犬の箒
犬はにんげんを歩かせる事にしました。
にんげんを乗せる事にすっかり慣れた犬には少し物足りない感覚がしますが、これもにんげんのためです。
犬は我慢して、「ここからあそこに見える大樹までにんげんは自分で歩け。」といいました。
にんげんは「乗せてくれないの?」といいましたが、犬は「この間お母さんに言われただろう。」というばかり。
これは乗せては貰えないとにんげんが腹を括って歩き始めると、にんげんはなんだかぎくしゃくしはじめてしまいました。
時には隣を歩く犬にしがみついて転ぶのを耐えるほど、巧く足を使えないようです。
そんな状態でもよろよろと犬二十匹分も移動したでしょうか、その時事件は起こりました。
「いたい!」そう叫ぶとにんげんは跳ね上がりごろごろと転がってしまいました。
犬がどうしたのか聞くと、「石ふんだ!痛い!」とにんげんは言います。
これを聞いて犬は考えました。
どうやらにんげんの足の裏は小石を踏む程度で飛び上がるほど弱い部分らしい、ではどうするか。
そして最後にはにんげんが歩く前に道を綺麗にすればいいと思いました。
それから、痛がって涙目になるにんげんに、「少し待って居ろ。」と言うと、犬は地面に届く長い尻尾で地面をさっさっと左右に掃き始めました。
すると道の上にあった小石や小枝、砂利などは道の脇へ除けられます。
これを犬の体百匹分の距離がある大樹の根元まで続けると、犬は飛ぶようににんげんの所へ戻ってきました。
泣き止んで膝を抱えて座っていた人間に、犬は言いました。
「さっきみたいな小石はもう大樹の根元まで無い、だから立って歩くんだ。ただし、飛び出した木の根には気をつけてな。」と。
それを聞いたにんげんですが、立ち上がってお座りする犬の後足の太ももにぎゅうっと掴まりながら、「犬も一緒なら行く。」と言いました。
犬は「もちろん一緒に行くさ。」と答えました。
犬はにんげんに勇気を与えてくれるのです。一回の失敗にもめげないくらいの勇気を。




