん帰ろう!道のりは長いけど、フレイ、頼むよ!」




