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すくうもの 〜令和怪奇跡〜  作者: ももすけ
第2部 校祭編
35/133

同好会を設立しよう!②



「むう。カッパを見せる、か……」



 サトルはスマホに送られたメッセージをまじまじと見つめた。たしかに、この上ない実績ではあるけれど。



「カッパがどうかしましたか?」



「実は――」



 サトルは小林先生に、これまでの経緯を話した。朝、悪霊に取り憑かれたカッパに襲われ、今度はそのカッパをオカ研の実績として見せつける、と。



 自分でも、なにを言っているのかわからなくなりそうだ。



「なるほど。カッパは有名な妖怪――いや、空妖でしたね。相撲とキュウリとイタズラが好きで、山奥の川に生息していると様々な本に載ってありました」



 しかし、小林先生はすんなりと理解し解説までしてくれた。サトルはぜひ顧問になってほしいと思った。



「でも、ウワサ通り山奥に住んでいるのなら、どうして山を降りてきてこの学校へ? そもそもふつうに下山するのは目立つのに――」



 疑問まで浮かんだようだ。誰よりも好奇心がふくらんでいる様子に、心強さすら覚えるほどだ。



 その話は直接カッパ本人に訊くとして、まずは設立に動こう。



「ところで、クラブ作るのって誰に話せばいいんです?」



「まずは生徒会長に相談してみてですね。あっ、上級生の教室に入るのは緊張しますよね。どうしましょう、私が呼びましょうか?」



「おねがいします!」



「少し待っていてください」



 やさしい先生でよかったとつくづく思う。クラスメートに話しかけるのも緊張するのに、上級生のHRに行くなんて到底できない。



「お待たせしました。生徒会長さん、呼んできましたよ」



「ありがとうございます」



 国語科の職員室から廊下に出た。小林先生のうしろには生徒会長がいる。ふたつに結んだおさげの髪型と制服を崩さずに着こなす様は、まさしく生徒会長のイメージだ。



「話は聞いた。なんでもオカルト研究部を作りたいそうだな?」



「は、はい。そうです」



 やはり上級生と話すのは緊張してしまう。



「面白いね。だな実績がカッパとは。お星さまに念じてUFOでも呼び出したほうが確実なんじゃないか? 飛行機とか言いワケができるんだから」



 鼻で笑って、あきらかに小バカにしている口調だ。だが、こちらにはいる。見たら大笑いできるくらいおかしな見た目のカッパが。



「着いてきてもらっていいですか」



「この貴重な昼休みを無駄にしてくれるなよ?」



 圧が強い。気持ちはわかるが。



「私も同行しますねっ!」



 対してノリノリな小林先生。春の頃と比べると、まるで別人だ。



 中庭に着いたところで、サトルはあの水たまりを探した。が、この晴れ渡った天気だからか、地面は既に乾いていた。これではカッパも干からびていそうだ。



「……あれえ?」



「こんなトコに? コンタクトレンズを落としたワケでもあるまい」



「いや……あれえ?」



 空妖のルールから考えれば、まだカッパのコトを覚えているのだから、生きているのだろう。困っていると、思わぬ助け舟が来た。花子さんだ。



「あのカッパならバケツと一緒に体育館の裏にいるわ」



「おや、やけに協力的じゃない?」



「別に。不服かしら?」



「いや、助かるよ。ありがとう」



 もちろん、ふたりは誰に感謝を述べたのかわかっていないだろう。小林先生はともかく、生徒会長は怪訝そうな顔をしている。



 そんなふたりを連れてそこへ行くと、あのバケツがあった。考えてみれば、なんでこんなバケツかあったのか、カッパが入っていたのか。なぜを問うとキリがないから置いておくが。



「この中にいるのか?」



 生徒会長はまだ疑っている。



「はい。待っててください」



 サトルは「開けるぞ」と言ってから、バケツのフタをゆっくり開けた。その中には、カッパの首だけが浮かんでいた。



「まぶしいべな……。んっ? オメエは朝のときのヤツだな?」



「うわあ……。グロ画像だ」



 目が合った。サトルは引いた。おそらく首から下は水と同化しているのだろうが、にしてもこの絵面はないだろう。晒し首だ。



「なにしに来ただか? オラと相撲を取りに来ただか?」



「いや、そういうワケじゃないけど……。というか、元いたトコに帰んねーの?」



「オメエに落とされたトコが痛むからムリだ。ンなコトよりも、オラと相撲取るだよ!」



「なんで相撲はできんだよ! 一言で矛盾してんじゃねーよ!」



「カッパの世界じゃ、相撲は全てにおいて優先順位が上だっぺよ!」



 カッパは話を聞かず、ゴミ箱から飛び出した。



「え? ええええぇぇッ!?」



「水と同化できるのなら……川から来たんですね、上流から!」



 驚いている生徒会長を尻目に、先生の名推理が光る。そして、この近くにたどり着いたところで悪霊に取り憑かれた、といったところか。



 なぜ学校で待ち伏せしていたのかはわからないが。なにか学校に恨みでもあるのだろうか。



「ンなコトよりも相撲だ! やるど、やるど!」



「禅院さん、土俵は準備しましたので!」



 考えていると小林先生は木の棒を持って、コンクリートで整備されていない地面に線を引いて土俵を作っていた。



「準備が速い!」



「そこの眼鏡のむすめッ子、さんきゅーだべよ!」



「娘って言われるほどの歳じゃないですよ!」



 サトルとカッパは土俵に上がり、蹲踞(そんきょ)の姿勢を取った。行司はもちろん小林先生だ。



「はっけよーい……。のこったッ!」



「こんな小林先生見たコトない……」



 生徒会長はしみじみ言った。というか、カッパだって普段視ないだろうに。と思っていると、立ち合いはスムーズに始まった。



河童カッパながれ、水張り手!」



「げえっ!?」



 マンガの必殺技のような掛け声とともに繰り出された張り手は、触れてもいないのにサトルの身体を吹き飛ばした。



「バク、どう見る?」



 吹き飛ぶ最中、バクに訊いた。



「あの中の水を使ったんだろうな。水圧のチカラで」



「そうか……」



 やはり尋常でない能力だ。このカッパが悪そうなヤツでなくてよかった。そう思いながら、背中を地につけた。



「ただいまの決まり手は押し出し、押し出し〜!」



 それにしてもこの小林先生、ノリノリである。



「お、おい。大丈夫か?」



 カッパがいるという事実を受けてか、生徒会長が心配してくれるようになった。実績として認めてもらうのは勝ったと、そう思った。



 しかし、カッパとの勝負には納得がいかない。いきなり能力を使って勝つなど、許されないコトだ。



「おいカッパ! 次は正々堂々と勝負しろ!」



「オラのぱわーの前では、オメエの技なんて屁のカッパだあ」



「じゃあ……もう一回、なんでもありで勝負だ」



「これで負けたら、オメエの尻子玉をいただくだよ」



「えっ、コワ……。お、おう。いいぞ。いやよくないけど」



 ガッツリ引きながらも、再び土俵に上がった。サトルには勝算があるからだ。



「はっけよーい、のこったッ!」



 相撲らしく、カッパはマジメにぶつかってきた。しかしサトルは一歩も動かず、ポケットからあるものを取り出し、土俵の外に投げ捨てた。



「むッ! あれは!」



 カッパはそれに向かって脇目も振らず飛びついた。



「キュウリだあ! こんなトコにキュウリがあっただあ!」



 そう、カッパの大好物であるというキュウリだ。



 サトルは弁当の中に入っていた輪切りのキュウリを仕込んでいた。しかし、輪切りでこの反応なのだから、よっぽど好きなのだろう。土俵を軽く飛び越えていった。



「えー……。ただいまの決まり手はキュウリです!」



「なんてアドリブ力だ!」



 サトルは小林先生の判断に思わず声がでた。



 カッパは行司の判定に我に返ったようで、あっけにとられたという顔をしている。具体的には、クリクリの目を見開き、クチバシを半開きにしている。



「……ぷっ」



 生徒会長は笑いを必死にこらえている。たしかに面白い顔だが。



「これは卑怯だべ、物言いだよ!」



「なんでもありなので無効とします!」



「ぐぬぬ……。引き分けとは言わせねえ、もういっちょ勝負だ!」



「いや、ダメだ。時間がな」



 もうすぐ昼休みが終わる。



「というワケで、これを実績と認められませんか?」



 生徒会長に訊くと、ふたつ返事で「わかったわかった」と言った。



「さすがにこれを認めないワケにはいくまい。もちろん、カッパのコトもヒミツにしておこう。……ところで、部費はかかるか?」



「いえ、一切」



「ならばよしッ! オカルト研究部の設立を許可する。今年廃部になった囲碁部の部室を使うといい。言っておくが、完全には認められないグレーゾーンにある。そこは各々、わきまえるようにな」



「ありがとうございます!」



「職員会議で追及されたら私がちょろまかしておきますので、ご安心をば!」



 なにかと小林先生が一番張り切っているような気がする。ともあれ、部室をゲットだ。これで人目を気にせず、空妖について研究できる。



 なによりも、居場所が作れたコトがうれしい。



「おーい、オラを勝負しろー!」



「まだ言ってる。また今度な。それより、このバケツを押して部室に来てくれよ。誰にも見つからずにな」



 チャイムが鳴った。急いで明璃にラインに報告すると、すぐに親指を立てたキャラクターのスタンプが送られてきた。放課後に集まるのが楽しみだ。



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