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第四十五話 本音

 ミヤビは私達の方へゆっくりと歩み寄る。一歩一歩を噛みしめるように、地面がへこむほどに。


「フレイ……どうして私を助けに来たの?聞いたんだよ、君がミヤビに会ったことを」


 だが、私はそれよりもフレイが来たことが不思議で堪らなかった。

 フレイは擦り傷ができた手で動けない私を自らの方に寄せ、微笑んだ。


「確かに……私はどうすればいいのか分からなくなって、一度はあなたに当たってしまいました。

 でも、仲間なら助けに行かなくちゃいけないんです」


 フレイは俯きながらそう言う。以前の私なら……納得していたかもしれない。

 けど、むしろ私には怒りが込み上げてきていた。


「仲間仲間って……フレイ、それは違うよ!私は皆に隠し事をして、仲間って言って無理矢理連れてきて……!仲間なんて、フレイ達を縛る言葉にしかなっていないんだよ!」


 私の叫びと同時にすぐそこまで来ていたミヤビが大鉈を振り下ろす。

 しかし、激しくぶつかり合う金属音と共にサラマンダーが火花を散らしていた。


「っ……それは……」


 フレイは私の言葉にたじろいで言葉を濁す。

 サラマンダーがミヤビに押し負けこちらに弾き飛ばされると、少し笑うような声を出した。


「サツキ……あんたほんと鈍感ね……。あーもー、ちょっと刃が欠けちゃったじゃない……」


 サラマンダーが弾き飛ばされるとすぐにウンディーネがミヤビに対応する。

 スライムの身体をミヤビの肉体に這い寄らせ攻撃の妨害をしていた。


「それって……どういうこと……?」


「だからフレイは……フレイ、自分で言ったほうが良いんじゃないの?」


 サラマンダーはフレイの方を向き声をかける。

 ミヤビはウンディーネが対処してくれているが、いつ防ぎ切れなくなるかわからない。


 それを承知していたのかフレイは頬を赤らめ葛藤する様子を数秒見せると、赤い顔のままではあったが目をしっかりとこちらに向け話そうとする。


「そ、その……私、サツキを……か、家族みたいに……思って、ます……」


 私はその場で固まった。思考が止まり、何を言っているのか理解できなかった。


「妹のような姉のような……私、家族以外の人に初めて会ったのがサツキだったんです」


 妹、姉と聞いて意識が戻り挙動不審と思えるほどに頷き続ける。


「まだ会って一ヶ月程度ですけども、昔から一緒だったみたいに感じて、サツキと一緒にいると安心できるんです。だから……」


 私はその言葉を聞いて照れ臭さではにかむ。

 家族、か……。そこまで大切に思ってくれるのなら、私もその想いに応えなきゃいけないね。


 その時、青いジェルの欠片のような物が足元に飛び込む。

 欠片は部屋の至る所から集まりウンディーネとなった。


「話は終わった?もう流石に抑え切れないわよ」


 ウンディーネがここにいると言うことは……。

 前を向くと、そこには髪を乱れさせ、目元が暗くなっているミヤビが苛立った顔を見せていた。


「はあ……はあ……粘液生物にマナの塊が乗り移っただけの物が……。

 まあ許してやろう……覚悟はいいかの?偽善者共」


 そのミヤビの言葉と共に、私達は立ち上がる。

 目に闘志を燃やし、手には力を。フレイの動脈に刺さる棘はマナを引き出し始める。

 槍を幾本も空中に浮かばせたフレイを見て、私は少し笑う。


「家族って言うのはまだ恥ずかしいかな……代わりに、今度こそ本当の仲間だ!」


 フレイも私へ向かって微笑み、槍をミヤビへ向かわせる。

 槍は分裂し、ミヤビを一度通り過ぎる。だがミヤビはそれを予見していたのか、後ろへ振り返り槍をその場から消去した。


「そんな事は知っていたさ!だから、私はフレイの援助として動く!」


 だが、私はそれを知っていた。タケルやコウキを知っているなら、どうやって死んだか、それくらい知っているはずだ。


 私は『神速』と『怪力』、更に『痺れ毒』を発動し背中がガラ空きのミヤビへ叩き込んだ。


「ぐぬあぁぁっ!」


 その威力は凄まじく、ミヤビを壁まで吹き飛ばした。


「な……何故……?お主はマナ切れになったはず……」


 ミヤビは痺れる身体を上半身だけ上げて声を上げる。


「フレイの『機械仕掛けの(デウス・エクス)(・マキナ)』はマナの塊、さっき消えたのは転移じゃなく、マナとしての『解凍』だったのさ」


 そのマナを回収すれば私もスキルが使えるようになる。

 お互いの欠点をお互いの長所で補う、それがこれからの私達だ。


「くっ……舐めた真似をぉぉっ!」


 痺れる身体をミヤビは無理矢理奮い立たせ、こちらに向かってくる。

 しかし、その進行はフレイの壁によって塞がれる。


「サツキ!『時空転移』は使えますか!?」


「もちろん!行くよフレイ!」


 フレイは私の言葉を聞くと、壁を捻じ曲げミヤビを閉じ込める球体へと姿を変える。

 それに応じるように私は覚えたての『時空転移』を発動させ、ミヤビを含めた私達全員をある場所へ転移させる。


「フレイ、ありがとう!仕上げだ、行くよ!」


 フレイは頷くと球体を翼へ変え自分の方へ戻す。

 ミヤビは球体から解放されたが、自分のいた場所に驚くことになった。


「な……!こ、ここは……!」


「私の城の上空さ!決着をつけるぞ!ミヤビ!」


 落ちていくミヤビを私は追い上げて行った。

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