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名前を呼んで

 にんげんにちょっぴり歯が生えて、犬の毛皮を口に入れては魚の姉に放されるようになった頃のお話。

「いーうー?」にんげんが拙い口で言います。

犬は、「犬だ。犬。がんばれにんげん。」と言います。

「いーうーだー。いーうー。あんばぁいーえん。」繰り返すにんげん。

犬は、「犬、犬、犬。」にんげんは「いう、いう、いう」

いち早くにんげんに自分の名前を言わせようと、色んな兄弟がにんげんに同じことをしています。

そして、「こら犬!にんげんをあんまり困らせない。」と魚の姉が割って入ります。

でもその度に犬達は「にんげんは困ってない、ほら、こんな楽しそうに名前繰り返そうとするじゃないか。」と言ってにんげんの頬を舐めては、くすぐったいのか「うーやきゃははは!」と笑い声を上げさせています。

 そこで魚の姉はにんげんを抱き上げます、そして、「おーよしよし、大変ねー。誰も彼も構ってきて疲れるでしょ。」と声を掛けると、「さーか、さーか!」とにんげんが声を上げます。

魚の姉は柔らかくにんげんを抱くと、「そうね、魚ね。」といいながらにんげんをあやし始めます。

するとたちまちにんげんの目はとろんとなって「あー、うー、ぅー。」と眠りに落ちてしまいます。

それをみた犬はがっかり、「魚の姉さんはずるい。にんげんをすぐ独り占めする。」と言いますが、魚の姉は、「あれだけ自分の名前を連呼させようとしたら十分でしょう。この子はまだまだ眠たい盛り。眠らせるのが一番なの」と取り合いません。

 犬は悔しそうにしばらくぐるぐる言っていましたが、そのうちその場に丸くなって寝そべり始めました。

にんげんが犬を犬と呼ぶにはまだまだ時間が必要なようです。

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