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リリアナが退出した会場での出来事です。
「ほぅ、貴女が愛し子?」
メリアとマリエヌは他国に自分達の売り込みをしていた。
「ええ、私の娘です、マリエヌが貴国に嫁いだら精霊の加護があり、益々国が豊かになりますわ」
マリエヌも前に出て、一緒にいる王子を見つめる。
(ウェズリ王太子殿下より、容姿は劣るけど、ワイズフォルト国よりはお金持ちだわ)
「父上、彼女は愛し子ではありません。」
近付こうとするマリエヌを制してキッパリとそう告げる。
「何を仰ってますの……」
自分を愛し子ではないと言う王子を忌々しげに睨む。
「あなた方は精霊が見えないのですか?」
王子は空中に手を伸ばす。
「えっ?精霊が見える?」
2人は王子の手の先を見るが何も見えていない。
「先程、退出されたこの国の王太子殿下と御婚約されたリリアナ嬢が愛し子様ですよ」
「何ですって!?」
メリアとマリエヌは驚いて声を上げた。
「会場にいたほとんどの精霊が一緒について出ていったよ」
「何を騒いでいる、国賓らしくできないなら、出ていけ」
第二王子がマリエヌを鬱陶しく見ると、横にいるルミナを抱き寄せた。
「では、この女には精霊がついておりますでしょうか?」
マリエヌはルミナを睨み付けた。
この女呼ばわりされ第二王子とルミナは顔を歪めた。
「いいや、精霊はまったくいない。」
余りにも不躾な態度に、王子はそう言い放つ。
「!?」
第二王子は目を見開き、ルミナを凝視し、少しずつ離れた。
「騙したのか……ルミナ、私を、国を……」
「レイナード様」
第二王子は2人の王族に同じようにマリエヌの事も聞いた、答えはルミナと同じだった。
「では、なぜ?何故あの時、精霊の加護が?あの光と結晶は何だったんだ」
目の前で起こった精霊の奇跡を思いだす。
ルミナとマリエヌに降り注いだ天からの光と結晶、上を見上げた先には窓辺にリリアナが居たことを思いだす。
「まさか、まさか私は……何て事をしてしまったんだ」
その場に崩れ落ちるレイナードの背に優しく手をかける。
「レイナード」
その声に顔を上げると、オズワルドが手を差し出していた。
手をとり立ち上がったが、肩を落とし項垂れている。
「兄上、私はとんでもない間違いを犯してしまいました。」
「此れから国の為、民の為にどうあるか、考えながら豊かな国を築いて行こう。私も手伝う。きっとリリアナ様も許してくれるよ」
「兄上」
それからは国に戻ったレイナードはルミナと婚約を破棄した。知らなかった事とはいえ、王家を謀った責任をとり、セリオド伯爵家は男爵に落とされ、リリアナを虐げていた、メリアとマリエヌは平民へと落とされた。




