クエスト(5)
リトル・ワイバーン
種別:魔獣(亜龍種)
討伐ランク:A
主に小型の獣や果物などを摂取する。
臆病な性格で、基本的に縄張りの外に出ることはないが、逃げる獣を追う習性を持っている。
『リトル』と名がつくことからもわかるように、通常のワイバーン種と比べると半分ほどの大きさなのだが、それでも羽を広げると20メートル以上で、背の高さも5メートル以上。
全身を覆う鱗は岩のように堅く、強力な魔力耐性も備えているため魔術による攻撃も効果が薄い。
推奨される討伐方法は、打撃による内部破壊とされているが、上空から急降下で獲物を捕らえる性質上、打撃を加えることも難しいとされている。
ラビのいう通り、それは野生のリトル・ワイバーンだった。
「みなさん……気をつけて、Aランク指定魔獣のリトル・ワイバーンは、今のみなさんで倒すことは難しい……です。
なんとか今は、逃げることだけ考えて……」
「でも、どうしよう。 私の魔術じゃ、あそこまで届かないよ」
「こうなったら俺が、奴の初撃をなんとか躱して隙を作る。 そのすきにウィス隊長は攻撃魔術を、スミスは拘束魔術を発動して、なんとか奴を地上に貼り付けてくれ!」
「わかったよ、ミッシェル。 だけど龍種は魔力耐性を持っているから、攻撃の要はやっぱり君だ。 僕もなんとか10秒は耐えてみせる。 だからその間に有効打を与えてくれよ!」
「……みなさん? 私の話、聞いて……ました?」
「でも、ラビちゃん先生。 手加減して倒せるならそれでいいけど……」
「そうだぜ! 相手がAランク相当なら、俺たちが全力で戦って、ようやく追い返せるぐらいなはずだ」
「どんな相手にも全力で! そう言ってくれたのは、他ならぬラビちゃん先生じゃないですか!」
「「「それに、僕(私)(俺)達は、こんなところで、逃げ出したくない!」」」
ラビの助言を無視して、「どうやってリトル・ワイバーンを倒すか」の話をしている三人に、思わずラビは顔をしかめたが、その言い分を聞いて「確かに……一理はあります」と納得した。
実際には、できるだけ刺激を与えずにやり過ごすのが一番安全なのかもしれないが、それではあまりにも冒険者らしくない。
実際のところ、ラビにはリトル・ワイバーンを一人で撃退できるだけの能力も持っているため、最適解は「ラビに任せて自分達は逃げる」ということに、なるのかもしれない。
確かにそうすれば、今この場で生き残ることはできるだろう。 でもそれは、冒険者としての死を意味する。 のかもしれない。
その点も、ラビはよく理解していた。
一度逃げ出した冒険者が、その後も挑むことができない様子も何度となく見て、そして後悔を重ねて生きてきていた。
無謀に挑んで大けがをする人も、逆に自信をつかみ成長する人も見てきていた。
そしてラビは最終的に、この三人もそろそろ成長のきっかけをつかむ頃合いだ。 そう判断したようだ。
「……わかりました。 私も、みなさんのサポートをします。 ……マシロさんは、後ろに控えて、よく見ておいて下さい」
ラビは頭上の無数の獣耳をピンとた立て、懐から折りたたみ式の魔術杖を取り出して支援魔術の詠唱を始めていた。




