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口の数

 ある日にんげんは聞きました。

「魚の姉には二つ口があるけど、どっちで乳を飲むの。」と。

 それに対して魚の姉はにんげんを自分のヒトデの足の上に座らせてこういいました。

「実は私にはもう一つ口があるのよ。どこだと思う?」

 にんげんは悩みました。ぱっと見にんげんで言うなら頭の上になる部分の魚の口と、魚の顎に張り付いている平たい顔の小さな口、この二つしか見当たりません。

しばらくうんうんとうなっていた人間ですが魚の姉を見上げながら言いました。

「分かった!お腹のところが実は開くんだ!それでがばって!いっぱい飲むの!」

 その答えに魚の姉は小さく頭を横に振ると、にんげんの髪を手で梳きながら言いました。

「私のもう一つの口はね、ヒトデの足の裏側にあるのよ。私はそこからも乳を飲めるの。ね、三箇所でしょう?」と。

それを聞いたにんげんは、「すごいすごい!口が三つなんて魚の姉は一杯食べるんだね!」と興奮した様子で魚の姉に言います。

 でも魚の姉は、「でも私、そんなに食べているという感じはしないわ。この湖にはお母さんの乳がよく染み込んでて中を泳ぐだけで、私お腹一杯になった感じがするもの。」と言ってことさら大食いなわけではないと説明します。

 でもそうするとにんげんには新たな疑問が浮かんできます。

「あれ?湖に乳が染み込んでて、泳いでお腹一杯になる感じっていうことは……乳の日って湖の中の兄弟にはあんまり関係ないの?」

 これはもっともな疑問ですが、魚の姉はちゃんとその疑問に対する答えも用意していました。

「あくまで感じ、なのよ。確かに乳の日に顔を出さなくてもそれなりに満たされるわ。でもやっぱり乳の日にお母さんから乳を貰うのが一番よ。鯱の姉は大きすぎて畔に出てこられないけど、やっぱり乳の日とは別に、お母さんに言って乳を貰っているのよ。」

 そう説明されたにんげんは感心しました。

お母さんの乳は凄いんだなぁと。

 それと同時に、皆が太陽と月が三十回追いかけっこするたびに一度貰っている乳を、日に三度貰っている自分は物凄い欲張りな食いしん坊なのではないかと思いました。

でもそれを魚の姉に言うと、「にんげん、貴女は一回に飲む量が少ないのだからそんな事気にしなくて良いの。むしろ一回で飲み貯め出来ない分、小食かもしれないわ。」と言って優しく笑われました。

それを聞いてにんげんは安心したのか、魚の姉に体を預けて髪を梳かれるがままになりました。

 そんな訳でにんげんの不安はなくなったわけですが、実際乳の日には乳の雨として乳を雨と降らせる中に兄弟達は飛び込んでいって乳を飲むのですから。

にんげんの心配は杞憂というものでしたとさ。

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