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すくうもの 〜令和怪奇跡〜  作者: ももすけ
第2部 校祭編
28/133

仲間を探そう!②



 文化祭まで、あと21日──





 昨日の勧誘は手ごたえが感じられなかった。事実を話したまでだが、幽霊の話なんかして引かれてしまっただろうか。アレコレ考えても妙案は思い浮かばず、昼休みがきてしまった。



「禅院、どうだった?」



「真島、どうしよう。樫見さんさ、はいといいえしか言ってくんない……」



「ドラクエかよ! それで今日も行くの?」



「そのつもりだけどさ、どう誘えばいいんだろう。オレって常に誘われたら行くタイプだからわからないんだよ、誘い方」



「それって、独りだろうが誰かといようがどうでもいいってカンジで、つまんないヤツっぽく見えちゃうんだよな。気をつけろよ」



「うっ……。そうだな、気をつける」



 真島はたまに図星を突いてくる。それも鋭く。



「そういうのに限って、誘われなくて勝手に傷ついてるんだ。おれも中学の頃そうだったしさ」



「じゃあ、オレによく話しかけてたのって?」



「そりゃ、ぼっち仲間かと思ってさ。中二病かと思ったら、ふつうに暗いヤツだなってのがおまえの第一印象だったな」



「あまり聞きたくなかったな、そういうハナシ……。というか、中二病って。そんなふうに思われていたのか」



 サトルは急に恥ずかしくなった。もう失いたくないから、友達は作らないと確固たる決意をしていた頃だ。



「まあ、今はそんなふうには見えなくなってきてるぜ。変わってきてるよ、徐々に」



「変わってる、か……」



 変わるとは、変化とはなんだろうか。



 それは怖いコトだとサトルは思った。ではなぜ怖いのか。変われなかったらと考えてしまうからだろうか。とにかく、今は答えがでない。



「なんの話してたんだっけ。そうだ、樫見さんだったな。当たり前のコト言うようだけど、やっぱ、こっちから伝えても、向こうが言わないとこっちも伝わらねーしな」



「つまり?」



「口説き伏せたら、返事を待つしかできないんじゃね?」



「そっか、そういうモンだよな。粘ってみるよ」



「がんばれ!」



 弁当を食べ終わると、サトルは立ち上がり保健室へと向かった。



「あっ、やっと来た。ちょい待ち」



 HRから出てすぐに、入口で待ち構えていた、幼馴染の紫城明璃しじょうあかりに止められた。



「どうしたん?」



「ライン送ったのに見なかったの?」



「見てないぞ。なんか言えないコトでもあんの?」



「大アリ。いっしょに渡り廊下に来て」



「ちょっと早めに終わらせてくれよ。オレも用があるから」



「樫見さんのね。わかってる」



 中庭を見下ろせる渡り廊下は、クラスの違う生徒たちの溜まり場となっている。しかし今日は曇っているからか、サトルたち以外に誰もいない。



「んでんで?」



「ちょっと待ってて、今呼ぶから……」



 スマホを取り出し、素早く人差し指を動かす明璃。誰が来るのか予想はついた。



「サトルにーちゃん、やっほー!」



「うおおッ! びっくりした!」



 背後から突然呼ぶ声。予想できていても驚いてしまう。この少女の声はバクのものではない。



「いつも思うけど、予想以上に元気あるなあ。それで、用があるのはメリーさんのほう?」



 振り向いて目の前にいるのは、結んだ金髪を元気いっぱいにたなびかせる少女。もちろん、この学校の生徒ではない。ましてや人間でもない。人の姿をした人形ひとがた空妖くうよう、メリーさんだ。



 空妖には人智を超えた能力がある。メリーさんも例外ではない。瞬間移動ができるのだ。条件は自分の位置を相手に知らせるコト。



 今の移動は、明璃のスマホに『兄ちゃんのうしろにいる』とメッセージを送ったのだ。



「ううん。わたしのね、友達を紹介したいの!」



「友達? それって空妖の?」



「そうだよ!」



 人形の空妖は、特別強い霊感を持っていないと視えない。なので、バクよりも人目を気にせずに話せる。傍から見れば、独り言を喋っているようにしか見えないが。



「そっか、友達ができたんだな。よかったなあ」



「兄ちゃんは新しい友達できた?」



「え? ……いや」



「そっかあ。……ふっ」



「なんだその勝ち誇ったような笑い方は!」



「そんなコトないよお?」



「まったく……。それで、どこ?」



「この雲行きだとね、そろそろ来るよ」



「雲行き? っと、冷てっ。降ってきたな」



 梅雨らしく雨の日が多い。小降りのうちに、サトルは濡れないよう引き返そうとするが、明璃とメリーさんは動こうとしない。



「これじゃビショビショになっちゃうぞ、早く中に入ろう」



「平気だよ。ねっ、花ちゃん」



「――そうね。このくらいなら、ね」



 聞きなれない女の子の声が頭上で響いた。見上げると、足を組んで座りながら空中に浮かぶ少女がひとり。間違いない、メリーさんの友達の空妖とは、この子だ。



「初対面にしちゃあ頭が高いな。降りてきてもらおうか」



 バクが学校の中なのに、珍しくしゃべった。



「その声がメリーの言ってた口の空妖かしら? いいわ。せっかくだし、お話しましょう」



 バクに促され、少女は階段を下りるように、空中からこちらへやってきた。そういえば、雨がまったく当たらない。



「水を操る能力か。今の芸当は雨を固定していたんだな。急に現れたのも水を伝って移動してきたってトコかな? いい技だ」



「あなたは食わせ者のようね。ポカーンって顔をした宿主の子と違って」



「フフ。食べるのも食わせるのも、ワタシは得意だぞ」



「むぅ。さっきからなんかバカにされてるな……」



 そうじゃないトコを見せてやろう。少女の見た目は、白いワイシャツに赤いスカート、そしておかっぱ頭。それとメリーさんが花ちゃんと言っていたのでわかったぞ。



「君は『トイレ』の花子さんだな?」



「その名前で呼ばないッ!」



「冷てえ!?」



 急に冷水が顔にかかった。



「固定していた雨水のプレゼントよ」



「そうなんだけどね、花ちゃんは『トイレの』って言われるのがイヤなんだ。カッコいいのにね、二つ名」



「あっ、そう……」



 たしかにそうだとサトルは思った。そういうモノだから当たり前にそう呼んでるけど、そんな二つ名つけられたら誰でも良い気はしないハズだ。



「それで、ふたりどこで知り合ったの?」



 明璃が訊いた。



「公衆トイレでだよ。遊びの誘いに答える練習をしてたみたいなの」



「やっぱりトイレの花子さんじゃん!」



「モラルと! デリカシーが! 足りていないッ!」



「ひゃっこーい!」



 器用に指先だけを濡らしてきた。この水を操る能力、悪い空妖だったら強力な敵となっていただろう。



「こんなのがメリーと明璃の友達だなんて。もっと人を選んだほうがいいわよ」



「ごめんねっ。サトルにはちゃんと言っておくから」



「まあここは……メリーと明璃に免じて『水に流して』あげるわ」



「その言い回し、やっぱりトイレの花子さんじゃん!」



「んんんんッ!!」



「冗談ですごめんなさいやめて! 背中にいれないで!」



 初対面なのに面白半分でからかってしまった。



「同じコトを何度も言わせるなんて、いい度胸してるわ」



「こんな花ちゃん、初めて見たよ」



「なるほど、これが怒りね。怒るというのも、これが初めてかしら」



「今まで誰とも出会わなかったもんね。でも、楽しいよね。気持ちを伝えるのって!」



「……そうね。ずっと独りだったから」



 花子さんは明璃とメリーさん見て微笑んだ。



 サトルは人形の空妖を視るたびにいつも思う。永遠と思っていた孤独とは、どれほど苦しいのだろう。誰にも気づいてもらえず、思い出にも残らないなんて。



「もっと仕返ししてやりたいけど、反省してるみたいだし、これぐらいにしておいてあげるわ。行きましょう、メリー」



「あざーす」



「ふたりとも、じゃあねー。花ちゃん、せっかくだし学校見て回ろ!」



 ふたりの空妖は廊下を渡っていった。姿が視えなくなると、雨が顔に当たった。



「空妖ってさ、なんかこう、クセがスゴいよな」



「ほら、早く行かないと休み時間終わっちゃうよ」



「そうじゃん。ビショビショになっちゃったし、これで会うのかよお!」



「学ランだからそんなに目立たないって。頭はめっちゃ濡れてるけど。ついでに乾かしてもらったら?」



「まあしょうがないか。じゃあ行って来るよ」



「退屈しないわね」



「呪いのおかげでな!」



 サトルは明璃と見合わせて笑いかけた後、そのまま保健室に向かった。



「また来たか。って、なんでそんなびしょ濡れなんだ? 雨の日に散歩したイヌか?」



 保健室の須藤先生は、一目見るなり困惑した。



「ヤな例え。いや、まあいろいろあって」



「妖怪かなんかに襲われたってか?」



「そうなんすよ、まあ、じゃれ合ったって程度ですけど」



「へえ、妖怪なんかいるんだな。樫見、聞こうぜ」



「……はい」



 サトルに疑問がよぎった。なぜ、妖怪なんて言葉が飛び出たのか。外は雨が降っているのだから、それを引き出すハズだ。昨日はたしかに幽霊の話をしたが、バクはヒミツにしたままだ。心霊現象の延長線上に妖怪はいるだろうと踏んだのか。



 それとも、いると確信したうえで訊いてきたのか。だとしたら、答えはひとつだ。



「あの……、なんかヘンなのでも視えました? 背中に憑いてるとか。ンなワケないですよねあはは」



「ああ。口のコトか?」



「あー……」



 バレていたようだ。バクだけは隠していたのに、これではとんでもない道化だ。



「まあ、それは置いといてさ。聞かせてくれよ、その妖怪とじゃれ合ったっての」



 バクのコトはいずれ話そう。今は、さっきの出会いを話すべきか。



「トイレの花子さんに会ったんですよ。『トイレの』って言うと怒る花子さんに――」



 不思議な出会いを共有するのは楽しい。時間が過ぎるのはあっという間だった。



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