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最終話 婚約生活終了

 現国王様と王妃様との謁見。私はサムエル様の瞳と同じ蒼いドレスを着ることにしました。派手すぎる?


 その、このドレスは実は以前に王妃様と会われた時に着ていた物をより正装に近いようなデザインのものを作り直して頂いたものなので、仕方ありません。


 サムエル様と一緒に王様の前まで訪れますと、王妃様がすでに私たちの結婚を認めていたこともあり、お話がとんとん拍子で進んで行きます。


「え? こんなにうまくいくものなのでしょうか?」


「逆に何を心配していたんだお前は」


 サムエル様のおっしゃる通りなのですが、改めて自分の状況が上手く行きすぎていて、夢のようで彼の大きな手が、こんなにも心地よいと感じるとは思いもしませんでした。


「ごめんなさい。なんでもないの」


 私がそう微笑みかけると、サムエル様も微笑み返してくださりました。


「それでは父上、母上。私とローズはこれで」


 国王様との謁見が想像以上に早く終わったかと思えば、サムエル様が私を横抱きにして、すたすたと退室してしまいましたわ。


 何でしょうか。この人、少しだけ私を運ぶことを急いでいらっしゃるような気がします。


「いつまで抱えているのですか?」


「君が気にすることじゃない」


「もう廊下です。恥ずかしいのでおろしてください」


「恥ずかしいだけならおろせないな」


「はぁ?」


 そう言われ、サムエル様のお部屋まで無抵抗のまま運ばれてしまいました。


 ベッドに優しく座らされた私は、急に恥ずかしくなり、自室のある扉の方まで全力疾走をしようとしましたが、不意に聞こえる彼の声が、私の足を止めてしまいました。


「ここにいてくれないか?」


「……そ、それは本当に卑怯すぎやしませんか?」


 足を止めた私の腕を掴んだ彼が、もう一度ベッドに私を座らせてしまいます。


 何度も逃げ出そうとするのは失礼だと感じましたし、彼が私にここにいて欲しいと言うのであれば、ここに座ることも甘んじてしまいましょう。


「どうしてこのような場所に?」


「気にするな」


「気にします! ですが、そのいえいいですこのままで構いません」


 私が頭をサムエル様の胸にこてっとぶつけると、サムエル様が私の催促を理解し、撫でてくださります。


「撫でて欲しいなら撫でて欲しいと言えば良いものを」


「言いません」


 ですが彼の体から頭をこすりつけることをやめる気は全く御座いません。


 彼もそれを良しとしてくれています。たまにさらに抱き寄せるように腰に手をまわしては、ぐいっと引っ張られてより体が密着してしまいましたが、抵抗しようだなんて微塵も考えませんでした。


「逃げないのだな」


「逃げません。恥ずかしさで死にそうですが、あなたがいるから死ねません」


「そうか」


 サムエル様があの日の夜のように微笑むと、私はベッドに押し倒されてしまいました。


「あの、これは」


「すぐ終わるよ」


「……その言葉は、嘘でも構いませんよ?」


 サムエル様の綺麗な顔は、私の顔と距離を詰め、瞳と瞳が見つめ合っている間、私の頭の中は何も考えられなくなっていました。


 その日、私達は夕食直前まで部屋を出ようとしませんでした。


 あれから四年の月日が経ちました。


 私達の間には元気な男の子が一人。それから産まれて間もない男の子がもう一人。


 赤子の息子を抱きかかえながら、近年開発された射影機の前にサムエル様と親しい方々で並びました。


「それでは皆様、そのまま三十分ほど動かないでください」


「…………え?」


「説明を聞いていなかったのかローズ」


「赤ちゃんは難しいのでは?」


「君が抱きしめている間は、何があっても大人しいから問題ない」


「そ、そうですか」


 そう言われ、本当にしばらく動けないまま皆さんで写真。というものをとりました。


 数日後。写真が完成したそうでしたので、皆さんで鑑賞することになりました。


「本当に映るのですね」


「色が少しだけわかりますね」


「どのような技術なのでしょうか?」


「私ウサギ小屋に戻りますね」


 写真を見た私とユルシュルたちが喋っている中、ルーツィアだけは興味なさそうにウサギ小屋に戻ってしまいました。


 私達が囲んでみている中、サムエル様が何かを用意していることがわかります。


「そちらは?」


「ああ、俺の王位継承を近隣諸国に伝えるために手紙を用意しているんだ。ついでに複数枚作れたその写真も入れる」


 そう、本日より正式にサムエル様が国王に、私が王妃になることが決定しました。


 思えば四年前、あんな訳のわからない勘違いしていた婚約生活。


 今でこそ、幸せですが一つ間違えば手に入らなかったかもしれないこの瞬間。


 幸せと不幸は紙一重。勘違いやすれ違い。どこでほころぶかわからない。


 でも、彼が私を愛してくれていたのは最初からで、もしかしたらほころんだままでも幸せだったかもしれない。


 でも残念よね。せっかく大好きな王子殿下と婚約したのに私の方が問題ありすぎて、もっと素敵な婚約生活が送れたはずですのに。


 でも、これからは違います。彼は私の口下手な所や素直になれないところまで理解してくださいますから。



終わり。

大鳳葵生です。今回はこのような形になってしまいましたが、ラストまで書き進められてよかったです。

本当はもう少し書きたいこともありましたが、それは別の作品にぶつけようと思います。


異世界恋愛ジャンルで次回作も準備中です。


今までお付き合いして頂きありがとうございました。

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