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蛙の歌

 にんげんは珍しく一人で歩いていました。

犬は今日は朝から早駆けにでかけてしまっていません。

犬は時々にんげんが乗っていられない速度で走るためににんげんを残して出掛けてしまいます。

一度絶対着いて行くと駄々をこねて早駆けしようとする犬に乗ってみたのですが。

その時は物の見事にぽーんと放りだされてとても痛い思いをしました。泣きました。

 なので、にんげんはこういう時は仕方なく一人で湖の周りや森の中を歩き回るのです。

お母さんはそのほうがにんげんの足腰のためにはいいのだといいますが、それでもにんげんは犬の背中が好きなのです。

 けれどそんな落ち込んだにんげんの耳に歌声が聞こえてきます。


一人ではありません、何人もの声が重なって聞こえてきます。

そこでその歌が聞こえる方に向かってにんげんが歩き始めると、徐々にその歌声は大きくなっていきます。

そして、すぐにそれは森の開けた小川の傍に現れました。

 蛙です。それも巨大な。犬よりは小さいけれどそれでもにんげんよりは大きいです。

もしのしかかられでもしたらにんげんは簡単に潰されてしまうでしょう。

そして蛙の周りを囲む、長い二本の角を背中に向けてのばす、鋏を持った巨大えび。

青い甲羅と鋏を持って、ぶくぶくと泡を吐きながら歌う巨大かに。

そしてにんげんと同じ上半身を持ち、糸ミミズの髪を小川の中で揺らし川の中から顔だけ出すイカの触腕のような足を持つ女性。

 そんな一団が輪唱しています。

村にー(村にー)美人のー(美人のー)娘がー(娘がー)おりましたー(おりましたー)

そこへ怪物(そこへ怪物)やってきてー(やってきてー)娘を貰うと(娘を貰うと)いいました(いいました)

そこで青年(そこで青年)怪物相手に(怪物相手に)大奮闘(大奮闘)

けれど哀れ(けれど哀れ)村はー(村はー)滅ぼされてしまいました(滅ぼされてしまいました)

 こんな歌が外見に見合わない高い声で歌われています。

にんげんは歌詞の意味がよくわかりませんでしたが、なんだか楽しそうなのは解りました。

そこで「私も仲間に入れて。」、と言いましたが怪物たちはそれを気にせず歌い続けます。

 にんげんは声が枯れるまで「仲間に入れて!」と言っていましたが誰も見向きもしません。

これにはにんげんも腹を立てて、「もう知らない!」と来た道を帰っていきました。

 後で犬にそのことを話すと、その蛙の歌には勝手に参加していいし、勝手に止めてもいい、自由な歌の場なのだといいます。

「そんなの見ただけじゃ解らないよ…」とにんげんは落ち込んでしまいましたとさ。

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