第百四十二話 精霊の正体
「えっ……⁉︎ サラマンダー……今、なんて言ったんですか……⁉︎」
私はサラマンダーの言葉が信じられず、聞き間違いではないかと再度確認してしまう。
人型のウンディーネだって流体の身体を保ってあの形になっているけれども……あれは、水なんて滑らかな物ではない。
サラマンダーのような個体……いや、むしろ金属だ。
「だから、あれは精霊よ。体の中に宿っているマナが確実に私たちの物と一緒だし、それにあんな尖りだらけの複雑奇怪な見た目は無機物の物としか思えないわ」
本当に、あれが精霊なのか……?
……しかし、私も活動する精霊というのはウンディーネとサラマンダー以外見たこともない。
その二人でさえ水と炎、個体と液体、外見的な共通点は全くと言って良いほどない。
だったら、あれも精霊……かも知れない。
そんなことを思っていると、その精霊は私達が話し終わるのを待っていたのか、恐る恐るという様な雰囲気で私達の方へ近づき。
「えっと……ごめん、私の仲間を知らないかな?」
「……」
しかし、まだ油断はできない。何しろ唐突に現れた存在だ。
何か不意打ちだって狙ってくる可能性もある。
私はそう考え、首筋に棘を突き刺す。
私の意思に反応する様にして光が背後に現れていき、『無限連撃』をいつでも放てる様に態勢が整えられる。
「ちょっ……フレイ、何もそこまでやらなくたって___」
「何の関係性も無い人間に出会ったらひとまず疑うべきです! まずはこの精霊が何者なのかを知ってからで無いと……!」
黒い精霊は橙色の目を少し不安げに曲げる。
いくら女神がいる島だろうが、こんな簡単に精霊が現れるはずがない。何か、理由がきっとあるはずだ……。
その時、サラマンダーが少し困惑気味で私に向かい。
「何の関係性も無いって……あんた、もしかして気付いてない?あの子の特徴、ちょっと見直して見て?」
「……? 特徴……?」
言われるがまま、私はその精霊の見た目をもう一度なぞらえてみる。
黒い金族のような体に、機械のような複雑な見た目。それに……橙色に光る目……?
「橙……オレンジ……? あっ! もしかして、あなたは⁉︎」
そこで私は見当がついた。言われてみれば確かに、繋がりはあった。
殺されかけては忘れることなんてできないと思っていたが、まさか正体がこれとは……!
「ブリュンヒルデ、そこにいたか」
そんな時、黒い帽子をかぶった私と同じくらいの身長の、彼がいた。
昨日持っていた銃は、彼へと向かっていく。
「あ! コウヤ、そこにいたんだ!」