一番大きな兄
お母さんは月に一度、長い長い蛇の足で湖から出て山へ向かいます。
それを不思議に思ったにんげんは犬に聞きました。「お母さんはなにをしにいっているの?」と。
犬は答えました。「アレは一番大きな最初の兄に乳をあげにいっているんだ。」と。
にんげんは「何故?」と聞きました。
だって月に一度お母さんから乳を貰う日は色んな兄弟が集まって湖の周りはとても賑やかになって楽しいのに。
なぜその兄だけは来ないのか不思議だったからです。
犬は答えました。「最初の兄は大きすぎる。お母さんが山に向かっているように見えるだろう?あの山が最初の兄だ。」と。
それを聞いてにんげんは驚きました。だって、山のような兄弟がいるなんて思いもしなかったからです。
そんな人間に犬は続けます。
「最初の兄は大きすぎて歩くだけでなんでもかんでも潰してしまう、大きすぎて息をすったりはいたりするだけでなんでもかんでも吹き飛ばしてしまう。だから動かず、ひっそり、本物の山のようにじっとしているんだ。」と。
それを聞いたにんげんは最初の兄はすごいなぁと思いました。
だって、自分だったら一日動かずにいることなんてできそうにないのに、最初の兄はずっと動かないというのですから。
そうして実はもう一つ疑問に思っていた事も解決しました。
山に向かって伸びる一本の道。そこだけくりぬいたように木の生えていない場所。
それはお母さんが月に一度最初の兄に乳をあげに行くための道だったのです。