霊感?
ある日にんげんは森の中で木の枝からぶら下がる黒い物を見つけました。
にんげんは見たことの無い果物かなにかかと思い、犬に、「あれなに?食べ物?」と聞いてみました。
犬は、「アレは…多分蝙蝠の姉だろう。夜にならないと目を覚まさないが、待ってみるか?」と聞き返しました。
それに対してにんげんが「うん!」と答えたので、夕暮れ時に一度お母さんの乳をもらいに湖の畔に帰った後、再び同じ場所に戻ってきて蝙蝠の姉が起きるのを待ちました。
そうして、月も鮮やかな夜の森の中で太い木の枝にぶら下がる袋がもぞもぞとうごめいたかと思うと、細い翼の腕で全身を包むのを止め、中から銀色の長い髪の中から同じ毛並みのひし形を四分の一にしたような耳を生やした、少し鼻が上向き気味な女性の顔と、毛皮に包まれたまあるい身体、そして細長い足を覗かせて羽ばたこうとしはじめます。
そこで犬が声を掛けました「久しぶりだな蝙蝠の姉。」と。
蝙蝠の姉は「んん?この形はー…犬だね。何か用かしら。」と答えました。
そのやりとりでやや寝ぼけていたにんげんははっとして眠い目を擦り声を張り上げました。
「こんにちは蝙蝠の姉さん!私にんげん!蝙蝠の姉さんはなんで逆さになってたの!?」
ちょっと寝ぼけているのか、むやみに声をはりあげるにんげんに、蝙蝠の姉は、「ああ。あんた達があのにんげんね。で、にんげんはどっち?」などと言います。
寝ぼけまなこの人間は「どっちって私は一人だよ。」と言います。
ですが蝙蝠の姉はこう言うのです、「今喋ってるほうがにんげんなのね?じゃああんたの隣にいる頭に丸く囲った角つけて、足をぶっくり膨らませただんまりの方は誰なのよ。」と。
犬が蝙蝠の姉に、「蝙蝠の姉、そんな奴はこの場に居ない。少なくとも俺達には見えない。」というと。
蝙蝠の姉は、「あぁうん。そういう事ね。ならいいわ、そいつが誰かは聞かない。そういえば何で私はさかさまなのかだったわね?それはね、地面に寝っ転がると細くて薄い翼の具合が悪くなるのと、うずくまって寝るのは足が疲れる。一番楽に寝れるのがぶらさがりってわけ、これでいい?」と一人で納得している様子。
にんげんが「うー?うん。解った。教えてくれてありがとうね蝙蝠の姉さん。」と言って手を振ると、翼を振って月明かりの中を飛んでいってしまいました。
それからしばらくして、改めて寝ようと犬のお腹ににんげんがうずもれながら、「ねぇ犬。私の隣に居たのって?」と聞くと、犬は、「蝙蝠の姉はな。俺達に見えない物を見る事がある。それが俺達をからかっているだけなのか、本当に見えているのかはわからんが。とにかくそういう目を持っているんだ。」と言いました。
にんげんは、「ふうん。凄いんだね蝙蝠の姉さんは…ふぁ、眠いよ…おやすみ犬。」と言うと寝息を立て始めました。
犬はそんなにんげんの寝息を聞きながら考えました。
以前お母さんに蝙蝠の姉が見ているモノについて聞いてみたときは、「あの子はこの世ならざるものを見る目をもっているの。」という事でしたが。
犬はその内この世ならざる者について聞いておかなければならないかもな、と思いました。




