蜂
その日、にんげんは犬に乗って森を歩いていると不思議なものを見つけました。
モグラのような手をした熊が空中の黒い塊を口にいれてガチンと噛んではモグモグと口を動かしているのです。
さらに茶色い毛並みのあちこちでもぞもぞと動いている黒い点を長い舌でベロベロと舐めとります。
何をしているのか良く見たくて、犬の背中をぽんぽんと叩いて「ねぇ、あっち。」と言うにんげんですが、犬はちらりと熊の兄弟を見ると近寄ろうとしません。
にんげんが「どうしたの?」と聞くと、犬は、「あれは熊の兄。蜂の巣を食べているんだ。」と答えました。
「ふーん。それでなんであっちにいってくれないの?」と言うにんげんに、「今の蜂って言うのは巣が食われて怒ってる。そんなのにわざわざ近づくもんじゃない。」と犬は言います。
「でも熊の兄は蜂の居る所に居るんだよね?」と聞くにんげんですが、犬は、「ああ。熊の兄は蜂の巣だけじゃなく蜂も食うからな。でもにんげん、お前は危ないからダメだ。」と答えます。
そしてゆっくりとその場を離れる犬に「なんで危ないの?」と聞くにんげん。
犬は「蜂は怒っているといったろう。そうなると蜂ってのは見境が無いもので辺りの動いてるものをなんでもかんでも刺すんだ。俺は大丈夫だがにんげんも大丈夫という保障は無いからな。」と言ってそ知らぬ顔です。
「蜂、刺すんだ。」と驚いた様子のにんげんに、「刺す、というか俺には刺そうとしているのが解るっていう程度なんだがな。つくつくつくつくうっとおしい。だからにんげん。お前が一人の時は蜂に近寄るなよ。」と犬は言います。
「そっかぁ、刺すのかぁ。それは怖いねぇ。」と言うにんげんを乗せて犬はその場を去りました。
後にはガチンペロペロを繰り返す、食いしん坊な熊の兄が残されましたとさ。




