第百四十一話 新精霊
*
ふと、目を開けると眩しい日の光と青空が視界に映った。
……ここはどこだったか。
そんなことを思って仰向けになっていた体を横向きに転がすと口の中にジャリジャリとした感触が入ってきた。
「うぇっぷ⁉︎ な、何ですかこれ……⁉︎」
体をガバッと起き上がらせて口の中に入れてしまったものを吐き出すと、それは少し湿ってはいるが、サラサラと私の手から落ちていく。
「砂……? ……あ、そうでした」
そこで私は、自分がオルゲウスにつき、知らぬ間に砂浜で眠っていたことに気がついた。
私と同じように、イレティナも仰向けに大の字でぐっすりと寝ている。
海も夜とは打って変わって、波が立つとそこが日に照らされ爛々と輝いていた。
久しぶりに見る海が、こんなに綺麗だったとは……そう思いながら見ていると。
「……? あれは何なのでしょう……?」
何か、海の遠いところに黒い影が見える……しかも、どんどん大きくなっているような……
いや、違う。
「こっちに向かっている……?」
不審に思い目を凝らすと、それは黒い影ではなく、全身が漆黒の、人間の形をした何かだった。
しかも、スピードも増している。みるみるうちにこちらへ近づいて来て、後数秒もしないうちにこちらへ来てしまいそうだ。
「っ……! 何かは知りませんがとにかく、『機械仕掛けの____」
しかし、首筋に突き刺そうとした一歩手前で、その黒い巨影は私の上に躍り出て影で私をすっぽりと包み込む。
まずい……!攻撃が来る……!
しかし、それは私を通り過ぎ、次の瞬間には大量の粉塵を上げて砂浜に着地していた。
「ゲホッゲホッ……! な、何だったんですか……?」
連続する唐突な出来事に若干頭が混乱気味の中、先程まで私が警戒していた黒いそれの姿が砂の煙が晴れて徐々に明らかになっていく。
「ふー……あちこち故障だらけだ。射出口もボロボロだしエネルギーコアも疲弊している……全く、コウヤももう少し丁寧に扱ってくれれば良いのに……」
そんな言葉をぶつぶつと、流暢に話す少女のような見た目をしたそれは身体全体から金属のような光を発し、目をオレンジ色に光らせていた。体を飾る様々な物体は端々が鋭利に尖り、それだけでも武器になりそうだが、なによりも、全てが浮遊していた。
「……」
これは……一体何なのだろうか。まるで異質だ。警戒すべきか……?確か、サラマンダーが懐にいたはず……
自分の体のあちこちを触りながら唸る機体のそれは、まだこちらに気付いていないようだったので、こっそりとサラマンダーを懐から取り出して小さな声で聴く。
「サラマンダー……如何するべきでしょうか、謎の存在が現れました」
「ああ、あれね……」
サラマンダーは、変に落ち着いた様子で喋る。奇妙に思い、私は少し首を傾げると。
「えーっと……落ち着いていますね」
「だってあれ、精霊よ?」
サラマンダーがそんな言葉をポツリと言うと、謎の存在もこちらを振り向いた。




