デビルフィッシュ
にんげんは寝物語に魚の姉に、「湖の深いところで見る烏賊の兄は本当に綺麗。光が体を駆け巡ってまるで光の塊のよう。」と語られました。
そうしてかけめぐる?と聞く一幕などもありましたが、とりあえずにんげんは半分寝ぼけ眼で言ったのです。
「烏賊の兄、見てみたいなぁ」と。
こうして魚の姉が数日間留守になることに決まりました。
なぜなら魚の姉の泳ぐ速さでは単純に烏賊の兄のところまで数日掛かるからです。
途中で鯱の姉を呼んで深いところまで送ってもらってもそのくらい掛かるのですから、烏賊の兄がどれほど深い場所に住んでいるのか検討も付きません。
そうして、魚の姉の優しい声が聞けなくて寂しくなってから太陽と月が五回ほど追いかけっこをした後のある日。
湖にはにんげんには聞こえない声が響き渡ったようでした。
犬が「魚の姉が帰ってくる。烏賊の兄が今日の月の出る時間に来るから起きていて、だとさ。」と言ったのだから間違いないでしょう。
はたして、魚の姉は夕方に帰ってきました。
魚の姉は久しぶりに会う事に歓喜するにんげんの腰から下に抱きつきつつ、「良い子にしてた?犬に泣かされてない?ちゃんとご飯は食べてた?」などと聞きました。
にんげんは一つ一つの問いに、「うん。ないよ。お母さんの乳はいつも美味しい!」などと答えていました。
それらが一段落すると、魚の姉は「そうそう、烏賊の兄はとても大きいから。ふふ、きっとにんげん驚くわ。」と言いました。
そうして太陽が山の陰に隠れる時間になると、湖の中で輝くものがすーっすーっとにんげん達のいる岸辺に近づいてくるのが見えました。
それは見る見る大きく。あっという間に犬の大きさを越え、ある程度近づくと水の中から三角の頭らしきものが湖の中から立ち上がり、そこからはのろのろと近づいてきました。
にんげんは「魚の姉、あれが烏賊の兄?光ってる!ほんとに光って……ええと、なんかぼやっとしてる!」と聞いて、魚の姉に、「そうよ。あれが烏賊の兄。良く見て、体の光はちらちらと動いてるでしょう?あれが駆け巡るということよ。」と教えてもらうと、「うわー!駆け巡ってる!ぐんぐん光ってる所と光ってないところが入れ替わってる!」と興奮して叫びました。
それからしばらくして、のたのたした烏賊の兄はにんげんの目の前に辿り着きました。
「やあにんげん。俺の光が見たいって?それでどうかな?俺の光は。」と聞く烏賊の兄ににんげんは、「凄い!凄い!なんで光ってるの!?私も光りたい!」と答えました。
その言葉に上機嫌になった烏賊の兄は「そうかそうか凄いか。俺と同じになりたいってのは嬉しいが、悪いなぁ。お母さんがいうには俺の体には発光器官という、光を放つさい……細胞とかいったかな?が生まれつきあるんだそうだ。だから生まれつき光ってない奴は光れないんだ。悪いな。」と答えました。
それを聞いてにんげんはがっかりしましたが、その後は光る烏賊の兄は暖かいのかな?とか、烏賊の兄べちょべちょしてるね!とか色々体験して、楽しい一夜をすごしたようです。
ただ、触腕で持ち上げられた時には「いたっ、痛いよ烏賊の兄!キュウキュウ吸い付く変なのが痛い!」と大騒ぎして、体に吸盤の跡が残ってしまったようですが。




