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土の力

 犬がにんげんに問いかけます、「行くのか?」と。

にんげんは「うん。がんばる。」というと犬の背中をぽんと叩きました。

それに応えて犬は歩き出し、にんげんの小さな挑戦は始まったのでした。

 ぬらぬらと続く粘液の道、その先でうねうねと蠢くのは数十本の手、そしてもそもそと動く大きな蝸牛の殻。

そう、今日はにんげんの方から蝸牛の兄に会いに来たのです。

「蝸牛の兄!ちょっといい?」そうにんげんが声を掛けると、蝸牛の兄は身体の前部をぬらりと振り返ると、「ああ!にんげんちゃん!にんげんちゃん!ちょっとも一杯もいいよ!なぁに?なぁに?」と答えます。

 そうして「撫でていい?撫でていい?」と聞く蝸牛の兄に、「ちょっと待ってね。」と言ってからにんげんはおもむろに手近な土を蝸牛の兄の手に塗りつけます。

蝸牛の兄は「なになに?埋めるの?埋められちゃうの?」と言いますが、にんげんは、「埋めないよ。ぬめぬめこれで取れないかなぁって思って。」と次々土を塗っていきます。

でも、無駄でした。土はあまりの多量の粘液にすぐに泥になって流れ落ちてしまいます。

 それを見たにんげんはがっかり、「ぬめぬめ、取れないね」と落ち込んだ声で言います。

蝸牛の兄は「え?ぬめぬめいや?うーん、じゃあ止められないか頑張ってみる!」と言ってうんうんいい始めます。

しかし日が僅かに傾くほどの時間唸ってもぬめりけは取れません。

これにはついに蝸牛の兄も申し訳なさそうに「ごめんねにんげんちゃん。ぬめりとれない。俺とぬめりは一蓮托生みたい…」と言います。

にんげんにいちれんたくしょうの意味はよくわかりませんでしたが、なんとなくいいたいことは伝わりました。

 だから、「しかたないよ蝸牛の兄。出したくて出してるんじゃないもんね。ねぇ、一杯撫で撫でしていいよ。だから元気だして。」と言いました。

すると蝸牛の兄は元気を取り戻して、「ほんと?じゃあ撫で撫でする!一杯撫で撫でする!」と言ってぐわっとその身体から生えた腕を広げます。

「えへへ、可愛いなぁ。可愛いなぁ。特にこの腕が可愛いなぁ。お揃い、お揃い。」と上機嫌ににんげんの腕を取り撫で回し蝸牛の兄は上機嫌。

そんな蝸牛の兄に揉みくちゃにされながらにんげんはそっと、いつも土でぬめりを取るから巧くいくと思ったんだけどなぁとがっかりしていましたとさ。

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