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自由

 ある日にんげんと犬が犬が一足で乗り越えられないくらい広い川の傍を歩いていた時の事です。

にんげんは行く手に不思議なものを見つけました。

 不思議なものがあったらまず犬に聞くのがにんげんです。

まあお母さんがいたらお母さんに聞くのでしょうが、この場にはいないのでにんげんの知識の源はかなりの割合を犬が占めます。

 というわけで犬から帰ってきた答えは簡単なものでした。

「あれは海狸の兄の作った堤だ。海狸の兄は俺でも噛まれると痛い鋭い歯で木を削り倒して川を堰きとめてなにかしようとしているらいいんだが、これがうまくいかない。」

 にんげんはなんで、と思いました、だって今見ているつつみは何本もの大きな木を組み合わせて作ってあって、なんとも頑丈そうだからです。

そこでにんげんは、「どうしてうまくいかないの?」と聞きました。

すると犬は「海狸の兄の堤な、木でできてるだろ。だから油断すると、というか猫熊の兄に見つかったりすると、食われる。海狸の兄は気にせずまたそこらへんにある木を齧り倒して作り始めるんだが、またある程度形になると猫熊の兄が食べてしまう。だからあの堤が完成したらどうなるのか、誰もしらない。」と答えました。

 にんげんは、「猫熊の兄は食べないでいてあげるっていう事はしないの?」と聞きました。

犬はそれを涼しい顔で「そうだな。基本兄弟は自由だ。喧嘩もするし、それで何か決まりごとを作ろうとしたりもするがそれが守られる事はあんまりない。だから猫熊の兄も他の熊の兄が蜂を食べる量の調節をとか言ってたが、巧くいってない感じだっただろう。そんなものさ。」と言います。

にんげんはちょっと難しい顔をして「兄弟を本当に縛るなんて、お母さんくらいしかできないんだね。」と口にしました。

犬は「そうだな。お母さんのいう事なら皆ギチギチに締め付けられるような決まりごとでも守るだろう。だからお母さんは逆に何も言わない。俺達を縛りたくないからだ。俺達を自由にさせようという心があるから、何も言わない。優しいよお母さんは。」と言い添えました。

 そして二人はまた未完成に終わるだろう堤を見ながら歩き始めました。

にんげんは、兄弟もお母さんの言葉なしで決まりごと守れるようになればいいのになぁと思いながら歩きましたとさ。

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